まとめ(11)「売り上げを伸ばす方法」(4)
「的のない矢は当たらない」
こんにちは。前回、新規顧客の開拓をするにあたり、「顧客は何を買うのか?」についてお伝えしましたが、今回は、「売り上げを伸ばす方法」として、企業側の新製品開発に焦点をあててお伝えしたいと思います。
新製品を開発する初期費用が安いと、思いつきで新製品を作り、テストマーケティングもせずに売り込んでくる会社がありますが、そういった会社の製品を見ると、「この製品は、いったい、市場の誰が買うのか?」と思う時があります。
たとえば、鉄工所が製造販売する園芸用品、造園業が販売する食品など、異常なポジショニングの製品は論外としても、ある日突然、誰が買うかすら調べずに、本業と何ら関係のない製品開発をしても、上手く行くはずがありません。
やはり、的のない矢は当たることはありませんので、既存市場の誰のどんな不満の解決策として開発した製品なのかをはっきりさせてから製品開発することが必要です。
新規顧客を狙うのであれば、既存市場の新規顧客は、現時点では、競合他社の顧客ですから、市場で競合他社が満たせない「顧客の不満」は何かを見極めて、そこに集中した製品開発が必要です。
たとえば、飲料なら、市場全体のニーズは、のどの渇きを潤すのがニーズであり、顧客のウォンツは、のどの渇きを潤す時に、どのような「満足感」を伴うかです。
仮に、狙った新規顧客の不満が「清涼感」なら、競合他社の製品と、どのような「清涼感」で「顧客の不満の解決策」を提供すれば、競合他社の顧客が自社の製品に乗り換えて来るかを探った上で、新製品開発をします。
このように、既存市場で、新製品開発によって新規顧客を獲得したいのであれば、競合他社の顧客の「不満の解決策」が自社の新製品になるような製品開発が必要最低条件となります。
市場を顧客の属性で分類すると、「自社の顧客」、「自社がロストした顧客」、「競合他社の顧客」の3種類の顧客に分類できますが、新製品開発で行うことは、
「自社の顧客」=「自社の製品の不満」
「競合他社の顧客」=「競合他社の製品の不満」
「自社がロストした顧客」=「自社の製品の不満」もしくは、「競合他社の製品の不満」もしくは、「自社と競合他社の製品の不満」
これらの顧客の不満の「解決策」として、新製品開発を行います。
ところで、前回、売り上げを増やすために、「自社の顧客」→「自社がロストした顧客」→「競合他社の顧客」の順番にアプローチすることが最小コストで最大効果が狙えるとお伝えしました。
この順番でアプローチした場合、「自社がロストした顧客」は、「自社と競合他社の製品の不満」の2つの解決策が必要な時があるので、2番目にアプローチするのではなく、最後にアプローチした方が良いのではないかと思われる方もいらっしゃると思います。
ところが、そうではなく、「自社がロストした顧客」は、「自社の不満の解決策」だけで取り戻せることがありますので、収益性が最大になるのは、やはり、2番目にアプローチすることです。
これを、プロモーションの視点で、もう少し細かく説明いたしますと、プロモーションする順番は、
1 「自社の既存客」に新製品(自社の不満の解決策)のプロモーション
2 「自社がロストした顧客」に新製品(自社の不満の解決策)のプロモーション
3 「自社がロストした顧客」で顧客化できなかった顧客に新製品(競合他社の不満の解決策)のプロモーション
4 競合他社の顧客に新製品(競合他社の不満の解決策)のプロモーション
といった流れになりますから、仮に、新製品が、「自社と競合他社の不満の解決策」になっていれば、プロモーションは、4回ではなく3回で済みますので、収益性が最大になるのは、「自社がロストした顧客」は、2番目にアプローチすることが効果的です。
これらのことからも、新製品開発は、「自社と競合他社の不満の解決策」になっているのが理想的ですが、費用面から実現することが厳しい場合は、「自社の顧客の不満の解決策」に集中した新製品開発を行い、「自社の顧客」、「自社がロストした顧客」で水漏れするバケツの穴を塞ぐような、的を定めた新製品開発をすることが必要です。
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まとめ(10)「売り上げを伸ばす方法」(3)
顧客が買うのは、「ニーズ」でなく「ウォンツ」
こんばんは。今回は新規顧客の開拓について見て行こうと思います。
既存市場で売り上げを伸ばすために既存客、ロストした顧客にアプローチした次は、新規顧客にアプローチしますが、新規顧客にアプローチする時に特に意識しなくてはならないのが、顧客が買うものは、「ニーズ」でなく、「ウォンツ」だということです。
ところで、既存市場にいる新規顧客とは、競合他社の顧客ですから、現行の取引先に不満がないのなら、わざわざ取引先を増やしたり、代えたりする理由はありません。
しかし、市場は常に変化するため、いづれ、その変化について行けずに脱落する企業が現れ、その代役が必要になる時が来ます。
その時が新規顧客にアプローチする絶好のタイミングですが、なかなかそういった市場の大きなトレンドの転換点に乗って新規顧客を開拓するのは難しいものです。
ところが、そういった市場の大きな変化とは別に、市場では、一つの普遍の法則とでも言える、人の購買行動が存在します。
それが、人の購買行動は、感情的論理に沿って行われるということです。
感情的論理は、以前、お伝えしましたが、初めて聞く方もいらっしゃると思いますので簡単に説明しますと、要は、顧客が買うものは、「ニーズ」でなく、「ウォンツ」で、人の購買行動は、「欲しい!(ウォンツ)、だって・・・、必要だから(ニーズ)」といった感情の流れに沿って行われるということです。
ですから、人は、「欲しい!」という感情が起きない物は買わないし、欲しくても、「なぜ、必要なのか?」という理由が見つからない物も買わないのです。
また、購買の意思決定は、「欲しい」という感情が「お金を失う恐怖」よりも強い感情になった時、人は、購買の意思決定をします。
たとえば、会社の将来を考えると、どうしても欲しい設備があるが、費用が高額なため、半分あきらめていた。
ところが、ある日、その設備を使った仕事の引き合いが来て、調べてみると、その仕事を受注すれば、短期間で設備に必要な費用を回収できることが判ったとすれば、「お金を失う恐怖」が緩和され、設備投資の意思決定につながります。
あるいは、個人でも、学生の頃、「欲しくてたまらないけど、とても高くて買えないと思っていた物」があったが、社会人になって収入が安定して来たころ、偶然、今なら手の届く金額で、しかも現品限りで売られていたので、思わず衝動買いしてしまった。
誰にでも、このような経験があると思いますが、このように、人は、「欲しい」という感情が「お金を失う恐怖」よりも強い感情になった時、購買の意思決定をします。
以前、ある歯科医院で、こんなことがありました。その歯科医院の歯医者さんは、明るいお人柄で、治療の腕も良く、いつもテキパキと治療するのですが、何故か、その歯科医院は、流行っていないようでした。
最初は、駅前に7件も歯科医院があるので、きっと、競争が激しくて、顧客の奪い合いになっているのかな? と、思いました。
ところが、何回か通院していると、ある時から、その理由がはっきりと判りました。
ある患者さんは、「先生、虫歯が治ってありがたいのですが、この継ぎはぎだらけに見える歯は、何とかなりませんか?」
また、ある患者さんは、「先生に治療して頂いて、食べやすくなったのですが、歯が3本斜めにそろって見えるのはカッコ悪いのですが・・・。」
こんな、患者さんとのやり取りを耳にするようになりました。
私たちは、歯を治療するために何度も同じ歯科医院に根気強く通院しますが、確かに治療は、「必要なこと」ですが、だからと言って、継ぎはぎだらけの歯や斜めに揃った歯が欲しいのではありません。
本当に欲しい物は、「綺麗な歯」なのです。
また、この逆に「安かろう、悪かろう」と言われるように、「欲しいことは満たすが、必要なことは満たさない」といったこともあります。
さすがに、「安かろう、悪かろう」は、顧客を騙すようなもので、論外です。
会社の計画的な成長を望むなら、「必要なこと」を完璧に満たすのは、あたりまえの話で、それだけでは、顧客は増えるどころか、水漏れするバケツのように流出していくのです。
会社を存続させるためには、最低でも1つは、顧客が「欲しい物」は何かを見極めて実行しなければなりません。
そして、新たに新規顧客を増やしたいのであれば、今後、顧客の「ウォンツ」をどの程度拡げて満たせるかが成功のカギを握るのです。
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なぜ、成功しないのか?(71)
まとめ(9)「売り上げを伸ばす方法」(2)
「水漏れするバケツ」
こんばんは。もうすぐ、クリスマスですね!
