スモールビジネスは、
なぜ、成功しないのか?(55)
マーケット・リサーチ(3)
おはようございます。前回までで、マーケット・リサーチの「そもそも論」についてお伝えしましたが、これ以上、ビジネスというよりは、趣味の延長レベルの人向けの話を続けてもしょうがないので、話を本題に戻し、進めます。
結局、企業がマーケティングで行うこととは、自社の「強み」と「事業機会」から自社が参加する業界や市場での戦略(作戦)、戦術(道具)を決めて実行することです。
この戦略、戦術を決定するために必要な情報収集をして分析する作業がマーケット・リサーチです。
そして、この企業の戦略、戦術の決定は、次の2つの項目で行います。
1 SWOT分析(環境分析)
2 STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)
ですから、マーケット・リサーチでは、この2つの項目の情報収集と分析をします。
2のSTPについては、以前から何回かに渡って説明しましたが、再度、ざっくりと説明しますと、STPで決めることは、まず、セグメンテーションでは、自社の「強み」と「事業機会」から自社が参加する「業界」と「市場」を決定します。
そして、ターゲティングでは、参加する「市場」での「セグメント(分野)」、「顧客」、「競合他社」、「自社のマーケティングの7P」を決定します。
そして、ポジショニングでは、どのようなポジションで市場に参加するかを決定します。市場での企業のポジションは、次の4つのポジションがあります。
1.マーケットリーダー(市場で最安値を実現)
2.チャレンジャー(価格競争でリーダーと対決)
3.フォロアー(1、2の物真似)
4.ニッチャー(1~3が満たせないニーズを満たす)
スモールビジネスの企業や大手であっても新規参入者は、実際のところ、ポジショニングの法則からも、4のニッチャーのポジションでしか市場に参加できません。
また、ニッチャーとして市場に参入しても、参入したニッチ市場内でも市場全体と同じように1~4のポジションの企業がニッチ市場に存在し、結局、ニッチ市場であっても、最終的に生き残るのは、ニッチ市場で価格競争ができる1、2のポジションになれる企業だけです。
では、次回は、SWOT分析(環境分析)で、どんな情報収集と分析を行うかを説明いたします。
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なぜ、成功しないのか?(54)
マーケット・リサーチ(2)
スモールビジネスのそもそも論に、盲人が盲人を導こうとすることが多々あります。そして、そんな人に限って、「下請けをしたくない」、「薄利多売はもう嫌だ」、「工賃仕事から足を洗いたい」、「もっと儲かる仕事がしたい」など、言えばきりがないほど、身勝手な願望を描きます。
こんな人を一言で言えば、「的のない矢を放つ怠け者もしくは評論家」にすぎませんが、そもそも、適切な学習と行動をしないで妄想や欲望を描いたところで、事態は良くなりません。
魚釣りで言えば、どこにどんな魚がいるか調べず、しかも釣り道具すら持たずに餌だけ持って浜辺でうろうろしているようなもんで、プロの漁師であっても魚群探知機という秘密兵器を装備して必死に頑張っても、「この先、どうなるんだろう?」と、戦術だけでは不安がよぎるのに、おめでたいとしか言いようがありません。
ドラッカーの遺言からも引用してお伝えしましたが、ドラッカーも言うように、これからの時代は、価値ある情報を資本として企業経営する時代なのですから、せめて、マーケットリサーチ(魚群探知機で探査)くらいしないと、市場から強制退場させられるだけです。
マーケットリサーチと言うと、途端に分かりづらくなりますが、そういったあまり馴染みのない言葉を使わずに、企業経営でマーケットリサーチでは何をするかと言いますと、結局、「いつ」、「どこで」、「誰が」、「何を」、「どのようにして」、「どれくらい」、「なぜ、売れるのか」等を調べることがマーケットリサーチです。
ですから、こういった情報収集と分析をしないで行動するということは、企業経営をする上でありえない話ですが、これがないのが成長できないスモールビジネスの特徴で、マイケル・E・ガーバーが言うところの「幼年期」、「青年期」あたりの「職人経営」、あるいは、「個人経営」しか知らない人達が行うスモールビジネスの特徴です。
