まとめ(11)「売り上げを伸ばす方法」(4)
「的のない矢は当たらない」
こんにちは。前回、新規顧客の開拓をするにあたり、「顧客は何を買うのか?」についてお伝えしましたが、今回は、「売り上げを伸ばす方法」として、企業側の新製品開発に焦点をあててお伝えしたいと思います。
新製品を開発する初期費用が安いと、思いつきで新製品を作り、テストマーケティングもせずに売り込んでくる会社がありますが、そういった会社の製品を見ると、「この製品は、いったい、市場の誰が買うのか?」と思う時があります。
たとえば、鉄工所が製造販売する園芸用品、造園業が販売する食品など、異常なポジショニングの製品は論外としても、ある日突然、誰が買うかすら調べずに、本業と何ら関係のない製品開発をしても、上手く行くはずがありません。
やはり、的のない矢は当たることはありませんので、既存市場の誰のどんな不満の解決策として開発した製品なのかをはっきりさせてから製品開発することが必要です。
新規顧客を狙うのであれば、既存市場の新規顧客は、現時点では、競合他社の顧客ですから、市場で競合他社が満たせない「顧客の不満」は何かを見極めて、そこに集中した製品開発が必要です。
たとえば、飲料なら、市場全体のニーズは、のどの渇きを潤すのがニーズであり、顧客のウォンツは、のどの渇きを潤す時に、どのような「満足感」を伴うかです。
仮に、狙った新規顧客の不満が「清涼感」なら、競合他社の製品と、どのような「清涼感」で「顧客の不満の解決策」を提供すれば、競合他社の顧客が自社の製品に乗り換えて来るかを探った上で、新製品開発をします。
このように、既存市場で、新製品開発によって新規顧客を獲得したいのであれば、競合他社の顧客の「不満の解決策」が自社の新製品になるような製品開発が必要最低条件となります。
市場を顧客の属性で分類すると、「自社の顧客」、「自社がロストした顧客」、「競合他社の顧客」の3種類の顧客に分類できますが、新製品開発で行うことは、
「自社の顧客」=「自社の製品の不満」
「競合他社の顧客」=「競合他社の製品の不満」
「自社がロストした顧客」=「自社の製品の不満」もしくは、「競合他社の製品の不満」もしくは、「自社と競合他社の製品の不満」
これらの顧客の不満の「解決策」として、新製品開発を行います。
ところで、前回、売り上げを増やすために、「自社の顧客」→「自社がロストした顧客」→「競合他社の顧客」の順番にアプローチすることが最小コストで最大効果が狙えるとお伝えしました。
この順番でアプローチした場合、「自社がロストした顧客」は、「自社と競合他社の製品の不満」の2つの解決策が必要な時があるので、2番目にアプローチするのではなく、最後にアプローチした方が良いのではないかと思われる方もいらっしゃると思います。
ところが、そうではなく、「自社がロストした顧客」は、「自社の不満の解決策」だけで取り戻せることがありますので、収益性が最大になるのは、やはり、2番目にアプローチすることです。
これを、プロモーションの視点で、もう少し細かく説明いたしますと、プロモーションする順番は、
1 「自社の既存客」に新製品(自社の不満の解決策)のプロモーション
2 「自社がロストした顧客」に新製品(自社の不満の解決策)のプロモーション
3 「自社がロストした顧客」で顧客化できなかった顧客に新製品(競合他社の不満の解決策)のプロモーション
4 競合他社の顧客に新製品(競合他社の不満の解決策)のプロモーション
といった流れになりますから、仮に、新製品が、「自社と競合他社の不満の解決策」になっていれば、プロモーションは、4回ではなく3回で済みますので、収益性が最大になるのは、「自社がロストした顧客」は、2番目にアプローチすることが効果的です。
これらのことからも、新製品開発は、「自社と競合他社の不満の解決策」になっているのが理想的ですが、費用面から実現することが厳しい場合は、「自社の顧客の不満の解決策」に集中した新製品開発を行い、「自社の顧客」、「自社がロストした顧客」で水漏れするバケツの穴を塞ぐような、的を定めた新製品開発をすることが必要です。
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まとめ(10)「売り上げを伸ばす方法」(3)
顧客が買うのは、「ニーズ」でなく「ウォンツ」
こんばんは。今回は新規顧客の開拓について見て行こうと思います。