さて、前回、「売り上げを伸ばす方法」の全体像について説明し、集中的成長(既存市場での成長)について、小売業(花屋さん)を例にお伝えしました。
前回のポイントをまとめますと、売り上げを伸ばす時に、最初に全くの新規顧客を狙って、リスクの高いマーケティングを行うのではなく、最初は、既存客だけに焦点をあてて、現在の「自社の強み(売れる理由)」を客観的に理解し、小さな成功体験を積む。
そして、その後、「自社の強み(売れる理由)」を活かして、以下の3ステップの成長戦略で売り上げを伸ばすようにすれば、最小コストで最大効果を狙えることをお伝えしました。
1 集中的成長(既存市場での成長)
2 統合的成長(関連市場を取り込んだ成長)
3 多角的成長(現在の事業とは関係のない市場を取り込んだ成長)
ところで、既存市場の既存客を対象にして、売り上げを伸ばすことができれば、次は、2の統合的成長(関連市場を取り込んだ成長)のように思えますが、実は、既存市場では、あと2つ、やらなければならないことがあります。
それが、ロストした顧客の掘り起こしと新規顧客の開拓です。
ロストした顧客とは、以前、取引していたが、現在は、取引をしていない顧客のことです。
そして、売り上げを伸ばすための3つのステップは、
1 既存客へのアプローチ
2 ロストした顧客へのアプローチ
3 新規顧客へのアプローチ
この3つのアプローチをワンセットにして、1から3の順番でアプローチします。
1の既存客へのアプローチは、前回お伝えしましたので、今回は、残りの2のアプローチ方法について、お伝えします。
まず、この1~3のアプローチの違いは、費用面を中心に見ますと、
1 初期費用
2 初期費用+新たなプロモーション費用
3 初期費用+新たなプロモーション費用+新たなリサーチ費用
となり、既存客→ロストした顧客→新規顧客とアプローチするにつれて、コストが増える上、成功する難易度も高くなります。
しかしながら、市場のトレンドやニーズは常に変化し、いかなる会社も「水漏れするバケツ」のように顧客の流出は避けられないため、どうしてもロストした顧客、新規顧客へもアプローチして顧客化し、一定量の顧客数を維持しなければ経営が成り立たないのが現実です。
そこで、既存客の次は、ロストした顧客、そして、その次は、新規顧客の順番でアプローチします。
ロストした顧客にアプローチする時は、以前、SWOT分析を説明した時に機会分析についても説明しましたが、このSWOT分析と機会分析の考え方を応用します。
まず、SWOT分析の「自社の強み(売れる理由)」ですが、これは、既に既存客の売り上げを最大化する時に行った、既存客1社あたりの1回の売上額、購入回数を増やすことから導かれた成功要因が「自社の強み(売れる理由)」です。
次に、SWOT分析の「事業機会(機会分析)」は、ロストした顧客の過去の実績で年間の購入金額が大きく(魅力度)、アプローチして顧客化できる可能性(成功率)が高いロストした顧客から優先したアプローチリストを作ることが「事業機会」にあたります。
つまり、ロストした顧客を顧客化するために行うアプローチ方法とは、この「自社の強み(売れる理由)」を「事業機会」であるアプローチリストの順番に沿って「プロモーション」することで、ロストした顧客を顧客化することです。
プロモーションの方法は、企業間の取引では、表敬訪問でプロモーションを行うのなら、初回の表敬訪問は、社長と営業担当が同行し、その後、営業担当だけで6回表敬訪問したら、7回目の表敬訪問で、もう一度、社長と営業担当が同行してワンクルーにするのが効果的です。
このプロモーション方法は統計的な理由があり、プロモーションは、同じプロモーションを6回以上繰り返すと、プロモーションされた側の記憶に残るという習性があり、その習性を利用したものです。
また、社長は、7回に1度程度の表敬訪問ですが、この間隔にも統計的な理由があり、営業担当が6回以上同じプロモーションを繰り返すと、プロモーションされた側の記憶に残るのですが、逆に言うと、7回以上、営業担当だけしか表敬訪問しないと、初回の社長の表敬訪問のザイオンス効果が効かなくなってしまうため、最低でも7回に1度は、社長の表敬訪問が必要になるのです。
このプロモーション方法で、たとえば、週に1度表敬訪問すれば、3ケ月後には、ロストした顧客を顧客化できるか判断できます。
また、表敬訪問以外では、セールスレターや動画配信やビデオチャットでも同じようなことが出来ますが、特にロストした顧客には、やはり、社長自らの表敬訪問が最も効果的です。
では、次回は、既存市場での新規顧客の開拓についてお伝えしたいと思います。
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まとめ(8)「売り上げを伸ばす方法」(1)
おはようございます。今回より、スモールビジネス(中小企業)を中心に「売り上げを伸ばす方法」についてまとめます。
まず、スモールビジネス(中小企業)の社長によくある話に、売り上げを伸ばすために、最優先で新たな人間関係を作って何とかしようとすることがあります。
さすがに、フェイスブックで友達をたくさん作って人間関係をつくればとか、アメブロで読者1000人を超えたらとか、こういった話は論外としても、異業種交流会とか組合の懇親会といったものも、そういったことと大して変わらないことがほとんどで、イベントの主催者に参加者が貢献するだけで、参加者のビジネスのきっかけづくりにすらならないことが少なくありません。
人は追い込まれてしまうと、少し考えれば判ることでも、藁にもすがる思いで飛びついて失敗してしまうことがあります。
しかし、そういった時ほど冷静な判断が必要なのですが、なかなか出来ないものですね。
たとえ、何かの集まりをきっかけに人間関係を作って、そこから仕事の受注を目論んでも、1~2回は、お付き合いで会ってくれることもありますが、なかなか仕事を受注するといった話には発展しないものです。
また、そういった集まりを利用しなくとも、親しいお客さんや友人や知人に、お客さんになりそうな会社の人を紹介してもらうことを催促する人がいますが、これも迷惑な話で、何か問題が起きれば、紹介した人の信用問題になりかねませんので、お互いのためにも避けた方が良いと思います。
やはり、売り上げを伸ばすために、親しいお客さんや知人や友人を当て込んだ他人任せの行動をしても、どうにかなるものではなく、基本的には、社長自らが独立独歩の精神で動くことが必要です。
何故そうなるかは、原点回帰すれば直ぐに気づきますが、そもそも、誰のためのビジネスなのか? と、考えれば、その理由は明白です。
そういった他人任せの行動がないことを前提に話を進めますと、効率よく売り上げを伸ばすには、相手を選ばずに無差別にマーケティングをするのではなく、段階的に以下の3ステップで行うことが効果的です。
1 集中的成長(既存市場での成長)
2 統合的成長(関連市場を取り込んだ成長)
3 多角的成長(現在の事業とは関係のない市場を取り込んだ成長)
たとえば、花屋さんなら、1の集中的成長(既存市場での成長)は、現在いるお客さんの花の売り上げを増やす成長を考えることです。
そして、最小コストで最大効果を狙うには、以下の順番でアプローチします。
1 既存客が1回に購入する金額を増やせないか?
