高度成長期を支えた経営コンサルタント
一倉定(8) 「シンデレラの多角化」(2)
「事業の成果は、お客様から得られる。」
一倉 定
こんにちは。前回、「シンデレラ(予期せぬ顧客)」によって、自社が多角化できる可能性を探り、自社の業績回復を試みるのが、一倉定先生の言う「シンデレラによる多角化」だと申しあげました。
では、今回は、その方法を見ていきましょう。
ビジネスを一定期間やっていると、時々、予期せぬ飛込み客から注文が入り、その舞い込んだ「シンデレラ」の助けによって、自社が多角化できる可能性を知り、自社の業績回復ができる時があります。
たとえば、出版社が機械メーカーから製品の操作マニュアルの制作依頼を受けるような、本来、本業にしていなかったことに需要があり、その新しい需要を取り込むことによって業績を伸ばすことができます。
「シンデレラ」の特徴は、自社の新たな事業機会を教えてくれるため、「シンデレラ」が持ち込んだ仕事がたとえ少額であったとしても、そこから次の展開を考えることで、大きく事業を成長させることができます。
少し専門的な話になりますが、事業を成長させる時には、
1 集中的成長
2 統合的成長
3 多角的成長
この3種類の成長を考えます。
また、この1~3の内容は、
1の集中的成長は、既存市場での成長
2の統合的成長は、関連市場での成長
3の多角的成長は、現在の事業とは関係のない市場での成長
のことです。
一見、「シンデレラ」が持ち込む案件は、1の集中的成長で、既存市場での成長を促すものと思えるのですが、そうではなく、1~3の全ての可能性があります。
たとえば、引越しの場合、引越し業者が、エアコン、洗濯機、冷蔵庫などの家電製品、家具、カーテン、絨毯、床のコーティング・・・ と、様々なものを販売することがあります。
また、引越しの時に引越したお客さんから引き取った家電製品や家具の再生販売も可能です。
この様に、そもそも引越し(運搬)にかかる料金よりも、引越しにまつわる製品の方が売上額が大きくなる可能性があり、事業も関連市場、新規市場と多角化が可能です。
つまり、自社の事業の定義を引越し(運搬)だけに限定してしまうと、せっかく舞い込んでくれた「シンデレラ」からの贈り物を台無しにしてしまい、自社の新たな機会も損出してしまい多角化ができなくなります。
ここから汲み取るべき重要なことは、自社の事業の定義でさえ、自社が決めるのではなく、お客さんが決めるということです。
そうすることで、自社の成長の機会を与えてくれる「シンデレラ」が現れた時に、自社に大きな成長の機会が訪れ、「シンデレラによる多角化」が可能になるのです。
では、次回は、この「シンデレラ」がくれた事業機会を生かして、企業の業績を好転させるマーケティングマネジメントを見ていきましょう。
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