既存市場で売り上げを伸ばすために既存客、ロストした顧客にアプローチした次は、新規顧客にアプローチしますが、新規顧客にアプローチする時に特に意識しなくてはならないのが、顧客が買うものは、「ニーズ」でなく、「ウォンツ」だということです。
ところで、既存市場にいる新規顧客とは、競合他社の顧客ですから、現行の取引先に不満がないのなら、わざわざ取引先を増やしたり、代えたりする理由はありません。
しかし、市場は常に変化するため、いづれ、その変化について行けずに脱落する企業が現れ、その代役が必要になる時が来ます。
その時が新規顧客にアプローチする絶好のタイミングですが、なかなかそういった市場の大きなトレンドの転換点に乗って新規顧客を開拓するのは難しいものです。
ところが、そういった市場の大きな変化とは別に、市場では、一つの普遍の法則とでも言える、人の購買行動が存在します。
それが、人の購買行動は、感情的論理に沿って行われるということです。
感情的論理は、以前、お伝えしましたが、初めて聞く方もいらっしゃると思いますので簡単に説明しますと、要は、顧客が買うものは、「ニーズ」でなく、「ウォンツ」で、人の購買行動は、「欲しい!(ウォンツ)、だって・・・、必要だから(ニーズ)」といった感情の流れに沿って行われるということです。
ですから、人は、「欲しい!」という感情が起きない物は買わないし、欲しくても、「なぜ、必要なのか?」という理由が見つからない物も買わないのです。
また、購買の意思決定は、「欲しい」という感情が「お金を失う恐怖」よりも強い感情になった時、人は、購買の意思決定をします。
たとえば、会社の将来を考えると、どうしても欲しい設備があるが、費用が高額なため、半分あきらめていた。
ところが、ある日、その設備を使った仕事の引き合いが来て、調べてみると、その仕事を受注すれば、短期間で設備に必要な費用を回収できることが判ったとすれば、「お金を失う恐怖」が緩和され、設備投資の意思決定につながります。
あるいは、個人でも、学生の頃、「欲しくてたまらないけど、とても高くて買えないと思っていた物」があったが、社会人になって収入が安定して来たころ、偶然、今なら手の届く金額で、しかも現品限りで売られていたので、思わず衝動買いしてしまった。
誰にでも、このような経験があると思いますが、このように、人は、「欲しい」という感情が「お金を失う恐怖」よりも強い感情になった時、購買の意思決定をします。
以前、ある歯科医院で、こんなことがありました。その歯科医院の歯医者さんは、明るいお人柄で、治療の腕も良く、いつもテキパキと治療するのですが、何故か、その歯科医院は、流行っていないようでした。
最初は、駅前に7件も歯科医院があるので、きっと、競争が激しくて、顧客の奪い合いになっているのかな? と、思いました。
ところが、何回か通院していると、ある時から、その理由がはっきりと判りました。
ある患者さんは、「先生、虫歯が治ってありがたいのですが、この継ぎはぎだらけに見える歯は、何とかなりませんか?」
また、ある患者さんは、「先生に治療して頂いて、食べやすくなったのですが、歯が3本斜めにそろって見えるのはカッコ悪いのですが・・・。」
こんな、患者さんとのやり取りを耳にするようになりました。
私たちは、歯を治療するために何度も同じ歯科医院に根気強く通院しますが、確かに治療は、「必要なこと」ですが、だからと言って、継ぎはぎだらけの歯や斜めに揃った歯が欲しいのではありません。
本当に欲しい物は、「綺麗な歯」なのです。
また、この逆に「安かろう、悪かろう」と言われるように、「欲しいことは満たすが、必要なことは満たさない」といったこともあります。
さすがに、「安かろう、悪かろう」は、顧客を騙すようなもので、論外です。
会社の計画的な成長を望むなら、「必要なこと」を完璧に満たすのは、あたりまえの話で、それだけでは、顧客は増えるどころか、水漏れするバケツのように流出していくのです。
会社を存続させるためには、最低でも1つは、顧客が「欲しい物」は何かを見極めて実行しなければなりません。
そして、新たに新規顧客を増やしたいのであれば、今後、顧客の「ウォンツ」をどの程度拡げて満たせるかが成功のカギを握るのです。
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なぜ、成功しないのか?(71)
まとめ(9)「売り上げを伸ばす方法」(2)
「水漏れするバケツ」
こんばんは。もうすぐ、クリスマスですね!