2 既存客が購入する回数を増やせないか?
3 1と2を同時にできないか?
たとえば、1の解決策として、今まで店頭で現金でしか購入できなかったが、クレジットカードでも購入できるようにする。
2の解決策としては、たとえば、来店して購入した顧客に、期限付きのサービス券を配ったり、プレゼントの抽選会の引き替え券を配る。
3は、1、2の順番で実行した結果、1、2をどのようにブラッシュアップすることで、季節変動がなく、継続的に売り上げを伸ばせるかを検討し、ブラッシュアップした内容を同時に行う。
このように、まずは、全くの新規顧客を狙って、リスクの高いマーケティングを行うのではなく、既存客だけに焦点をあてて小さな成功体験を創ることから始めます。
最初に、このことに成功できないと、自社の強み(売れる理由)が客観的に分かりませんので、次へのステップが見えないため、必ず、既存客から始めましょう!
では、次回は、2の統合的成長(関連市場を取り込んだ成長)について見ていきます。
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まとめ(7)
「なぜ、優秀な人ほど、いなくなるのか?」(2)
おはようございます。今回は、スモールビジネス(中小企業)では、「なぜ、優秀な人ほど、いなくなるのか?」という問題に対する2つ目の理由として、「雇用主側がピーターの法則を知らないか、ピーターの法則を従業員に教育できない」といったことを考察し、優秀な人材が流出しないための解決策を探ります。
では、まず、ピーターの法則をご存知ない方もいらっしゃると思いますので、ピーターの法則について簡単に説明いたします。
ピーターの法則とは、階層社会で働く人と組織の法則性を説明したものです。
たとえば、ビジネスでは、会社(組織)にとって、なぜ、「有能すぎる人」は、「無能な人」よりやっかいな存在で、いずれ解雇される運命にあるのか? と、いった問題の本質を教えてくれるのがピーターの法則です。
ですから、ピーターの法則は、社会学の法則ですので、たとえば、ドラッカーの組織論などは、ピーターの法則とかなり近い内容です。
ところで、ドラッカーもヒエラルキーの矛盾について様々な視点で述べています。
ドラッカーは、ビジネススクール(大学院)で、生徒に次の様な質問をしたそうです。
「ある経営者は、現在、自分の会社が帰属する業界は衰退し、業界や会社の将来が心配されるが、そんな中で、経営者は事業継承することを決めて、最終的に2人の候補者を選んだ。
一人は、革新的なタイプで、会社の過去にこだわらず、新たな分野にどんどん挑戦する人物。そして、もう一人は、全く逆のタイプで、職人肌で保守的な人物。
2人とも経営者自身が手塩にかけて育てた人物だが、経営者は、最終的にどちらの人物を後継者に選んだか?」
この質問は、経営者にとっては、考えるまでもない質問ですが、こういった組織論に関しては、不思議と管理職を対象にした研修でも、ほとんど研修の対象にされません。
しかし、こういったことを含め、ピーターの法則を学べば、経営者の問題に限らず、会社において、一見矛盾するような人の行動がなぜ行われ、どのように対処すれば良いかがある程度判かり、優秀な人材の流出も防ぐことができるようになれる可能性があるのです。
冒頭で、ピーターの法則では、会社(組織)において、「有能すぎる人」は、「無能な人」よりやっかいな存在で、いずれ解雇される運命にある。と、お伝えしましたが、「無能な人」が解雇されるのは判りますが、なぜ、「有能すぎる人」が、「無能な人」より邪魔者扱いされて解雇されるのか? 不思議に感じると思います。
ピーターの法則で言われる「有能すぎる人」とは、以下のような人です。
「試用教員のC・クリアリーの場合、最初の勤務場所は、知的障害者のいる特別学級でした。「あまり張りきりすぎないで」と忠告されていたにもかかわらず、彼は自分にできることを骨惜しみせずに生徒に教えました。
そして一年たってみると、統一学力テストの読解と算数の分野で、C・クリアリーが受け持ったクラスの生徒たちは、普通学級の生徒達よりも高得点を取るようになっていました。
しかし、そんな成果をだしたはずのC・クリアリーは解雇されました。その理由は、知的障害児たちに推奨されているビーズづくりや砂場遊びなどを全部さぼった、という理由でした。
確かに彼は、教育委員会がわざわざ購入した粘土やおはじきやフィンガーペインティング用の絵の具などを活用しませんでした。
たいていの階層社会において、有能すぎる人は、無能な人よりも不愉快な存在なのです。無能な人は、無能なだけなら解雇の対象になりませんが、ところが、有能すぎる人は解雇されることが少なくありません。
なぜなら、有能すぎる人は、チームプレーを忘れ、階層社会を破壊してしまうため、「階層は維持しなければならないという、階層社会第一の掟」に違反するのです。
野球で言えば、WBCで日本のチームは、派手な個人プレーができる選手がいたにも関わらず、チームプレーに徹した結果、優勝できました。
ところが、キューバのように、派手な個人プレーをする選手まかせのチームは、優勝候補筆頭であったのにも関わらず、意外と勝てませんでした。
同様に、ビジネスでも、派手な個人プレーが出来たとしても、ルールに沿って組織的な行動ができるプレイヤーであることが望まれているのです。
では、もし、有能すぎる試用教員のC・クリアリーが、教員研修でピーターの法則を学んでいたら、はたして、解雇されていたでしょうか?