マイケル・E・ガーバーの著書のうわべだけを鵜呑みにした人達は、個人がビジネスシステムを持ってスモールビジネスを行えば、楽して大儲けできると勘違いしています。
しかし、たとえば、誰かが作った既にあるフランチャイズやビジネスモデルに相乗りしたところで、発案した人や会社が儲かるだけで、相乗りした個人は、上手く行っても自分の雇用を確保したにすぎず、ないよりましといった程度以上の発展はありません。
もし、本当に大志を描いて起業するのであれば、ああいった発想を参考に、一から自分でビジネスシステムやビジネスモデルを手作りできなければ、誰かに雇われて働くよりも、さらに厳しい現実が待っているだけです。
ですから、まず、せめて自分もしくは自社の魚群探知機で市場の探査から始めなければ、何も始まらないし、何も変わらないのです。
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なぜ、成功しないのか?(53)
マーケット・リサーチ(1)
おはようございます。前回でスモール・ビジネスの話を終わりにして、まとめに入るつもりでいましたが、実は、いろいろとご質問を頂くことがあり、そういった中でも、特にマーケット・リサーチについては、お伝えした方が良いと判断しました。
そこで、自分にとっては番外編(笑)になりますが、マーケット・リサーチについても、知るべき重要な点について、次回から何回かに渡りお伝えします。
まず、特に意図的にSWOT分析の話は避けていましたが、実は、このSWOT分析に関する質問を最も多く頂いています。
ただ、SWOT分析を正しく理解するのは、大変ですし、ちゃんとやると、リサーチにかかる費用や期間がスモール・ビジネスという枠に収まらないことが殆どですが、だからと言って無視することもできません。
そこで、スモール・ビジネスという枠に収まる範囲でSWOT分析についてお伝えしながら、マーケット・リサーチの全体像についてお伝えしたいと思います。
まず、マーケティングは、次の4つの工程でできています。
1 調査
2 分析
3 計画
4 実行
この4つです。よく、この4つの工程を、PDCAサイクルとごっちゃにする人がいますが、全く関係ないので、混乱しないようにしてください。
そして、マーケット・リサーチは、この4つの工程の1、2に当たりますが、スモール・ビジネスをされている方のほとんどが、「マーケット・リサーチって、いったい何をするの?」、「そもそも必要なの?」と、感じられていて、マーケット・リサーチをしません。
つまり、マーケティング活動をニーズという客観的事実に基づいて行うのではなく、噂、思い込み、勘、自分がやりたいことなどで判断して、行動します。
それらの行動は、たとえて言うなら、水たまりで魚釣りをする、あるいは、海で川魚を狙うといった行動で、せめて、自分が持っている釣り道具とえさで、どんな場所で、どんな魚が釣れるのかを知らなければ、そもそも、ビジネスになりません。
次回から、こういった、そもそも論にならぬように、SWOT分析を中心に、マーケット・リサーチについて、お伝えしていこうと思います。
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なぜ、成功しないのか?(52)
ポジショニングの法則「習慣の法則」(3)
日本では、第二次世界大戦後、国の政策で自動車の輸入の自由化がされ、日本の自動車産業にも激しい市場競争が始まり、様々な規模の自動車メーカーの統廃合がされていった。
そして、そんな厳しい市場競争の中で、日産自動車は、スカイラインGTをリ・ポジショニングして、爆発的な成功を収めた。
その当時、日産自動車は、プリンスという町の小さな自動車メーカーを吸収合併した。
プリンスは、町の小さな自動車メーカーだったが、その優れた技術力は、最終的には、あのポルシェを出し抜き、カーレースで無敗の50連勝という前代未聞の快挙を成し遂げ、当時、世界最速の車、スカイラインGTを生み出したのだった。
プリンスが掲げたスカイラインGTのコア・コンセプトは、実に単純だった。
第二次世界大戦当時、世界最速の戦闘機と言われたゼロ戦のエンジンをスカイラインGTのエンジンに組込み、走るゼロ戦を実現したのだ。
そして、その後、スカイラインGTの大衆向け乗用車は、発売と同時に飛ぶように売れた。
このように日産自動車は、自社のブランドイメージを更に強化する形で、戦闘機のエンジン(ポジション)を自動車に組込み、走るゼロ戦(リ・ポジショニング)を実現し、さらなるシェア拡大を図ることができたのだった。
