なぜ、成功しないのか?(2)
「起業家の神話」マイケル・E・ガーバーより
テレビや雑誌などを通じて、華やかな起業家のサクセスストーリーが紹介されるにしたがって、起業家のイメージは、あまりにも美化されてしまったように思う。
このことを私は「起業家の神話」と呼んでいる。
私は二十年に渡って、多数のスモールビジネスの経営者と出会ったが、本当に起業家と呼べるような人物は、ほんの一握りにすぎないというのが実感である。
とは言え、彼らは全員、リスクを冒してまでも、大きな夢を達成しようとしたことに間違えはない。
実際に自分の事業を立ち上げたのである。しかし、今となっては、高い理想を掲げていた頃の自分は、どこへ行ってしまったのか?
この疑問への答えは、とても簡単だ。彼らに宿った起業家精神は、ほんの一瞬だったのである。
起業家精神は、一瞬で失われ、ほとんどの場合、二度と取り戻されることはなかったのである。
残念なことに、多くの人が美化されたサクセスストーリーに騙された結果、財産を失い、人生を棒に振ってしまう。
私が「起業家の神話」と呼んでいるように、いまだに多くの人は、起業家こそがスモールビジネスを立ち上げるという、根拠のない幻想にまどわされているように思う。
しかし、その神話は幻想にすぎないのである。
それでは、いったいどんな人たちが、スモールビジネスを立ち上げているのだろうか?
●「起業熱から全てが始まる」
根拠のない幻想に騙されないためには、事業を立ち上げようとする人たちをじっくりと観察してみなければならない。
その時、大切なことは、事業を立ち上げた後ではなく、立ち上げる前にじっくりと観察することである。
彼らは、事業を立ち上げる前にどんな仕事をしていたのだろうか?
普通なら、誰かの部下として働いているだろう。そして、専門性の高い仕事をしていることが多い。
たとえば、医者や行政書士や税理士などの士業、エンジュニア、美容師、大工、デザイナーと、いろいろな種類の仕事が考えられるが、きっと、その道のプロとして自負をもっているに違いない。でも、誰かの部下として働いていることには変わりはない。
そんな彼らが、ある日、突然、起業熱に取りつかれてしまうのである。
起業熱に取りつかれる前の彼らは、心の中で、「何のために、この仕事をやっているのか? どうしてあんな上司のために働いているのだろう? この仕事のことなら、上司に負けないぐらい知っている。 自分がいないと、この会社は立ち行かなくなるだろう。 誰だって、この仕事で一儲けできるし、自分は、この道のプロだ。」こんな心の呟きが頭から離れなくなる。
そして、その日を境に、起業熱に取りつかれ、運命は大きく変わってしまうのである。
会社や組織のルールを破ることが快感になり、独立して生き生きと仕事をする自分の姿が目に浮かぶようになる。
そして、人から指示を受けたくないし、自分だけの仕事がしたいという気持ちが、どんどん強くなって来る。
こんな起業熱が始まると、落ち着きを失い、熱を冷ますことができないまま、彼らは、起業へと突き進むことになるのである。
スモールビジネスを立ち上げる人は、ほとんどが、こんな人だ。不自然に美化されたような起業家は、現実には、存在しないのである。
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