スモールビジネスは、
なぜ、成功しないのか?(49)
ビジネスモデルを創るステップ(18)
「見込み客の顧客化」(9)
ポジショニングの法則の最後の項目、マーケットシェアでのポジショニングのポイントは、1つしかない。
それは、「顧客は、最小コストで最大効果を実現するために購買行動をする」。この理解と実現である。
誰もが衝動買いできるような安価な製品を除いて、企業の製品は、市場で、販売価格において「ナンバーワン」で安いか、その企業しか販売していない「オンリーワン」の製品でなければ、売れないのである。
そして、市場において、「ナンバーワン」もしくは、「オンリーワン」になるための方法を見つけ出し、実行し続けることが、唯一、その企業の生き残りを保証するのである。
では、その「ナンバーワン」、「オンリーワン」について詳しく見て行こう。
市場に存在する企業は、次の4種類のタイプのポジションに分類される。
1 マーケット・リーダー「価格戦略」
2 マーケット・チャレンジャー「差別化戦略」
3 マーケット・フォロアー「差別化戦略」(2の模倣)
4 マーケット・ニッチャー「集中戦略」(ニッチ狙い)
売れ筋商品を市場全体で最安値で販売するのが、1のマーケット・リーダーの「価格戦略」である。
2のマーケット・チャレンジャーは、売れ筋商品を最安値で販売できないが、マーケティングの7Pの価格以外の何かで、1のマーケット・リーダーよりも競争優位性を持たせる戦略である。
たとえば、販売価格を1のマーケット・リーダーと同等以下にできないが、1のマーケット・リーダーよりも保証内容を良くするとか、あるいは、在庫を豊富に持って短納期で納品可能といった、マーケティングの7Pの価格以外の何かの内容で、顧客の購買欲求にアピールをする戦略である。
3のマーケット・フォロアーは、基本的に2のマーケット・チャレンジャーの物真似だが、2のマーケット・チャレンジャーほど顧客にアピール力がないものである。
たとえば、2のマーケット・チャレンジャーの差別化要素が短納期だったとしたら、2のマーケット・チャレンジャーの真似をするか、できないなら、2のマーケット・チャレンジャーが行っていない別のベネフィットで差別化する戦略である。
4のマーケット・ニッチャーは、1~3のポジションの企業が取りこぼした特定の顧客だけを対象にした戦略である。
たとえば、離島だとか山間地のような交通の便が悪い場所の顧客だけを対象にするとか、あるいは、60歳以上の顧客だけを対象にするとか、1~3のポジションの企業が満たせないニーズを持ったターゲットとなる顧客層に限定してマーケティングを行う戦略である。
また、これら3つの「価格戦略」、「差別化戦略」、「集中戦略」は、個々にマーケティングの手法が異なるので、特に注意して欲しい。
「価格戦略」は、市場全体の不特定多数の見込み客を対象としたマスマーケティングを行う。従って、豊富な経営資源を持った企業だけが行える戦略である。
「差別化戦略」は、市場で価格以外の特定のニーズを持った見込み客を対象としたセグメントマーケティングを行う。この戦略も豊富な経営資源を持った企業で、主に、後続参入した企業が行う戦略である。
「集中戦略」は、市場で「価格戦略」、「差別化戦略」では満たせないニーズを持った特定の見込み客だけを対象としたターゲットマーケティングを行う。
そして、特に、スモールビジネスでは、「集中戦略」、つまり、市場で「価格戦略」、「差別化戦略」では満たせないニーズを持った特定の見込み客だけを対象としたターゲットマーケティングしか行わないのが基本原則である。
なぜなら、ニッチ市場は、市場規模が小さく、顧客のニーズが顧客毎に違うことが多く、標準化しづらいため、手間がかかる上、売り上げが小さく、大手企業のキャシュフローには見合わないのである。
従って、標準化された製品での安売り競争や差別化競争を得意とした、1~3のポジションの企業が参入してくる可能性がほとんどないのである。
だからと言って、油断してはならない。
ニッチ市場でも、市場全体の市場競争と同じように、ニッチ市場内で「価格戦略」、「差別化戦略」、「集中戦略」が行われ、結局、ニッチ市場でも最安値を実現する企業が、最も市場占有率が高くなるのである。
なぜなら、どのような市場セグメントかに関わらず「顧客は、最小コストで最大効果を実現するために購買行動をする」のだ。