実にもったいない話ですが、このことにおいても、社員の個人責任を追及する経営者は本末転倒です。
なぜなら、C・クリアリーのような有能な人材であれば、ピーターの法則を織り込んだ組織論の教育研修をすれば、チームプレーが何かを理解した上で、平均的な人より優れた能力を発揮できるのです。
そして、さらに現実的な問題として、ほとんどのスモールビジネスの経営者は、求人する時点からスキル研修以外の社員研修をしないのを前提にしているのです。
しかし、経営者自身は、会社を経営するためには、経営戦略、マーケティング、組織論、財務・会計、開発・製造・生産・工場・製品・店舗・・・、などの管理術、法務、労務・・・と、あげれば限がないほど、学ばなければなりません。
では、将来、後継者候補になる可能性のある有能な人は、ピーターの法則すら学ばなくても良いのでしょうか?
せめて、スキル研修以外にも、自社の経営戦略、マーケティング、組織論くらいの研修をして、優秀な人の流出を防いだ方が良いはずです。
なぜなら、人は教育によって、生まれ変わることができるのです。
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スモールビジネスは、
なぜ、成功しないのか?(68)まとめ(6)
「なぜ、優秀な人ほど、いなくなるのか?」(1)
おはようございます。今回は、スモールビジネス(中小企業)では、「なぜ、優秀な人ほど、いなくなるのか?」について考察します。
スモールビジネス(中小企業)の経営者にとって、この問題は、非常に頭の痛い問題ですが、この問題の原因は、2つです。
一つは、「会社にビジネスシステムやガバナンスなど、会社を円滑に運営するために必要なシステムやルールがない」。
そして、もう一つは、「雇用主側がピーターの法則を知らないか、ピーターの法則を従業員に教育できない」のが、その原因です。
いづれにせよ、原因は、全て、経営者側の無知、もしくは怠慢によって、生み出されるものです。
では、具体的にどんなことか見ていきましょう。
まず、一つ目の「会社にビジネスシステムやガバナンスなど、会社を円滑に運営するために必要なシステムやルールがない」ですが、これは、何度かご紹介しましたが、マイケル・E・ガーバーの著書に出てくる主人公の「パイ焼き職人の経営者サラ」が典型的な例です。
サラの勘違いは、サラにとって、会社(店)は、サラが美味しいと思うパイを焼いてお客さんに売る場所ですが、お客さんからすれば、サラのお店でなくても美味しいパイは買えるのです。
また、サラ本人が作って売るパイが食べたいのではなく、単純に美味しくて、リーズナブルな食品であれば、誰が作って売っても良いのです。さらに言えば、サラ個人に興味があってパイを買うのでもありません。
つまり、職人サラの致命的な勘違いは、製品(商品+サービス)に自分自身を埋め込んで、それが顧客から喜ばれる製品だと勘違いし、お店に来る顧客のニーズを見失っていました。
そして、顧客が食べたい食品を売るのではなく、自分が作りたいパイを売るようになりました。
まるで、職人サラは、「私が作りたいパイは、きっと、あなた(顧客)は食べたいはずよ。」と言わんばかりでした。
このように、職人サラは、自分マーケティングを続けていたため、顧客のニーズを見失い、行き詰まってしまいました。
そして、このような職人的な自分マーケティングをする経営者は、会社は自分の持ち物や財布だと思っている人がほとんどです。
よく、求人情報でも、「あなたの出番です!」、「弊社の自由な社風であなたの能力を存分に発揮してください!」といった、経営者が責任放棄した無責任な求人広告のタイトルを見ますが、こういったタイトルで求人広告をしている会社が、典型的な「ビジネスシステムやガバナンスなどのルールがない会社」で、「自分マーケティングが大好き」な会社です。
そして、会社は経営者の持ち物となり、経営者の財布です。ですから、当然、そんな会社で働く人は、自分が頑張れば頑張るほど空しくなるのです。
また、不思議とそういった会社の経営者ほど、なぜ、優秀な社員や頑張る人ほど会社で頑張って働くことが空しくなるかがわからずに、経営者側の考え方や行動が会社のルールだと言わんばかりに優秀な社員や頑張る人に自分の意見を押し付けてきます。
こういった事がそもそも優秀な社員が定着しない原因だと気づけても、その改善策として、従業員やパートタイマーの人にまで責任転嫁するための会議を増やして、返って働く人の負担を増やすことがあります。
たとえば、ある小売店の例では、「現場の事は現場の人がよく判っているのだから」と嘯き、パートタイマーの人にも会議という名の決意表明会に参加させ、参加した人が今後、何をするかまでも書かせて、本来、経営者側が考えて解決すべきことを売り場で働く人に責任転嫁していましたが、流石にこうなると、たとえ誰もが知っているような有名な会社でも、水漏れするバケツの様に働く人が辞めて行くのは当然なのではないでしょうか。
また、手軽で安いという理由から、自社の心臓部といっても過言ではないカスタマーサポートを派遣会社にまる振りするメーカーが増えましたが、マニュアルを丸暗記させてロールプレイング研修をして、その後、マナー研修をしたところで、そもそもが稚拙な理由で派遣会社に登録して働いているような人物に、社の将来を左右するカスタマーサポートをさせて良いのか、よくよく考えて猛省すべきではないかと思います。
以前もお伝えしましたが、会社は経営者のものではなく、ましてや、経営者の財布でもありません。
会社の真のオーナーは、顧客なのです。そして、経営者の仕事は、真のオーナーである顧客の要望に沿って、会社を改善して発展させるのが経営者の仕事であり、使命なのです。
そして、そこから、自社のビジネスシステムやガバナンスなどのルールを作れば良いのです。
このことが真に腑に落ちて行動すれば、その経営者は、「なぜ、優秀な人ほど、いなくなるのか?」が自然と判るはずです。
では、次回は、「なぜ、優秀な人ほど、いなくなるのか?」という、もう一つの理由である、「雇用主側がピーターの法則を知らないか、ピーターの法則を従業員に教育できない」ことについて、お伝えします。
スモールビジネスは、
なぜ、成功しないのか?(67)
まとめ(5)「会社の成長戦略の立案方法」
おはようございます。さて、今回は、会社の成長戦略の立案方法について見ていきます。
ビジネスを一定期間やっていると、時々、予期せぬ飛込み客から注文が入り、自社が多角化できる可能性を知り、自社の業績回復や新たな成長ができる時があります。
この予期せぬ飛込み客のことを「シンデレラ」と言っていますが、この「シンデレラ」が現れた時が事業の転換点になりやすく、またとない事業機会をもたらすことがあります。
たとえば、前回の例なら、セイコーエプソン株式会社のように、時計メーカーがPCのプリンターメーカの子会社を持つような、本来、本業にしていなかったことに需要があり、その新しい需要を取り込むことによって業績を伸ばすことができるのです。
「シンデレラ」の特徴は、自社の新たな事業機会を教えてくれるため、「シンデレラ」が持ち込んだ仕事がたとえ少額であったとしても、そこから次の展開を考えることで、大きく事業を成長させることができます。