つまり、ゼロ戦は、スカイラインGTに組み込まれ、走るゼロ戦としてリ・ポジショニングされることで、今度は日本の自動車産業に神風を呼ぶ希望の光となったのだ。
優れたリ・ポジショニングとは、このように行なわれるのである。
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なぜ、成功しないのか?(51)
ポジショニングの法則「習慣の法則」(2)
ポジショニングの法則の「習慣の法則」とは、簡単に言えば、「人は、馴染みのある物を買う」という習慣のことである。
そして、この「習慣の法則」を利用して市場でブレイクスルーする方法として、リ・ポジショニングがある。
リ・ポジショニングとは、「馴染みのある物」と「現在のトレンド」とを組み合わせて、新たなポジショニングを行うことである。
たとえば、最近よく見かける食品に、「昔ながらの~」とか、「街の洋食屋さんの~」とか、「イタリアの家庭の~」といった食品があるが、こういった誰もが知っている美味しいものを時流の製品と組み合わせた食品が典型的なリ・ポジショニングされた製品の例である。
特に冷凍やレトルト食品に、こういったリ・ポジショニングされた製品を多く見かけるようになったが、実際に食べてみると、本当に美味しいことが多い。
最近は、CAS冷凍など、冷凍技術が進歩したこともあり、スーパーへ行けば、冷凍だが、コシのある生の平打ち麺のボロネーゼパスタが、わずか190円で買え、しかも、そこいらのレストランよりも、はるかに美味しいことには驚かされる。
このように、リ・ポジショニングとは、「馴染みのある物」と「現在のトレンド」とをただ単に組み合わせるだけではなく、組み合わせた製品の品質や価格など、マーケティングの7Pの何かが向上しなければ意味がない。
また、リ・ポジショニングされた製品に似たものに、物真似、リバイバル製品があるが、これらとは全く違うものなので、混同しないように注意して欲しい。
リ・ポジショニングされた製品は、開発する難易度は高いが、開発できれば、大きく当たらなくとも、長期に渡って安定して製品が売れ、金のなる木のポジションをとる製品になることが多いので、是非とも検討して欲しい。
また、リ・ポジショニングで爆発的な成功をした事例は多々あるが、その中でも、日産自動車のスカイラインGTの話は大変有名な話である。
次回は、その事例について触れたいと思う。
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なぜ、成功しないのか?(50)
ポジショニングの法則「習慣の法則」(1)
ポジショニングの法則には、2つの重要な成功要因がある。一つは、前回までに申し上げた様に、ハート、マインド、マーケットに関するシェアでのポジショニングだ。
そして、もう一つの成功要因は、「習慣の法則」である。
この2つの成功要因をセットにして満たせるようになれれば、市場で安定した成長曲線を描くことができるようになる。
では、ポジショニングの法則の「習慣の法則」について見て行こう。
ポジショニングの法則の「習慣の法則」とは、簡単に言えば、「人は、馴染みのある物を買う」という習慣のことである。
たとえば、いつも通っている馴染みの床屋で、「いつもの感じで」と言えば、自分のお気に入りのヘアースタイルになる様に、「人は、馴染みのある物を買う」という習慣がある。
この「人の習慣」に沿って、自社のポジショニングを行うことが重要な成功要因になる。
つまり、マーケティング活動を行う時に、今まで、見たことも、聞いたことも、使ったこともないような製品は、作らないし、販売しないことが成功要因となるのだ。
たとえば、ブラウザ一つとっても、普段、エクスプローラ―を満足して使っている人に、グーグルクロームを勧めても、余程の事がない限り、乗り換えてくる可能性はない。
だが、グーグルからすれば、だからと言って、あきらめる訳にはいかない。乗り換えてもらわなければ、何も始まらないのである。
しかし、市場に既に先駆者が独占的に市場を支配している場合、後続で参入すると、苦戦を強いられ、何らかのブレイクスルーする方法論が必要となる。
そして、それが、リ・ポジショニングという方法論である。
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