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「見込み客の顧客化」(8)
シーブリーズのようなメントール系のシャンプーは、「爽快感」、「清潔感」というダブルベネフィット(顧客が得る利益)で製品のポジショニングをしていた。
マインドシェアのポジショニングでは、このようなベネフィット(顧客が得る利益)を何種類くらい自社の製品に採り入れるかを決める必要がある。
一見、ベネフィットとは、顧客が得る利益なのだから、数が多ければ多いほど良いように思えるのだが、実際は、ベネフィットの数を増やし過ぎると、製品の特徴が返って判らなくなり、顧客のマインドシェアにポジショニングされにくくなる。
たとえば、カバンなら、
「軽い」カバン(シングルベネフィット)
「軽い」、「頑丈」なカバン(ダブルベネフィット)
「軽い」、「頑丈」、「持ち運びが便利」なカバン(トリプルベネフィット)
このように、カバンの「機能性」なら「機能性」を3種類くらいまでのベネフィットに分類し、自社の製品に、自社が実現できるベネフィット(顧客が得る利益)を採りいれてポジショニングするのが標準的である。
マインドシェアでは、このように自社のベネフィットを製品に採り入れてポジショニングすることで、競合他社との差別化を行うことができる可能性がある。
そして、見込み客のカバンの購買行動は、おおよそ、次のようなイメージだ。
まず、見込み客は、どんなメーカーのどんなカバンがあるか調べ、仮に、見込み客が購入したいカバンの候補をA社、B社、C社の3社、見つけたとする。
この時、A社、B社、C社の3社の製品のベネフィット(特徴)は、
A社は、「軽い」、「頑丈」、「持ち運びが便利」なカバン
B社は、「軽い」、「頑丈」なカバン
C社は、「軽い」カバン
だったとする。
製品のベネフィット以外に、マーケティングの7Pの購入条件が全て同じであれば、当然、A社のカバンを買う可能性が高い。
製品のポジショニングは、このようにすれば良いのだが、一つ、陥りやすい落とし穴がある。
ハートシェアのポジショニングに「悲しいシャンプー」という誤ったポジショニングがあるように、マインドシェアのポジショニングにも、誤ったポジショニングがある。
たとえば、こんなポジショニングである。
「ナイキ社」の「世界最高速PC」
「ハーゲンダッツ社」の「あっさりラーメン」
「ベンツ社」の「快適な耕運機」
このような誤ったポジショニングが存在する。「製品」と「ベネフィット」の相性は悪くないが、「企業」と「製品」の相性が悪いのだ。
さて、ここまでのポジショニングの法則の、3つの項目をまとめると、
ハートシェアの占有率の高さは、「感情」と「製品」の関係で決まる。
マインドシェアの占有率の高さは、「製品」と「企業」の関係で決まる。
そして、ポジショニングの法則の最後の項目のマーケットシェアだが、
マーケットシェアの占有率の高さは、「企業(自社)」と「競合他社」と「顧客」の関係で決まるのである。
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「見込み客の顧客化」(7)
今回から、ポジショニングの第2ステップ、「なぜ、売れるのか?」という理由を創るマインドシェアのポジショニングについてお伝えします。
前回の復習になるが、シーブリーズのようなメントール系のシャンプーや液体石鹸は、「爽快感」、「清潔感」のダブルベネフィットで見込み客に「製品イメージ」をポジショニングしている。
そして、ハートシェアには、「爽快感」、「清潔感」という「ポジティブな感情」を刺激してポジショニングをしていた。
こうすることで、特に、暑い時期には、普通のシャンプーや液体石鹸よりは「爽快感」や「清潔感」をイメージできる製品の方が売れやすくなる可能性があるのだが、だからといって、自社の製品が売れるとは限らない。
そこで、各社、自社の製品が売れるように様々な方法で「感情」を刺激しているが、ポジショニングする時に、「ネガティブな感情」を刺激しないことが重要なポイントであった。
確かに、怒り、恐怖、悲しみ、失望、憎しみ、嫉妬、苦しみ・・・、といった「ネガティブな感情」の方が「ポジティブな感情」よりも破壊力があり、ハートシェアの占有率を高くすることが容易で、短期間で行動を促すことができる。