そして、事業を成長させる時には、
1 集中的成長
2 統合的成長
3 多角的成長
この3種類の成長を考えます。
また、1~3の内容は、
1の集中的成長は、既存市場での成長
2の統合的成長は、関連市場を取り込んだ成長
3の多角的成長は、現在の事業とは関係のない市場を取り込んだ成長
のことです。
一見、「シンデレラ」が持ち込む案件は、1の集中的成長で、既存市場での成長を促すものと思えるのですが、そうではなく、1~3の全ての可能性があります。
たとえば、引越し業者の場合なら、引越し業者が、エアコン、洗濯機、冷蔵庫、家具、カーテン、絨毯、床のコーティング・・・ など、本来、依頼を受けた業務とは関係のない製品を顧客から受注することがあります。
また、引越しの時に顧客から引き取った家電製品や家具などを古物商として関連会社で販売することもできます。
そして、そもそも引越し(運搬)にかかる料金よりも、引越しにまつわる製品の方の売上額が大きくなることもあり、事業も関連市場、新規市場と多角化も可能です。
つまり、引越し業なら、自社の事業の定義を引越し(運搬)だけに限定してしまうと、せっかく舞い込んでくれた「シンデレラ」からの贈り物を台無しにしてしまい、自社の新たな事業機会を損出してしまいます。
ですから、ここから汲み取るべき重要なことは、自社の事業の定義でさえ、自社が決めるのではなく、お客さんが決めるということです。
そうすることで、自社の成長の機会を与えてくれる「シンデレラ」が現れた時にも、その機会が生かせれば、自社の業績回復や新たな成長も可能になるのです。
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なぜ、成功しないのか?(66)
まとめ(4)「会社の成長戦略とは何か」
おはようございます。さて、今回は、会社の成長戦略とは何かについて見ていきます。
よく、「ランチェスター●●」とネーミングされた経営やマーケティングなどに関連付けたものがありますが、そこでは、「中小企業は弱者だから強者の大手企業とは戦わずに、大手企業が手を出せない市場の特定分野(ニッチ市場)に集中した経営戦略を取ることが、中小企業が唯一の生き残る道である。」と言われています。
一見、正しく見えますが、本当にランチェスターの法則と言われる戦争での戦闘モデルが経営やマーケティングと同じ数理モデルで成り立つか? と思えば、考えるまでもありませんね。
まず、経営戦略は、中小企業であろうが大手企業であろうが、同じです。事業規模には、何ら関係がありません。市場の成長性、現在の自社の市場でのポジションと将来像に合わせて経営戦略を決めるだけです。
そもそも、全ての大手企業は、最初はスモールビジネスから始めて大手企業になったのですから、中小企業は、ニッチ市場に集中した経営戦略を取ることが、中小企業が、唯一、生き残る道であると言うこと自体、ナンセンスな話です。
ランチェスター経営なるものが、どんな数理モデルや統計資料から納得できる再現性のあるビジネスモデルを根拠にして言っているのか、全く持って信憑性がなく、なぜ、そんなバカげたことを言っているのか呆れるだけです。
また、ランチェスター経営の推奨者は、特に地方産業で頑張っている会社に地域ナンバーワンになることをやたら力説しますが、自社が参加している市場が衰退期になっていて競合他社が撤退している時に、「猛烈に頑張って地域ナンバーワンになって、倒産しました!」とでも言わせたいのか? 無責任な言動はやめてほしい。
たとえば、セイコーエプソン株式会社なら、長野県の諏訪市で服部時計店から始め、その後、有限会社大和工業を設立して腕時計の部品製造や組み立てをするようになり、その後、株式会社諏訪精工舎となり、腕時計の一貫生産体制を確立しました。
そして、子会社として信州精器株式会社(後のエプソン株式会社)を設立し、1985年に諏訪精工舎と子会社のエプソン株式会社が合併して、現在のセイコーエプソン株式会社となりました。
会社は、こういった市場の変化にそって成長して行くのですが、これを服部時計店は、服部時計店として、長野県諏訪市でナンバーワンになることが、市場で唯一生き残る道だと言ってしまうと、現在のセイコーエプソン株式会社は存在しませんし、服部時計店も市場の変化にそって、市場のセグメントの移動と合併を繰り返すことで、現在のセイコーエプソン株式会社として生き残れたのです。
ですから、中小企業が生き残る道は、地域ナンバーワンになることが生き残る道ではなく、どのような事業規模であっても、会社は、市場の変化にそって、自社の強みを活かせる市場セグメントの移動と合併を繰り返すことで生き残って成長することが出来るのです。
ところで、生き残っていても、「もう、30年も零細企業をしていて、自転車操業が厳しくなるばかりで、どうにかならないものでしょうか?」と、おっしゃる方がよくいます。
30年も継続して商売をしていれば、何らかの強み(売れる理由)があるはずですから、1つは、自社が参加している市場セグメントの成長性を確認して、競合他社に競争で負けているのか? それとも市場のニーズが衰退しているのかをはっきりさせて、方針を決める必要があります。
そして、もう一つは、会社の将来像はあるのか? あるのなら、どんな将来像なのか? 将来像に向けて、毎日、どんなことをしているのか? を確認して、実行する必要があります。
以下は、以前、紹介しましたが、会社を成長させるには、どんなことをすればよいのかがよく分かりますので、参考にしてください。
出典:「はじめの一歩を踏み出そう」マイケル・E・ガーバー著
IBMの創業者であるトム・ワトソンは、IBMを成功させた理由について聞かれた時、次のように答えたと言われている。
「IBMが今日の姿に成長したのには、三つの特別な理由があります。
最初の理由は、事業を立ち上げて間もないころから、はっきりと会社の将来像を描いていたことです。
言い換えれば、私の夢やビジョンが実現した時に、会社がどんな姿になっているのかを想像する能力を持っていたということでしょう。
二番目の理由は、会社の将来像を決めた後に、そのような会社なら、どんな行動をするべきだろうか? と、自分に問いかけ、これを繰り返すことで、私は成長を遂げた後のIBMがどのような企業活動をしているのかについて、明確なイメージを創り上げていきました。
三番目の理由は、私がIBMを立ち上げて間もないころから、優良企業の経営者と同じくらいの厳しい基準をもって経営しようと心掛けたことです。
なぜなら、平凡な企業が突然、優良企業になることはできませんので、優良企業になるためには、会社を立ち上げた時から、毎日、優良企業のようなしっかりとした経営をしなければならないのです。
IBMでは、創業当初から、このような青写真がありました。そして、毎日、将来像に近づけるように、仕事が終わった時に、その作業がどれくらい進んでいたのかを確認していました。
そして、現在の姿と現在あるべき姿にギャップがある場合は、そのギャップを埋めるのが、翌日の課題となったのです。
