スモールビジネスは、なぜ、成功しないのか?(13)
職人タイプの経営者の「青年期」マネージャーの時代(4)
「サラの青年期の過ち」マイケル・E・ガーバーより
「青年期」の3つの誤った解決策を聞いたサラは、自分の辛かった「青年期」の経験を話だした。
「私の店にも、ハリーみたいな人がいたわ。エリザベスという名前だったけどね。
私が彼女を雇ったのは、お店を始めて6ケ月経った頃で、彼女は信じられない程、一生懸命に働いてくれたのよ。
経理の仕事をしてくれたし、パイを焼くのも手伝ってくれたし、開店前の準備も開店後の仕込みも手伝ってくれたわ。
人手がたらなくなった時は、3人も雇って、教育までしてくれたの。
彼女のおかげで、2年間で事業もどんどん大きくなって、エリザベスにどんどん仕事を任せたけど、嫌な顔一つせずに、私と同じくらい働いてくれた。
彼女は、当然、このお店を気にいってくれていると思ったし、私は彼女が大好きだった。それなのに・・・」
サラは、また、泣き出してしまった。少しすると、また、話の続きを始めた。
「ある朝、彼女から電話があったの。「もう、お店にはいきません」と言われたの。
私は、何かの聞き間違えだと思って、何度も確かめたわ。でも、彼女は、すでに別の仕事を見つけていて、私とこれ以上一緒に働くことはできないと言うのよ。
私が彼女に、「エリザベス、冗談はやめて。」と言うと、彼女は、「サラ、ごめんなさい。」と言って、電話を切っちゃったの。彼女とは、本当に、それっきりになってしまった。
その後は、私が何から何まで、また、一人でやらなくてはならなくなったわ。そして、脇目も振らずに走り続けるしかなかった。
そして、そんな私を冷やかに見るように、エリザベスが雇った従業員たちも、エリザベスがいなくなると直ぐにお店を辞めて行った。
今、思うと、エリザベスが雇った従業員は、私のお店の従業員じゃなかったのね。エリザベスの仕事をこなすための従業員だったんでしょうね。
この出来事で、私はひどく落ち込んだわ。もう、誰かを雇おうという気がしなくなったし、誰かを雇おうと考えるだけでもうんざりしたわ。
もう一度、私の生活の中に他人を組み込むというリスクを取ることを避けたかったのよ。
だから、私の「青年期」からの解決策は、「手ごろなサイズ」に縮小したのよ。3つの誤った解決策の「幼年期」へ戻ることを選んだの。それ以外、何も思いつかなかったし。」
サラは、深いため息をついた。
私たちの多くは、信頼していた人に失望させられた経験を持っている。しかし、実際は、自分自身の能力不足や注意不足、理解不足が原因なのである。
深い失望を味わっても、一緒に仕事をするためには信頼するほかないので、また人を信用するようになる。こうして、同じ失敗を繰り返すことになるのである。
本当の信頼関係は、「お互いをよく知ること」で築かれる。注意すべきなのは、「知ること」と「盲目的に信じること」は別問題なのである。
「知る」ためには、「理解」しなければならないし、「理解」するためには、相手の人柄や行動パターン、持っている知識や興味の範囲を知らなければならない。
結局のところ、サラはエリザベスのことをよく知らないまま信じていて、裏切られたのだ。
しかし、サラは、彼女を信じることで自分を正当化したかったのである。
なぜなら、サラは、彼女を信じることで、面倒な仕事をやらずにすんだからだ。
そもそも、サラは経営者で、エリザベスはその従業員である。だから、サラはエリザベスのためにいろいろな決まり事を作り、彼女をマネジメントする必要があるのだ。
サラは、その仕事と責任を放棄し、全てを運にまかせた。そして、パイ職人に専念し、エリザベスとの話し合いを避けた。これが、エリザベスがやめる原因になっているのだ。
責められるべきは他の誰でもなく、自分自身だということをサラはよく分かっているようだった。
そして、私が次にするべきことは、もう一度挑戦する時には、どうすれば良いかをサラに伝えることだった。
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