さて、前回、「売り上げを伸ばす方法」の全体像について説明し、集中的成長(既存市場での成長)について、小売業(花屋さん)を例にお伝えしました。
前回のポイントをまとめますと、売り上げを伸ばす時に、最初に全くの新規顧客を狙って、リスクの高いマーケティングを行うのではなく、最初は、既存客だけに焦点をあてて、現在の「自社の強み(売れる理由)」を客観的に理解し、小さな成功体験を積む。
そして、その後、「自社の強み(売れる理由)」を活かして、以下の3ステップの成長戦略で売り上げを伸ばすようにすれば、最小コストで最大効果を狙えることをお伝えしました。
1 集中的成長(既存市場での成長)
2 統合的成長(関連市場を取り込んだ成長)
3 多角的成長(現在の事業とは関係のない市場を取り込んだ成長)
ところで、既存市場の既存客を対象にして、売り上げを伸ばすことができれば、次は、2の統合的成長(関連市場を取り込んだ成長)のように思えますが、実は、既存市場では、あと2つ、やらなければならないことがあります。
それが、ロストした顧客の掘り起こしと新規顧客の開拓です。
ロストした顧客とは、以前、取引していたが、現在は、取引をしていない顧客のことです。
そして、売り上げを伸ばすための3つのステップは、
1 既存客へのアプローチ
2 ロストした顧客へのアプローチ
3 新規顧客へのアプローチ
この3つのアプローチをワンセットにして、1から3の順番でアプローチします。
1の既存客へのアプローチは、前回お伝えしましたので、今回は、残りの2のアプローチ方法について、お伝えします。
まず、この1~3のアプローチの違いは、費用面を中心に見ますと、
1 初期費用
2 初期費用+新たなプロモーション費用
3 初期費用+新たなプロモーション費用+新たなリサーチ費用
となり、既存客→ロストした顧客→新規顧客とアプローチするにつれて、コストが増える上、成功する難易度も高くなります。
しかしながら、市場のトレンドやニーズは常に変化し、いかなる会社も「水漏れするバケツ」のように顧客の流出は避けられないため、どうしてもロストした顧客、新規顧客へもアプローチして顧客化し、一定量の顧客数を維持しなければ経営が成り立たないのが現実です。
そこで、既存客の次は、ロストした顧客、そして、その次は、新規顧客の順番でアプローチします。
ロストした顧客にアプローチする時は、以前、SWOT分析を説明した時に機会分析についても説明しましたが、このSWOT分析と機会分析の考え方を応用します。
まず、SWOT分析の「自社の強み(売れる理由)」ですが、これは、既に既存客の売り上げを最大化する時に行った、既存客1社あたりの1回の売上額、購入回数を増やすことから導かれた成功要因が「自社の強み(売れる理由)」です。
次に、SWOT分析の「事業機会(機会分析)」は、ロストした顧客の過去の実績で年間の購入金額が大きく(魅力度)、アプローチして顧客化できる可能性(成功率)が高いロストした顧客から優先したアプローチリストを作ることが「事業機会」にあたります。
つまり、ロストした顧客を顧客化するために行うアプローチ方法とは、この「自社の強み(売れる理由)」を「事業機会」であるアプローチリストの順番に沿って「プロモーション」することで、ロストした顧客を顧客化することです。
プロモーションの方法は、企業間の取引では、表敬訪問でプロモーションを行うのなら、初回の表敬訪問は、社長と営業担当が同行し、その後、営業担当だけで6回表敬訪問したら、7回目の表敬訪問で、もう一度、社長と営業担当が同行してワンクルーにするのが効果的です。
