高度成長期を支えた経営コンサルタント
一倉定(5)
「お客様第一主義(3) 社長の定期訪問」
「事業の発展は、社長の定期訪問から始まる。」
一倉 定
こんにちは。 今回は、一倉定先生の教え「定期訪問」の重要性について見ていきましょう。
定期訪問と言うと、昔の酒屋の御用聞きみたいなイメージをされる方が多いと思いますが、一倉定先生が教える「定期訪問」も前回、前々回の話同様にまるで違うものです。
一倉先生は、御著書の中で、しつこいセールスマンや不躾な社長がよくやる間違いに、売り込みだけの営業訪問と長時間滞在を最も迷惑な行為として取り上げていますが、こういったものは、定期訪問ではありません。
こういった行為は、今風に言えば、スパム行為です。
同一人物から来る一日5~10通くらいの売り込みメールみたいなもので、時代に関係なく、こういった行為は、非常に迷惑です。
一倉先生が教える定期訪問とは、表敬訪問を定期的にやることです。
ですから、訪問時間も話だけなら長くても10分程度のもので、感謝の思いを定期的に伝えて良好な人間関係を築こうとするものです。
マーケティングでもよく言われることですが、「売り上げを伸ばすには、まず誰から始めるべきか?」と問われたら、「既存のお客さんから始める」というものです。
ですから、普段、顔出ししていないお客さんのところに行っても逆効果ですので、まずは、普段、定期的に顔出ししておくことが前提となります。
時々、「起業したばかりでお客さんがいない」とおっしゃる方がいますが、同じです。
自社に興味をもってくれそうな企業を普段から定期的に表敬訪問すればいいだけです。
まずは、良好な人間関係が築けそうな人と何らかのつながりを持つことを始めればいいだけです。
やっているうちにだんだん自分が誰とつながれば良いのかが見えてきますから、そうなったらしめたもんです。
そこからが、本当にビジネスでつながるべき相手が見えてきます。
ところで、一倉先生の言う「感謝の思い」ですが、ちょっと抽象的でわかりにくいかも知れませんが、「感謝の思い」とは、言葉や思いによる感謝もありますが、どちらかというと行動によって示す感謝です。
たとえば、表敬訪問した先で、荷物の搬入で忙しそうにしていたら、さりげなくお手伝いをするとか、仕入れ先で困っているなら、協力できる範囲で仕入れ業者を紹介するといったものです。
一見、そんなことして何になるんだ? と思われるかもしれませんが、この辺が一倉先生流の魔法なんですね。
必ず、なるほど! と思える理由があります。
どういうことかと申しますと、仕事をどのように捉えるか? ということです。
たとえば、自社が仮に鮮魚店だとしたら、お客さんに鮮魚の美味しい食べ方や、レシピや、付け合せにどんな野菜が合うか?、また、野菜をどこで買うと安くておいしいのか?といったことを伝えます。
一見、鮮魚店がおすすめする野菜や八百屋さんを教えるなど、何の得にもならないように思えますが、ところが違います。
「仕事」を単に鮮魚を販売することとして捉えるのではなく、お客さんに鮮魚を食べてもらうことで「喜んでもらうことが仕事」として捉えるのです。
ですから、自社は、たまたま今は鮮魚を売っているが、仕事は「お客さんに喜んでもらうこと」なのだから、当然、少しでも喜んでもらえる仕事をするのです。
以前、一倉先生の教えで、「環境整備」の話をした時に「峠の釜めし」で有名な荻野屋の美しく清潔なトイレの話をいたしましたが、全く同じです。
確かに釜めしを売っている会社が日本一美しく清潔なトイレを当時のお金で1億円もかけて作るなど、釜めしを売っているだけで捉えると、ばかげているとしか思えませんが、仕事が「お客さんに喜んでもらうこと」なら、なるほどと、思えるはずです。
自分が実際に見た例でも、こんなことがありました。
たった5人しかいないデザイン事務所の社長が、お客さんの引っ越しの手伝いで一週間近く会社に出社しませんでした。
まぁー、従業員からすると、たまったもんじゃありません。
「うちの社長は何考えているんだ? お人良しもいい加減にしろよ!」と、実際になりました。
自分は「ははぁーん。さすが一倉先生の信者だけあるな。何かあるぞ」と、思っていましたので、デザイナー達に「きっと今以上に猛烈に忙しくなりますから、今のうちにマックのメンテしておいた方がいいですよ。」と言っていました。
案の定、1ヶ月もしないうちに、ドカーンと雑誌の仕事が入り、外注の手配だけでパニックになっていました。
落ち着いた頃、その社長に「社長、お客さんの引っ越しの時、何やっていたんですか?」と聞いてみると、「いやぁーね、マックにフォトショップやイラストレータやフォントをインストールしたり、それらの使い方をレクチャーしていたんですよ。引っ越したらDTP始めるって言っていたから、チャンスだと思ってね。」ということでした。
なるほど。
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