2014年2月2日日曜日

高度成長期を支えた経営コンサルタント 一倉定(4)「お客様第一主義(2)クレーム処理」

高度成長期を支えた経営コンサルタント
一倉定(4)
「お客様第一主義(2)クレーム処理」





 「責任の範囲を明確にすることは、会社を潰す思想だ」 
 一倉 定 


こんにちは。 今回は第4回目、一倉定先生の教え「クレーム処理」について見ていきましょう。

一倉先生のクレーム処理の話で、まず、最初に思い出すことは、何と言っても「責任の範囲を明確にすることは、会社を潰す思想だ」という名言です。

 最初に、この名言を知った時は、何かの間違えだと思いました。

えっ、誰の責任かをはっきりさせない? 何だかサッパリわからなくなってきたぞ? これが正直な感想でした。 


ところが、さらに突っ込んで「責任の範囲を明確にすることは無責任な社員をつくるだけだ」と追言されていたので、聞き間違えではないことに気づき、これは何か深い意味があると思った次第でした。 

そして、この名言の意味は、たとえ、どんなに小さなクレームであっても、責任分担をすると、社長をはじめ、全ての社員は、分担された以上の責任を感じなくなり、結局、誰も責任を取らない会社になるという意味でした。 

ですから、責任分担された会社にクレームが起きると会社はどうなるのかと言いますと、 当然、存亡の危機に立たされ、倒産に至るのです。 

よく、間違った指導をする経営哲学のないマナーコンサルタントと言われる人達が大量にいますが、本当に困ります。 

そもそも、そういった人達の主張は、業務上の役割分担と責任分担が同じです。 

ですから、当然、一倉先生のおっしゃる様な経営哲学がない顧客心理を欺いた顧客マニュアルなるものを作り、それを社員やカスタマーサポートや外注先の人達にまる暗記させて、その通り行動させる。 

こんなことをやる企業が本当に増えましたが、それが百害あって一利なしと、どうして気づかないのか? 不思議でしょうがありません。 


そして、そんな愚かなことをやる企業に限って、やれ、名刺の出し方やら、礼の角度やら、服の色やら、着席順位やら、頭のいかれた対話術やらを教え、そもそも教えている本人すらしないことを鬼のようにしつけるだけ。 

そして、お客さんからクレームが来ると、無責任なマニュアル通り、「弊社の責任の範疇ではございません」か、「担当部署に代わります」とロボットになりきって電話対応し、電話に出た本人は、謝ることも責任も感じない。 

そもそも、この「責任の範疇」、これが、一倉先生のおっしゃる「責任の範囲を明確にすることは無責任な社員をつくるだけだ」ということを理解し、行動している会社が、本当に皆無になりました。 

やはり、クレームが起きた時の基本は、全ての業務を止めてでも社長が担当者や技術責任者を連れて、社を上げて真っ先にお客さんのところへ駆けつける。 

なぜなら、たとえ、どんなに小さいクレームでも、正しい対応ができなければ、社の存亡に関わるのですから。 

また、全ての最終的な責任は社長にあるのですから、まずは、真っ先に社長の耳に入れて、担当者や役員を含めて全者を持って対応するのが、クレーム処理の本来の正しいあり方です。 

そして、クレームに対する社員への責任追及はせず、責任追及は、クレームを報告しなかった報告義務を怠ったことに対してのみに行う。 

これが、一倉流経営哲学であり、クレーム処理の基本です。 さて、この一倉流クレーム処理には、必ず後日談があります。(著書より抜粋) 


クレームに社長自ら駆けつける  

 S社は牛モツの納入業者である。同社はモツの鮮度保持に、あらゆる努力を惜しまない。そのためにお客様の信頼は絶大である。 

ある時、大手スーパーから、モツの鮮度についてのクレームがついた。社長は、ただちにお客様のところに駆けつけた。現物を見ると、それは別の会社からの納入品であった。 

バイヤーが待っていて、「あなたのところは、クレームをきくやいなやただちに社長が駆けつけてきた。 

それに反して、クレームを起した会社は、社長どころか、セールスマンさえも顔をださない。」 と怒って、その場の欠席裁判でライバル社を出入り禁止とし、S社長に、「我が社は二社購買が方針だが、事は衛生問題である。 

仕入部長には私が事情を報告して了解をとるから、明日から全量を納入してもらいたい」と決めてしまった。 

S社長いわく、「クレーム処理は儲かりますね」と。 (出典:経営の思いがけないコツ 日本合理化協会出版局) 

ところで、最近の一倉流クレーム処理でも、既に生産が終了して何年もたっている旧式のパナソニックの石油ストーブの回収と保障、トヨタのリコールなどを見ればよく解りますが、誰がどう見ても正しいクレーム処理は、顧客にとっても企業にとっても最大の利益を生み出すのではないでしょうか。 

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