2014年5月12日月曜日

スモールビジネスは、なぜ、成功しないのか?(21) 「自社の強みとは何か?」(3) 青年期のゾンビ 自称プロ歌手キャサリンの過ち

スモールビジネスは、

なぜ、成功しないのか?(21)

「自社の強みとは何か?」(3)

青年期のゾンビ

自称プロ歌手キャサリンの過ち





自社の「強み」(製品が売れる理由)を知ることは、簡単にできる。しかし、なぜか、ほとんどのスモールビジネスの経営者は、無意識のうちに、その理由を知ることを拒否するのである。そして、売れる理由を知り、変化を受け入れるより、倒産することを選ぶのである。

なぜ、スモールビジネスの経営者は、そんなに自社の強み(製品が売れる理由)を知ることを拒否するのだろうか?

ここで、重要な登場人物、キャサリンの例を紹介する。

キャサリンは、プロの歌手になりたくて、昼間は音楽出版社でアルバイト、夜は週に1度、ロック歌手として、ライブハウスを中心に音楽活動をしていた。

そして、長年の地道な活動が認められ、マイナーレーベルだが、CDを販売することをきっかけにアルバイトをやめて、キャサリンは、プロのロック歌手としてデビューした。

ところが、CDはほとんど売れず、短期間で廃盤となり、ライブにもほとんどお客さんは集まらず、短期間に廃業の危機に追い込まれた。

困り果てたキャサリンは、生活のため、ライブハウスや関連の飲食店でアルバイトをしながらも、今度はジャズ歌手を目指すようになった。

キャサリンは、もともと真面目な性格であったため、時間はかかったが、無駄遣いをせずにお金をためて、今度は、自分の音楽教室を開業して生活の糧を得ながらもプロのジャズ歌手を目指すようになった。

そして、運が良かったのか、ロックがブームとなり、キャサリンの音楽教室にも生徒が集まりだし、生活の目処がたつようになって来た。

しかし、キャサリンはプロのロック歌手として成功できない程度の力量しかないのに、プロのジャズ歌手として成功できるはずがないことを見落としていた。

そして、ロックブームが去ると生徒は激少し、もともとジャズ歌手としても仕事がほとんどないため、また、窮地に追い込まれることとなった。

そして、知人の紹介で、キャサリンから相談に乗って欲しいと連絡が来た。

「キャサリン、君の仕事のポジションは、音楽教室の先生? それとも、プロのジャズ歌手?」

「失礼ね! 「プロのジャズ歌手」に決まっているでしょ。そんなことより、どうすればいいかが知りたいのよ。

音楽の事は、あなたは素人だから何も分からないと思うけど、私は音楽学校も経営しているし、プロのジャズミュージシャンとしてもCDを販売しているから、それなりに知名度もあるし、成功しているわ。

私が知りたいのは、どうすれば、儲かるかを知りたいのよ。プロのジャズミュージシャンとして、実力は問題ないはずよ。」

私は、正直、この時点でキャサリンに全く可能性がないことを思い知らされたが、知人の紹介もあったため、知人の顔を立てるために質問を続けた。

「キャサリン、君の音楽学校の強みを教えてくれないかな?」

すると、キャサリンは目を爛々とさせて話を始めた。

「そうね、自分で言うのも照れるけど、ジャズ歌手としてジャズボーカルを教えているけど、本格的なボイストレーニングのレッスンも出来るわ。

それと、ボーカリストでピアノの伴奏ができたり、音楽理論を教えられる人は、ほとんどいないけど、 私は、その両方できるわ。

それから、CDも販売しているし、メジャーデビュー実績もあるし、ボーカルの教則本も出版しているから、狭い世界だけど、それなりに知名度もあるわ。」

私は、長年、ジャズを愛好していて、しかも、趣味でサックスを吹く。私の先生がたまたま、世界的なプレーヤーで、その関係で、私は多くの一流のジャズミージシャンとも交流がある。

キャサリンというジャズ歌手の存在を知ったのは、今回、知人から紹介された時が最初だった。しかも紹介を受けた知人は、ジャズとは全く無縁である。

「キャサリン、ビジネスで言う強みとは、「製品が売れる理由」のことなんだ。

だから、君が想像する君の優れた点ではなく、君の顧客が、なぜ君の授業を買うのか?という理由が知りたいんだ。

しかも、君の授業料は、相場の4倍もするよね。どうして、そんなバカ高い価格でも君に授業料を払って歌を習いたいのか、その理由が知りたいんだ。」

こう質問すると、キャサリンは顔色が変わり、今度は、自分が如何に歌のピアノ伴奏が上手く、プロのジャズピアニストと変わらない実力があるかという話を始めた。

キャサリンは、私の言うことは頭では理解したが、受け入れることができないようである。私は、再度、同じ質問を違った切り口から伝えた。

「キャサリン、生徒に聞かないと事実は分からないけど、もし、君の生徒のみんなが、君の授業を買う理由が、「ピアノの伴奏が上手いから」と言うなら、君の商品は、歌の授業ではなく、歌の伴奏が商品なんだよ。」

こう言うと、キャサリンは顔色を変え、怒りにまかせて、捨て台詞を吐いた。

「すみません。もう私には手に負えませんので、他のコンサルタントをあたります。お手数をおかけして申し訳ありませんでした。」

キャサリンとは、これっきりとなった。

自社の「製品が売れる理由」を知るには、

1 顧客は誰か?
2 競合他社は誰か?
3 自社は、顧客のどんなニーズを満たしているか?

この3つを知る必要がある。 キャサリンの場合、

1 顧客は誰か? → 興味がない!
2 競合他社は誰か? → 歌手のレッスンプロを目指す素人。
3 自社は、顧客のどんなニーズを満たしているか?
  →プロのジャズ歌手になりたい人の伴奏

である。

そして、キャサリンの強みは、ブームに乗れて、「運が良かった」である。

起業家であるはずのキャサリンが最も興味を持たなければならないのは、顧客だ。


しかし、キャサリンは、自分にしか興味がないのである。



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