ですから、今、思えば、私はIBMで商売をしていたのではありません。事業を成長させることに精力を注いでいたのです。
IBMでは、事業を経営していたのではなく、事業を創造していたのです。」
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まとめ(3)「ワンマン経営の本質」
おはようございます。さて、「ワンマン経営」と言うと、「えっ、それ、何ですか?」と、言われそうで、死語になったイメージの言葉ですが、ところが、そうでもなく、現在も普通に使われています。
ワンマン経営という言葉は、社長が独裁的な恐怖経営をするブラック企業というイメージがありますが、そうではありません。
たとえば、2008年の年末に、東京の日比谷公園で、派遣村という雇用難民の人達を救済しようという運動がありました。
ところが、派遣村に雇用難民として集まった人には、日雇いや期間労働者も多くいて、それなりの給料をもらっていたりしたため、翌月の15日には閉鎖されました。
この時、宣伝効果を狙ったのか、ハローワークに名乗りを上げて大量雇用を申し出た会社が何社もありましたが、それらの会社の多くが、典型的なブラック企業でした。
たとえば、ある会社は、希望者は無制限で受け入れると豪語していましたが、一人の応募者すらいませんでした。
その会社が提示した雇用条件は、大卒以上で日雇いや期間労働の6割くらいの給与で、寮はなく、受け入れ態勢は何もないと言うよりは、派遣村で日雇い労働をした方がはるかに労働条件が良いのです。
当然、その会社は新聞各誌からも、人の弱みに付け込んだ悪質な会社と痛烈な批判を受けましたが、その会社の社長は、マスコミの取材にも一切応じず、行政も何もしないままでした。
一般的に、こういったブラック企業の社長が行う会社経営がワンマン経営というイメージがありますが、政治でも恐怖政治という言葉があるように、こういった会社の経営は、恐怖で人を支配する恐怖経営で、決して、ワンマン経営ではありません。
ワンマン経営とは、「決断においてワンマンである経営」の事で、「全ての責任は社長が取る」といった経営です。
ですから、会社経営において、ワンマン経営は、いたって当然のことです。
また、これもよくありますが、社の方針に係わることでも権限移譲をして、責任を部下に取らせ、それを民主的な経営だと信じている社長がいますが、それは、民主的ではなく、責任放棄した無責任経営で、無責任経営を続けていると、多くの場合、事件や事故が起きて、会社の信用を失墜し、衰退の一途をたどることになります。
ワンマン経営には様々な利点がありますが、ワンマン経営の最大の利点はピンチに強いという点です。
パナソニックの旧式石油ストーブの回収と保障、日産のゴーン氏による会社の再建、トヨタのリコールに対する社長自らの対応を見ればわかるように、社長自らが勇猛果敢に会社の責任を取る姿勢がなければ、会社の再建や成長は望めません。
また、内容にもよりますが、クレームが起きると、社長に連絡があっても、担当者から連絡させますと従業員に言わせて、非常に無責任な逃避をする社長がいますが、そのような行動をした場合、即時、取引停止になることが殆どです。
以下は、以前ご紹介いたしましたが、本当のワンマン経営とは何かを理解する上で非常に役立ちますので、参考にしてください。
出典:経営の思いがけないコツ 一倉定著
●クレームに社長自ら駆けつける
S社は牛モツの納入業者である。同社はモツの鮮度保持に、あらゆる努力を惜しまない。そのためにお客様の信頼は絶大である。
ある時、大手スーパーから、モツの鮮度についてのクレームがついた。社長は、ただちにお客様のところに駆けつけた。現物を見ると、それは別の会社からの納入品であった。
バイヤーが待っていて、「あなたのところは、クレームをきくやいなやただちに社長が駆けつけてきた。
それに反して、クレームを起した会社は、社長どころか、セールスマンさえも顔をださない。」と怒って、その場の欠席裁判でライバル社を出入り禁止とし、S社長に、「我が社は二社購買が方針だが、事は衛生問題である。
仕入部長には私が事情を報告して了解をとるから、明日から全量を納入してもらいたい」と決めてしまった。
S社長いわく、「クレーム処理は儲かりますね」と。
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まとめ(2)「社長の使命とは何か」
おはようございます。さて、今回は、スモールビジネスのまとめの第2回目となります。
この「社長の使命とは何か」という質問に明晰に答えることができるスモールビジネスの社長も、ほとんどいません。
起業して間もない方は、しょうがないにしても、遅くとも起業して1ケ月以内には、何となくでもいいので、気づけないと、長期的な事業の存続は無理です。
以前、マイケル・E・ガーバーの書籍から引用して、サラというパイ職人の女性起業家の魂の叫びのような話をお伝えしました。
サラは、小奇麗なお店で美味しいパイをつくることが社長である自分の仕事だと信じていましたが、しかし、それだけでは、激務と金策に追われるだけで、社長が何をすれば良いか判らなくなり、その答えを探してマイケル・E・ガーバーを訪ねることから、この物語が始まります。
この書籍は、経営者や経営幹部諸氏が客観的に自分を見つめるには大変良い書籍ですが、ただし、この本での解決策だけでは、一つの方法論の提案だけに終始してしまい、本質的な解決策には至りません。
なぜなら、この書籍での解決策は、自社に最適なビジネスシステムを持つことが解決策となっているため、そもそも、社長の使命とは何かという本質を問うことがありませんでした。
その辺は、客観性を持たせるためにも、ドラッカー、ポーター、コトラー、松下幸之助、稲盛和夫、一倉定・・・、などの書籍や動画等を引用して捕捉しましたが、まず、経営者にとって重要な事は、手段や方法ではなく、なぜ、そう思うのか?という本質的な問題解決をする必要があるのです。
そして、そういった本質的な問題でも、そもそも「社長の使命とは何か」ということを明晰にしておきませんと、市場において我が社がすべきことすら何かも判らないのです。
ドラッカーは、「企業の使命とは何かと問われれば、それは、市場を創造することである」と明快に答えていますが、同様に「社長の使命とは何かと問われれば、それは顧客を創造すること」です。
ですから、極端な言い方をすれば、社長の仕事は、お客さんを創ることで、それ以外のことは、その準備のための補足的な作業なのです。
特に、事業継承で悩んでいる創業者の方にお伝えしたいのは、事業継承する時に自分の欲に負けた間違った判断をしないためにも、自分が創業した時のことを思い出して欲しい。
来る日も来る日も、自分ではどうすることもできない不安の中で、何とかお客さんを少しづつ増やし、自転車操業ながらも何とか会社を継続させて、ようやく今に至ったはずです。
そして、市場競争で生き残ることは、とても厳しいことだと創業者のあなたは、身を以て知ったはずです。
その経験からも、事業継承するつもりがあるのなら、いつまでも最前線で行動するのではなく、早い段階で継承者自身の力で顧客を創れるように育てることに集中して欲しい。