このプロモーション方法は統計的な理由があり、プロモーションは、同じプロモーションを6回以上繰り返すと、プロモーションされた側の記憶に残るという習性があり、その習性を利用したものです。
また、社長は、7回に1度程度の表敬訪問ですが、この間隔にも統計的な理由があり、営業担当が6回以上同じプロモーションを繰り返すと、プロモーションされた側の記憶に残るのですが、逆に言うと、7回以上、営業担当だけしか表敬訪問しないと、初回の社長の表敬訪問のザイオンス効果が効かなくなってしまうため、最低でも7回に1度は、社長の表敬訪問が必要になるのです。
このプロモーション方法で、たとえば、週に1度表敬訪問すれば、3ケ月後には、ロストした顧客を顧客化できるか判断できます。
また、表敬訪問以外では、セールスレターや動画配信やビデオチャットでも同じようなことが出来ますが、特にロストした顧客には、やはり、社長自らの表敬訪問が最も効果的です。
では、次回は、既存市場での新規顧客の開拓についてお伝えしたいと思います。
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まとめ(8)「売り上げを伸ばす方法」(1)
おはようございます。今回より、スモールビジネス(中小企業)を中心に「売り上げを伸ばす方法」についてまとめます。
まず、スモールビジネス(中小企業)の社長によくある話に、売り上げを伸ばすために、最優先で新たな人間関係を作って何とかしようとすることがあります。
さすがに、フェイスブックで友達をたくさん作って人間関係をつくればとか、アメブロで読者1000人を超えたらとか、こういった話は論外としても、異業種交流会とか組合の懇親会といったものも、そういったことと大して変わらないことがほとんどで、イベントの主催者に参加者が貢献するだけで、参加者のビジネスのきっかけづくりにすらならないことが少なくありません。
人は追い込まれてしまうと、少し考えれば判ることでも、藁にもすがる思いで飛びついて失敗してしまうことがあります。
しかし、そういった時ほど冷静な判断が必要なのですが、なかなか出来ないものですね。
たとえ、何かの集まりをきっかけに人間関係を作って、そこから仕事の受注を目論んでも、1~2回は、お付き合いで会ってくれることもありますが、なかなか仕事を受注するといった話には発展しないものです。
また、そういった集まりを利用しなくとも、親しいお客さんや友人や知人に、お客さんになりそうな会社の人を紹介してもらうことを催促する人がいますが、これも迷惑な話で、何か問題が起きれば、紹介した人の信用問題になりかねませんので、お互いのためにも避けた方が良いと思います。
やはり、売り上げを伸ばすために、親しいお客さんや知人や友人を当て込んだ他人任せの行動をしても、どうにかなるものではなく、基本的には、社長自らが独立独歩の精神で動くことが必要です。
何故そうなるかは、原点回帰すれば直ぐに気づきますが、そもそも、誰のためのビジネスなのか? と、考えれば、その理由は明白です。
そういった他人任せの行動がないことを前提に話を進めますと、効率よく売り上げを伸ばすには、相手を選ばずに無差別にマーケティングをするのではなく、段階的に以下の3ステップで行うことが効果的です。
1 集中的成長(既存市場での成長)
2 統合的成長(関連市場を取り込んだ成長)
3 多角的成長(現在の事業とは関係のない市場を取り込んだ成長)
たとえば、花屋さんなら、1の集中的成長(既存市場での成長)は、現在いるお客さんの花の売り上げを増やす成長を考えることです。
そして、最小コストで最大効果を狙うには、以下の順番でアプローチします。
1 既存客が1回に購入する金額を増やせないか?