しかし、人は、悲しいことがあると、「シャンプーで、すっきりしたい!」とは、思わないのである。
また、「爽快感」や「清潔感」といった感情は、シャンプーと相性が良いが、「悲しみ」といった感情は相性が悪い。
「爽快感のあるシャンプー」という「製品イメージ」は、市場で受け入れられるが、「悲しいシャンプー」といった「製品イメージ」は、笑い話にしかならないのだ。
ポジショニングでは、「ネガティブな感情」を刺激しない理由に、もう一つの理由がある。
その理由は、「ネガティブな感情」は、その原因を排除するか、あるいは避ける性質があるためだ。
人は、激しい怒りを感じたら、直ぐに行動することが多いが、その行動は、購買行動ではなく、激しい怒りの原因を反射的に排除するために行われる行動である。
たとえば、葬式なら、悲しみ、苦しみ、怒り、失望・・・と、様々な「ネガティブな感情」が入り交ざるが、たとえ、亡くなられた方が理不尽な理由によって亡くなられたとしても、「怒りの葬式」といったポジショニングは行わない。
亡くなられた方が死後の世界で幸福(冥福)であるか、残された遺族が幸福であるか、葬式自体がリーズナブルといったイメージを感じさせるポジショニングが行なわれる。
つまり、ポジショニングは、「ポジティブな感情」と「感情と製品との相性」とによって「良好な製品イメージ」を創ってアンカーリングできなければ、購買行動にはつながらないのである。
ところで、このような良好なポジショニングが行われて、見込み客のハートシェアの占有率が高くなったら、次に考えなくてはならないのが見込み客のマインドシェアである。
マインドシェアとは、人の心の中での製品購入の優先順位だ。
どういうことかと言うと、たとえば、どの店でPCを買うかを選ぶ時に、思い浮かぶ店の順番は、ハートシェアの占有率が高い順番に思い浮かぶ。
そして、その時、仮に、10店思い浮かび、3店訪問するのなら、おおよそ、ハートシェアの1番高い店、2番目の店、3番目の店の順番に訪問することになる。
まず、この時点で、見込み客の3店の選択肢にポジショニングされ、優先順位が高くなければ、自社の製品は売れる可能性は、ほとんどないのである。
そして、見込み客は、訪問した3店のマーケティングの7Pを比較して、購入を決定することになるが、この時に、マインドシェアの占有率が一番高い店の製品を買う可能性が高い。
つまり、見込み客のマインドシェアの占有率がA社、B社、C社の順に高いとすると、A社のお店で販売しているPCを買う可能性が最も高いのである。
この統計的結果からも、はっきりと認識しなければならない重要なことが2つある。
1つは、ハートシェアとは、見込み客がお店に来店してもらうためのトリガー(引き金、誘導装置)である。企業間の取引で言えば、競争見積もりに参加するための参加資格である。
従って、ハートシェアの占有率が低いか、ない時は、そもそも、相手にされていないということだ。
そして、次に自覚しなければならないことは、仮にハートシェアの占有率が高かったとしても、マインドシェアの占有率が低ければ売れない。
つまり、製品が見込み客のニーズを満たしていなければ、売れないのである。
たとえば、こんなことだ。
以前、ある人と話をしていた時に、「フェイスブックで「いいね!」や「コメント」をしてくれる人や、アメブロで、「ペタ」や「いいね!」や「コメント」をしてくれる人は、見込み客だという人がいるのですが、本当ですか?」と、質問された。
考えるまでもないのだが、クライアントの質問であったため、ちゃんとテストマーケティングをして調べてみた。
だが、広告媒体が何にせよ、見込み客とは、製品を買う意思をはっきりと明言した人だということを証明しただけだった。
つまり、見込み客は、「信用」できる人が「ニーズ」を満たしている時のみ購買行動をするのである。何かに反応した人が購買行動するのではないのだ。
そして、その可能性を高めるのが、ハートシェアの占有率が高い企業が、マインドシェアの占有率をナンバーワンにすることなのだ。
競争見積もりに参加できるのなら、次に、その市場競争でナンバーワンで見込み客のニーズを満たさなければ、売れないのである。
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