社長の使命は顧客を創ることだと身を以て知れば、会社は何とかなるのです。
世の中は、常に変化し、その変化についていけなくなった時、会社は倒産します。
しかし、社長の使命とは顧客を創造することだと身を以て知れば、自社が顧客のためにどのような変化をすれば良いかが判るのです。
このように、「社長の使命とは顧客を創造すること」であり、その使命を会社の本質的な問題の解決策の中軸に据えて企業活動していくことが必要です。
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まとめ(1)「会社とは何か」
こんにちは。62回に渡り、スモールビジネスが上手く行くために必要なことについて様々な視点からお伝えしましたが、少し捕捉しながらまとめたいと思います。
まず、スモールビジネスと言われているビジネス形態は、ざっくりと言いますと、次の3つのビジネス形態に分類して考える必要があります。
1 個人事業(フリーランス系)
2 個人が創った小規模事業所
3 出資や公的資金によるベンチャー型小規模事業所
この3種類がありますが、まず、1と2は、経営と言うよりは、多くても10人程度の従業員や外注先を確保して、自分達の雇用を維持するといったことがテーマになりがちです。
そして、それらに関する指南書や情報や動画が本屋さんやネットなど、様々な場所に溢れ返っていますが、ほとんどが欲を煽る稚拙な内容か、経営と何ら関係のないデタラメなもので溢れ返っています。
たとえば、中小企業振興公社の下請けをしている居候弁護士の経営セミナー、元銀行員が語るキャシュフロー経営、税理士や会計士が語るランチェスター経営、女性中小企業診断士による女性のための○○セミナーなど、タイトルを見ただけでも怪しい限りですが、特に、最近、ステータスを悪用した例が増えていますので、その手口に騙されないようにしてください。
たとえば、悪質な弁護士の特徴は、社会経験が浅く、共同弁護士事務所の看板を悪用し、相談者が経営に行き詰まり、うっかり相談すると、弁護士自身が自分の仕事を確保するために、すぐに相談者の破産を勧めてきたりします。
最近、相談を受けた例でも、話を要約すると「会社があと半年くらいしかもたないので、ある女性弁護士に公的機関の無料相談を通して相談したら、すぐに破産することを勧められましたが、どう思いますか?」という相談がありました。
そもそも、そんなところで営業している弁護士に経営相談すること自体が誤りですが、その女性弁護士の話を要約すると、「個人財産は嘘をついて合法的に隠せる」、「借金は証拠がなければ嘘をついて合法的に踏み倒せ」・・・ といった内容でした。
正直言って、法律云々以前に、この女性弁護士には、「お前は、弁護士と言う肩書を悪用した泥棒だ!」と言いたくなります。
また、この相談を頂いた方の話をよくよく聞いてみると、この女性弁護士以外にも何人もの弁護士に相談していて、「女性弁護士の時は、この人物は頭がおかしい?と思いましたが、でも、他の弁護士も大して変わらない結論でしたよ。」ということでした。
弁護士という肩書を悪用した悪質な例ですが、これ以外にも「医者と言う肩書を悪用したサウナ屋のおやじ」など、これまた、例をあげれば限りがありませんが、こういったステータスを悪用した人のセミナーや書籍などでバイアスがかかると、正気に戻るのが大変ですので、窮地に追い込まれた時ほど、「君子危うきに近寄らず」といったことが必要です。
その上で、話を戻すと、スモールビジネスの3つのタイプの共通テーマは1つです。
それは、「会社を創業した創業者自身が己の私心を捨てて、会社は、自分のものではなく、お客さんのものだということを自覚し、徹底すること」です。
たとえば、創業者の後継者選びでも、創業者の個人的な自己実現を継承してくれそうな人物を創業者は二代目に選びたがります。
これは、まだ、ましな方ですが、悪質なバイアスにかかっている場合、会社は自分の財布だと思っていますから、引退後も自分の財布を守ってくれる人選をします。
こういったことが正せない場合、仮に玉手箱のような仕組みがあったとしても、スモールビジネスそのものの運営は短期的なものになり、成長もしないし、長続きもしません。
また、3のスモールビジネスは、1,2と少しビジネス形態が異なり、決定的な違いは予算型ビジネスという点です。
予算型ビジネスの最大の欠点は、成果が顧客への貢献ではなく、いかに自分達の組織の予算を確保するかという点です。
そして、このビジネス形態が、さらに公共性を失うと、公的機関の下請けや、はけ口となるNPOやNGO、大手企業の窓際ベンチャーといった、もはやビジネスと言える状態ではありません。
このような予算型組織を作りたがる人の本音は、競争原理が働く世界から逃避して、自分の収入を確保する方法として自分達の組織運営を継続させたいのです。
つまり、前述のような自分が創業した会社は、自分の財布だと思っている経営者と同じ考えです。
まず、こういった、おかしな妄想や儲け話を排除することが必要です。
そして、スモールビジネスを行う上で、最初に改善すべきことは、「会社を創業した創業者自身が己の私心を捨てて、会社は自分のものではなく、お客さんのものだということを自覚し、徹底すること」です。
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マーケット・リサーチ(10)
おはようございます。今回は、SWOT分析(環境分析)でよくある誤認についてお伝えします。
企業の成長戦略のシナリオを創る時に、SWOT分析を行いますが、SWOT分析を行なって意思決定をする時に様々な誤認があります。
たとえば、企業の成長戦略のシナリオを創る時に、最初に行うべきことは、自社の事業領域を拡張することだと思われがちですが、決して、そうではありません。
なぜなら、成長戦略で最初に行うべきことは、「自社は何を諦め、今すぐやめるべき事は何か?」を決めることから始める必要があるからです。
なぜかと言いますと、たとえば、投資でも同じなのですが、損出を抱えたままで損切りをせずに新たなポジションを創ると、プロスペクト理論通り、余計に損出が増えます。
こういった場合、いったん損切りをしてから、新たなポジションを創るのが鉄則ですが、実態のあるビジネスにおいても全く同様で、まずは、「自社は何を諦め、今すぐやめるべき事は何か?」を決めてから、新しいことを始める必要があります。
また、現実問題として、SWOT分析では、教科書的には、1.「新たに実行すべき内容」、2.「克服すべき内容」、3.「撤退すべき内容」の3つの意思決定ツールですが、2の「克服すべき内容」については、現実問題として、自社が何かの課題を克服して事業機会を得るということが、ほとんどできません。
ですから、2の「克服すべき内容」は、グレーゾーンではなく、グレーに近いデッドゾーンとして判断した方が良いです。
つまり、SWOT分析では、「強み」と「機会」に焦点をあてて分析をし、それ以外は、「撤退する期日や理由」を明確に決めるためのツールとして利用された方が良いと思います。