2 既存客が購入する回数を増やせないか?
3 1と2を同時にできないか?
たとえば、1の解決策として、今まで店頭で現金でしか購入できなかったが、クレジットカードでも購入できるようにする。
2の解決策としては、たとえば、来店して購入した顧客に、期限付きのサービス券を配ったり、プレゼントの抽選会の引き替え券を配る。
3は、1、2の順番で実行した結果、1、2をどのようにブラッシュアップすることで、季節変動がなく、継続的に売り上げを伸ばせるかを検討し、ブラッシュアップした内容を同時に行う。
このように、まずは、全くの新規顧客を狙って、リスクの高いマーケティングを行うのではなく、既存客だけに焦点をあてて小さな成功体験を創ることから始めます。
最初に、このことに成功できないと、自社の強み(売れる理由)が客観的に分かりませんので、次へのステップが見えないため、必ず、既存客から始めましょう!
では、次回は、2の統合的成長(関連市場を取り込んだ成長)について見ていきます。
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まとめ(7)
「なぜ、優秀な人ほど、いなくなるのか?」(2)
おはようございます。今回は、スモールビジネス(中小企業)では、「なぜ、優秀な人ほど、いなくなるのか?」という問題に対する2つ目の理由として、「雇用主側がピーターの法則を知らないか、ピーターの法則を従業員に教育できない」といったことを考察し、優秀な人材が流出しないための解決策を探ります。
では、まず、ピーターの法則をご存知ない方もいらっしゃると思いますので、ピーターの法則について簡単に説明いたします。
ピーターの法則とは、階層社会で働く人と組織の法則性を説明したものです。
たとえば、ビジネスでは、会社(組織)にとって、なぜ、「有能すぎる人」は、「無能な人」よりやっかいな存在で、いずれ解雇される運命にあるのか? と、いった問題の本質を教えてくれるのがピーターの法則です。
ですから、ピーターの法則は、社会学の法則ですので、たとえば、ドラッカーの組織論などは、ピーターの法則とかなり近い内容です。
ところで、ドラッカーもヒエラルキーの矛盾について様々な視点で述べています。
ドラッカーは、ビジネススクール(大学院)で、生徒に次の様な質問をしたそうです。
「ある経営者は、現在、自分の会社が帰属する業界は衰退し、業界や会社の将来が心配されるが、そんな中で、経営者は事業継承することを決めて、最終的に2人の候補者を選んだ。
一人は、革新的なタイプで、会社の過去にこだわらず、新たな分野にどんどん挑戦する人物。そして、もう一人は、全く逆のタイプで、職人肌で保守的な人物。
2人とも経営者自身が手塩にかけて育てた人物だが、経営者は、最終的にどちらの人物を後継者に選んだか?」
この質問は、経営者にとっては、考えるまでもない質問ですが、こういった組織論に関しては、不思議と管理職を対象にした研修でも、ほとんど研修の対象にされません。
しかし、こういったことを含め、ピーターの法則を学べば、経営者の問題に限らず、会社において、一見矛盾するような人の行動がなぜ行われ、どのように対処すれば良いかがある程度判かり、優秀な人材の流出も防ぐことができるようになれる可能性があるのです。
冒頭で、ピーターの法則では、会社(組織)において、「有能すぎる人」は、「無能な人」よりやっかいな存在で、いずれ解雇される運命にある。と、お伝えしましたが、「無能な人」が解雇されるのは判りますが、なぜ、「有能すぎる人」が、「無能な人」より邪魔者扱いされて解雇されるのか? 不思議に感じると思います。
ピーターの法則で言われる「有能すぎる人」とは、以下のような人です。
「試用教員のC・クリアリーの場合、最初の勤務場所は、知的障害者のいる特別学級でした。「あまり張りきりすぎないで」と忠告されていたにもかかわらず、彼は自分にできることを骨惜しみせずに生徒に教えました。
