高度成長期を支えた経営コンサルタント
一倉定(2)「一倉流・環境整備」
「私のコンサルティングは、環境整備に始まる。 これ以外に何もしないのに、業績が上がっていく。」 一倉 定
こんにちは。今回から何回かに渡って、戦後、コンサルタントの第一人者として日本の企業を支え続けた一倉定先生の教えについて触れたいと思います。
一倉先生と言えば、ランチェスター戦略を発案したコンサルタントというイメージが強いと思いますが、色々と一倉先生の事を知れば知るほど判りますが、ランチェスター戦略は一倉先生のほんの一部にしかすぎません。
やはり、一倉先生のコンサルティングの基本は、「環境整備」にあります。
また、一倉先生のコンサルティングの内容は、主に以下の8点です。
1 お客さま第一主義
2 環境整備
3 ワンマン経営
4 経営計画書
5 財務管理
6 販売戦略
7 人材管理
8 IT管理
一倉先生のコンサルティングの最大の特徴は、2の環境整備と1のお客さま第一主義です。
では、今回は、この8つの中でも特に重要な特徴となっている「環境整備」について見ていきましょう。
環境整備というとTQC(トータル・クオリティー・コントロール)の3S~6S(整理・ 整頓・清潔・清掃・躾(しつけ)・作法)までのイメージをもたれると思いますが、似ていますが、一倉先生の「環境整備」は、全然違うのです。
一倉先生の言う「環境整備」とは、お釈迦様が弟子のシュリハンドクにやらせた「塵を払わん、垢を除かん」と言いながら掃除をして「悟る」ことの実践です。
これを、ビジネスにするとダスキンになりますが、個々の企業が「お掃除」の質を高めて地域住民や顧客に貢献し、掃除をした企業が悟る営業戦略です。
これは、やればわかりますが、確かにものすごく強力な営業戦略です。 一見、掃除と製品の品質や価格には何の関連性もないように思えますが、ところが違うんです。大ありなんです。 やった者にしか理解できないのですが、とにかく、とんでもなく重要な関連性があるのです。
確かに、そこに悟り(解決策)があるのです。
一倉先生の御著書でも様々な事例が紹介されていますが、その中でも「峠の釜めし」の荻野屋は特に有名な話です。
荻野屋は、下諏訪店を出店する時に当時のお金で1億円をかけて日本一清潔で美しいトイレを作りました。
しかし、当時は誰もが猛反対したそうですが、総大理石で入口がアーチのようになっていて、明るく清潔感にあふれる美しい建築様式のトイレです。 そして、このトイレがたちまち有名になり、観光バスのガイドマニュアルにまで紹介文が織り込まれるようになりました。
当然、観光バスに乗った顧客は荻野屋で食事をし、その美しく清潔なトイレを利用する。そして、荻野屋も観光バスが出発するごとに、急いで数人でトイレを掃除をする徹底ぶり。 後に、このトイレは、新橋駅のトイレのモデルにまでなりました。
このように、一倉先生の言う「環境整備」とは、実業と一見、何の関連性もない掃除が信用や満足感を生み出し、新たな市場を創造するのです。
日本は、現在デフレなので企業経営が上手くいかないというプロパガンダを言う経済評論家がいますが、確かにマクロ経済の動向は、その一因ですが、本質は違うと思います。
企業経営が上手くいかなくなったのは、一倉先生のおっしゃった「環境整備」が出来なくなったのがその本質ではないでしょうか。
お金や欲に目が眩んだ馬鹿者が溢れかえり、楽することを良しとして働こうともせず、何も生まれないことを判っていて儲けることばかりを煽り、煽られる。
お釈迦様的に言えば、掃除すらせず、ゴミをまき散らすシュリハンドクだらけになったのが、現在の苦境を生み出した本質ではないでしょうか。
では、次回は、一倉先生の言う「環境整備」の本質、つまり魂の部分の「お客さま第一主義」について見ていきましょう。
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