たとえば、今、あなたが花屋さんをしているとして、顧客や市場を決定せずに不特定多数の人を対象に漠然と商売をしていたとします。
そう行った場合なら、自社の「強み」と「機会」から自社が競争優位になるような「業界」や「市場」を特定するためにSWOT分析を行います。
たとえば、不特定多数の顧客に花を売ろうとするのではなく、「医療」、「食品」、「催事市場」など、自社が競争優位になるような「業界」や「市場」を見つけ出すためにSWOT分析を行うのです。
SWOT分析を行って意思決定をする時は、こういった点に特に注意してください。
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マーケット・リサーチ(9)
おはようございます。前回までで、3C分析、機会/脅威分析についてお伝えしましたので、今回は、SWOT分析(環境分析)についてお伝えします。
まず、SWOT分析(環境分析)の分析手順を説明します。
SWOT分析(環境分析)は、マクロ環境(政治、経済、社会、技術、デモグラフィックス、自然)、ミクロ環境(業界、市場)から自社に影響を与える情報を収集し、3C分析によって、自社の「強み」・「弱み」を特定し、機会/脅威分析から自社の「機会」・「脅威」を特定します。
そして、次に、特定した「強み」・「弱み」、「機会」・「脅威」の4つの項目より、クロス分析・評価をして、以下の4つの意思決定を行います。
1.「強み」と「機会」より、自社が新たに実行すべきことを決める
2.「弱み」と「機会」より、自社が克服すべきことを決める
3.「強み」と「脅威」より、自社が克服すべきことを決める
4.「弱み」と「脅威」より、自社が撤退すべきことを決める
SWOT分析では、このような「強み」・「弱み」、「機会」・「脅威」の4つの項目よりクロス分析をして、その内容を評価して、意思決定を行います。
ですから、SWOT分析も、分析と言っても専門的な計算や手法があるわけではなく、意思決定ツールですので、該当する項目を分類・比較・評価して、意思決定するだけです。
ここで、SWOT分析の分析手順を要約しますと、
1.マクロ/ミクロ環境から自社に影響を与える情報を収集する。
2.3C分析によって、自社の「強み」・「弱み」を特定する。
3.機会/脅威分析から自社の「機会」・「脅威」を特定する。
上記の1~3より、
4.「強み」・「弱み」、「機会」・「脅威」をクロス分析して、自社が
1.「新たに実行すべき内容」
2.「克服すべき内容」
3.「撤退すべき内容」
この3つの意思決定を行います。
では、次回は、SWOT分析でよくある誤認についてお伝えしたいと思います。
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なぜ、成功しないのか?(60)
マーケット・リサーチ(8)
おはようございます。今回は、SWOT分析(環境分析)の機会/脅威分析についてお伝えします。
まず、SWOT分析の機会/脅威分析を行うための情報は、以前お伝えしたように、マクロ環境の変化によって、自社が現在参加しているか、もしくは、これから参加、撤退する業界や市場に与える機会/脅威の情報を収集します。
収集する情報の項目としては、次の6項目です。
1 政治
2 経済
3 社会
4 技術
5 デモグラフィックス(人の統計的な属性)
6 自然
この6つの項目に沿って、マクロ情報を収集し分析します。情報の収集先は、政府の資料、業界紙、シンクタンク、様々なメディア・・・ など、信頼できるマクロ情報であれば、どこから収集しても構いません。
では、機会/脅威分析の方法について説明いたします。
機会/脅威分析は、分析の方法に定型のフォームがあり、そのフォームを使います。
まず、機会分析は、「魅力度」を縦軸にし、「成功確率」を横軸にして、4つの事象に分類できる機会マトリックスを作り、自社にとって「魅力度」(利益を出せる可能性が高い)と「成功確率」から判断して、「機会」(自社の事業機会)を評価します。
たとえば、新しい技術が普及し、市場のニーズがアナログからデジタルへと変化しだしたとします。
こういった場合、「機会」を評価するには、デジタル化は、自社にとって、「魅力度」(利益を出せる可能性が高い)と「成功確率」が高いかを判断して、「機会」を分析して評価します。
また、市場のニーズがアナログからデジタルへと変化しだした時、その変化が事業機会になる企業もありますが、逆に事業脅威になる企業もあります。
こういった場合、「深刻度」を縦軸にし、「発生率」を横軸にして、4つの事象に分類できる脅威マトリックスを作り、自社にとって「深刻度」(損失の程度)と「発生率」から判断して、「脅威」(自社の事業脅威)を分析して評価します。この時に行う分析が脅威分析です。
機会/脅威分析も、このように、分析といっても特別に難しい計算や手法があるわけではなく、マトリックスを作って4種類の事象に別けて、マクロ環境の変化が自社にとってどのような影響を与えるか、その変化を4種類の事象に分類して、評価するだけです。
以上で、SWOT分析をするために必要な3C分析、機会/脅威分析の2つの分析についてお伝えしましたので、次回は、この2つの分析から導かれた、「強み」、「弱み」、「機会」、「脅威」から、どのようにSWOT分析を行うのかについて説明いたします。
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なぜ、成功しないのか?(57)
マーケット・リサーチ(5)
おはようございます。前回、SWOT分析(環境分析)を行うためにどのような情報を収集すれば良いか説明いたしましたので、今回は、SWOT分析(環境分析)は、どのような方法で分析するか見ていきましょう。
まず、SWOT分析(環境分析)は、次の2つの分析で構成されています。
1.3C分析(強み/弱み分析)
2.機会/脅威分析
この2つの分析です。マーケティングでは、○○分析というのが、やたら出てきますが、ここで、少し、分析とは何かについて説明します。
マーケティングで行われる分析は、次の2種類しかありません。
1.定量分析
2.定性分析
この2つです。定量分析とは、読んで字のごとく、市場サイズ、標準価格、予想売上高など、数量を調べる時に行う分析です。
たとえば、これから販売する製品の価格を決める時に、価格弾力性分析をして、製品が売れ易い価格帯を見つけ出して定価を決めたりします。このような数量にまつわる分析が定量分析です。
また、定性分析も読んで字のごとく、何かの性質を調べる時に行う分析です。
たとえば、電気スタンドなら、いろんな種類の特徴を持った電気スタンドがありますが、そのどんな特徴の組み合わせが顧客から選好され易いのかを調べる時にコンジョイント分析をします。
このように、マーケティングで行われる分析は、定量分析、定性分析の2種類の分析がありますが、SWOT分析(環境分析)は、ほとんど定性分析しかしません。
では、次回は、3C分析について、説明いたします。
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