そして一年たってみると、統一学力テストの読解と算数の分野で、C・クリアリーが受け持ったクラスの生徒たちは、普通学級の生徒達よりも高得点を取るようになっていました。
しかし、そんな成果をだしたはずのC・クリアリーは解雇されました。その理由は、知的障害児たちに推奨されているビーズづくりや砂場遊びなどを全部さぼった、という理由でした。
確かに彼は、教育委員会がわざわざ購入した粘土やおはじきやフィンガーペインティング用の絵の具などを活用しませんでした。
たいていの階層社会において、有能すぎる人は、無能な人よりも不愉快な存在なのです。無能な人は、無能なだけなら解雇の対象になりませんが、ところが、有能すぎる人は解雇されることが少なくありません。
なぜなら、有能すぎる人は、チームプレーを忘れ、階層社会を破壊してしまうため、「階層は維持しなければならないという、階層社会第一の掟」に違反するのです。
野球で言えば、WBCで日本のチームは、派手な個人プレーができる選手がいたにも関わらず、チームプレーに徹した結果、優勝できました。
ところが、キューバのように、派手な個人プレーをする選手まかせのチームは、優勝候補筆頭であったのにも関わらず、意外と勝てませんでした。
同様に、ビジネスでも、派手な個人プレーが出来たとしても、ルールに沿って組織的な行動ができるプレイヤーであることが望まれているのです。
では、もし、有能すぎる試用教員のC・クリアリーが、教員研修でピーターの法則を学んでいたら、はたして、解雇されていたでしょうか?
実にもったいない話ですが、このことにおいても、社員の個人責任を追及する経営者は本末転倒です。
なぜなら、C・クリアリーのような有能な人材であれば、ピーターの法則を織り込んだ組織論の教育研修をすれば、チームプレーが何かを理解した上で、平均的な人より優れた能力を発揮できるのです。
そして、さらに現実的な問題として、ほとんどのスモールビジネスの経営者は、求人する時点からスキル研修以外の社員研修をしないのを前提にしているのです。
しかし、経営者自身は、会社を経営するためには、経営戦略、マーケティング、組織論、財務・会計、開発・製造・生産・工場・製品・店舗・・・、などの管理術、法務、労務・・・と、あげれば限がないほど、学ばなければなりません。
では、将来、後継者候補になる可能性のある有能な人は、ピーターの法則すら学ばなくても良いのでしょうか?
せめて、スキル研修以外にも、自社の経営戦略、マーケティング、組織論くらいの研修をして、優秀な人の流出を防いだ方が良いはずです。
なぜなら、人は教育によって、生まれ変わることができるのです。
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スモールビジネスは、
なぜ、成功しないのか?(68)まとめ(6)
「なぜ、優秀な人ほど、いなくなるのか?」(1)
おはようございます。今回は、スモールビジネス(中小企業)では、「なぜ、優秀な人ほど、いなくなるのか?」について考察します。
スモールビジネス(中小企業)の経営者にとって、この問題は、非常に頭の痛い問題ですが、この問題の原因は、2つです。
一つは、「会社にビジネスシステムやガバナンスなど、会社を円滑に運営するために必要なシステムやルールがない」。
そして、もう一つは、「雇用主側がピーターの法則を知らないか、ピーターの法則を従業員に教育できない」のが、その原因です。
いづれにせよ、原因は、全て、経営者側の無知、もしくは怠慢によって、生み出されるものです。
では、具体的にどんなことか見ていきましょう。
まず、一つ目の「会社にビジネスシステムやガバナンスなど、会社を円滑に運営するために必要なシステムやルールがない」ですが、これは、何度かご紹介しましたが、マイケル・E・ガーバーの著書に出てくる主人公の「パイ焼き職人の経営者サラ」が典型的な例です。
