高度成長期を支えた経営コンサルタント
一倉定(3)
「お客様第一主義(1)社長の表敬訪問」
「社長の定位置は社長室ではなく、お客様のところである。」
一倉 定
こんにちは。 今回は、一倉定先生の教えの第3回目、「お客様第一主義」について見ていきましょう。
「お客様第一主義」と言うと、今風の「顧客第一主義」をイメージされる方が多いと思いますが、一倉先生が言う「お客様第一主義」は、前回お話しした「環境整備」同様、今風の「顧客第一主義」とは、かなり異なります。
そして、一倉先生の「お客様第一主義」は、次の2つの内容からできています。
1 社長のお客様訪問(表敬訪問)
2 クレーム処理
この2つです。
では、まず、社長のお客様訪問(表敬訪問)について見ていきましょう。
一倉先生は、社長が社長室からでてこず、社内の事や事務処理などを一日中している社長を穴熊社長と呼んでいます。
このタイプの社長が最もダメな社長で、業績を悪化させる原因も、この穴熊度で決まると説いています。
当然と言えば、当然ですね。
たとえば、クレームが起きた時に誰が真っ先にお客様のところへ駆けつけるべきか?
当然、社長です。
ところが、これをほとんどの社長がやらない。30人もいない会社ですら、社長に連絡しても、「今、担当営業が向かっています」と言って、状況を見に来ようともしない。
そして、翌日は、何事もなかったように事を軽く見て、電話で、軽く言い訳をした後に、あろうことか、図々しく新しい仕事の催促をする。
当然、お客さんから「ふざけるな!」と言われて、最悪、取引き停止になる。
特に、下請けや孫請けしかやったことのない社長や、2代目社長に、この穴熊タイプのボンクラが多いと一倉先生は言いますが、事実ですね。
やはり、業績が上向いている企業は、この「社長のお客様訪問(表敬訪問)」を定期的にやっている会社が多いですし、その効果も実感しています。
さて、「社長のお客様訪問(表敬訪問)」ですが、一倉先生の御著書の中でもいろいろな成功事例をあげていますが、その中でも、小室直樹先生の著作を引用して、田中角栄元首相が日本と中国との国交を回復した時の成功要因が、田中角栄元首相の表敬訪問にあったことを紹介しています。
実際のところ、社長のお客様訪問(表敬訪問)は、訪問先の事業規模によって効果も違いますが、しかしながら、普段から社長自ら定期的にお客様訪問(表敬訪問)することは、企業間の円滑な人間関係を作る上でも大変、効果的です。
最近では、社長がお客様訪問(表敬訪問)せずに、何を勘違いしたのか、社長が本を出版してバイブル商法を行ったり、ブログやフェイスブックやメールだけで営業したり、派手なイベントをして注目を集めることで新規顧客を開拓しようとする未熟な社長見習いみたいな人も多いですが、そういった行動は、いかがなもんでしょうか。
あのソフトバンクの孫正義社長でさえも、新商品販売の時は必ず店頭に立ってお客様と直接触れ合うのですから、やはり、お客様へのお客様訪問(表敬訪問)は社長の仕事として行うべきです。
一倉定先生が説く、社長のお客様訪問とは、営業活動の訪問ではなく、普段取引をしていただいていることへの感謝の表敬訪問で、笑顔で挨拶する程度のものです。
不思議なもんで、この売り込みが一切ない、商売っ気のない、感謝行とでもいう社長の謙虚な行動こそが、自社の信用を高め、そして新たな注文を促すのです。
つまり、よく言われる、欲しがるだけの人には、与えられないということです。
では、次回は、クレーム処理について見ていきましょう。
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