サラの勘違いは、サラにとって、会社(店)は、サラが美味しいと思うパイを焼いてお客さんに売る場所ですが、お客さんからすれば、サラのお店でなくても美味しいパイは買えるのです。
また、サラ本人が作って売るパイが食べたいのではなく、単純に美味しくて、リーズナブルな食品であれば、誰が作って売っても良いのです。さらに言えば、サラ個人に興味があってパイを買うのでもありません。
つまり、職人サラの致命的な勘違いは、製品(商品+サービス)に自分自身を埋め込んで、それが顧客から喜ばれる製品だと勘違いし、お店に来る顧客のニーズを見失っていました。
そして、顧客が食べたい食品を売るのではなく、自分が作りたいパイを売るようになりました。
まるで、職人サラは、「私が作りたいパイは、きっと、あなた(顧客)は食べたいはずよ。」と言わんばかりでした。
このように、職人サラは、自分マーケティングを続けていたため、顧客のニーズを見失い、行き詰まってしまいました。
そして、このような職人的な自分マーケティングをする経営者は、会社は自分の持ち物や財布だと思っている人がほとんどです。
よく、求人情報でも、「あなたの出番です!」、「弊社の自由な社風であなたの能力を存分に発揮してください!」といった、経営者が責任放棄した無責任な求人広告のタイトルを見ますが、こういったタイトルで求人広告をしている会社が、典型的な「ビジネスシステムやガバナンスなどのルールがない会社」で、「自分マーケティングが大好き」な会社です。
そして、会社は経営者の持ち物となり、経営者の財布です。ですから、当然、そんな会社で働く人は、自分が頑張れば頑張るほど空しくなるのです。
また、不思議とそういった会社の経営者ほど、なぜ、優秀な社員や頑張る人ほど会社で頑張って働くことが空しくなるかがわからずに、経営者側の考え方や行動が会社のルールだと言わんばかりに優秀な社員や頑張る人に自分の意見を押し付けてきます。
こういった事がそもそも優秀な社員が定着しない原因だと気づけても、その改善策として、従業員やパートタイマーの人にまで責任転嫁するための会議を増やして、返って働く人の負担を増やすことがあります。
たとえば、ある小売店の例では、「現場の事は現場の人がよく判っているのだから」と嘯き、パートタイマーの人にも会議という名の決意表明会に参加させ、参加した人が今後、何をするかまでも書かせて、本来、経営者側が考えて解決すべきことを売り場で働く人に責任転嫁していましたが、流石にこうなると、たとえ誰もが知っているような有名な会社でも、水漏れするバケツの様に働く人が辞めて行くのは当然なのではないでしょうか。
また、手軽で安いという理由から、自社の心臓部といっても過言ではないカスタマーサポートを派遣会社にまる振りするメーカーが増えましたが、マニュアルを丸暗記させてロールプレイング研修をして、その後、マナー研修をしたところで、そもそもが稚拙な理由で派遣会社に登録して働いているような人物に、社の将来を左右するカスタマーサポートをさせて良いのか、よくよく考えて猛省すべきではないかと思います。
以前もお伝えしましたが、会社は経営者のものではなく、ましてや、経営者の財布でもありません。
会社の真のオーナーは、顧客なのです。そして、経営者の仕事は、真のオーナーである顧客の要望に沿って、会社を改善して発展させるのが経営者の仕事であり、使命なのです。
そして、そこから、自社のビジネスシステムやガバナンスなどのルールを作れば良いのです。
このことが真に腑に落ちて行動すれば、その経営者は、「なぜ、優秀な人ほど、いなくなるのか?」が自然と判るはずです。
では、次回は、「なぜ、優秀な人ほど、いなくなるのか?」という、もう一つの理由である、「雇用主側がピーターの法則を知らないか、ピーターの法則を従業員に教育できない」ことについて、お伝えします。