2014年1月31日金曜日

高度成長期を支えた経営コンサルタント 一倉定(2)「一倉流・環境整備」

高度成長期を支えた経営コンサルタント

一倉定(2)「一倉流・環境整備」




「私のコンサルティングは、環境整備に始まる。 これ以外に何もしないのに、業績が上がっていく。」 一倉 定 

 こんにちは。今回から何回かに渡って、戦後、コンサルタントの第一人者として日本の企業を支え続けた一倉定先生の教えについて触れたいと思います。

一倉先生と言えば、ランチェスター戦略を発案したコンサルタントというイメージが強いと思いますが、色々と一倉先生の事を知れば知るほど判りますが、ランチェスター戦略は一倉先生のほんの一部にしかすぎません。

やはり、一倉先生のコンサルティングの基本は、「環境整備」にあります。
 
また、一倉先生のコンサルティングの内容は、主に以下の8点です。

 1 お客さま第一主義
 2 環境整備
 3 ワンマン経営
 4 経営計画書
 5 財務管理
 6 販売戦略
 7 人材管理
 8 IT管理

一倉先生のコンサルティングの最大の特徴は、2の環境整備と1のお客さま第一主義です。 

では、今回は、この8つの中でも特に重要な特徴となっている「環境整備」について見ていきましょう。

環境整備というとTQC(トータル・クオリティー・コントロール)の3S~6S(整理・ 整頓・清潔・清掃・躾(しつけ)・作法)までのイメージをもたれると思いますが、似ていますが、一倉先生の「環境整備」は、全然違うのです。

一倉先生の言う「環境整備」とは、お釈迦様が弟子のシュリハンドクにやらせた「塵を払わん、垢を除かん」と言いながら掃除をして「悟る」ことの実践です。

これを、ビジネスにするとダスキンになりますが、個々の企業が「お掃除」の質を高めて地域住民や顧客に貢献し、掃除をした企業が悟る営業戦略です。

これは、やればわかりますが、確かにものすごく強力な営業戦略です。 一見、掃除と製品の品質や価格には何の関連性もないように思えますが、ところが違うんです。大ありなんです。 やった者にしか理解できないのですが、とにかく、とんでもなく重要な関連性があるのです。

確かに、そこに悟り(解決策)があるのです。

一倉先生の御著書でも様々な事例が紹介されていますが、その中でも「峠の釜めし」の荻野屋は特に有名な話です。 

荻野屋は、下諏訪店を出店する時に当時のお金で1億円をかけて日本一清潔で美しいトイレを作りました。

しかし、当時は誰もが猛反対したそうですが、総大理石で入口がアーチのようになっていて、明るく清潔感にあふれる美しい建築様式のトイレです。 そして、このトイレがたちまち有名になり、観光バスのガイドマニュアルにまで紹介文が織り込まれるようになりました。

当然、観光バスに乗った顧客は荻野屋で食事をし、その美しく清潔なトイレを利用する。そして、荻野屋も観光バスが出発するごとに、急いで数人でトイレを掃除をする徹底ぶり。 後に、このトイレは、新橋駅のトイレのモデルにまでなりました。

このように、一倉先生の言う「環境整備」とは、実業と一見、何の関連性もない掃除が信用や満足感を生み出し、新たな市場を創造するのです。

日本は、現在デフレなので企業経営が上手くいかないというプロパガンダを言う経済評論家がいますが、確かにマクロ経済の動向は、その一因ですが、本質は違うと思います。

企業経営が上手くいかなくなったのは、一倉先生のおっしゃった「環境整備」が出来なくなったのがその本質ではないでしょうか。

お金や欲に目が眩んだ馬鹿者が溢れかえり、楽することを良しとして働こうともせず、何も生まれないことを判っていて儲けることばかりを煽り、煽られる。

お釈迦様的に言えば、掃除すらせず、ゴミをまき散らすシュリハンドクだらけになったのが、現在の苦境を生み出した本質ではないでしょうか。

では、次回は、一倉先生の言う「環境整備」の本質、つまり魂の部分の「お客さま第一主義」について見ていきましょう。


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高度成長期を支えた経営コンサルタント 一倉定(1)「企業の使命とは何か?」

高度成長期を支えた経営コンサルタント

一倉定(1)「企業の使命とは何か?」



こんにちは。 今回は、予定を変更しまして、コンサルタント、一倉定先生の教えについて触れたいと思います。

まぁー、一倉先生ほどコンサルティング企業が多い先生もいないんじゃないでしょうか。

コンサルタントをしている以上、一倉先生を知らなければ、もぐりか、経験が浅いかでしょうね。

何年間かコンサルタントをやっていれば、何かで必ず出会う人ですから。 自分の知っている範囲でも、事業規模に関係なく、かなりの数の企業の社長さんや経営企画関連の幹部社員は、一倉先生の洗礼を受けていました。

いろんな企業の一倉流経営計画書に目を通しましたが、ちょっと前に流行ったバランススコアカードのような定型のフォームがあるわけではなく、個々の会社によっていろんな書き方がありました。

一倉先生は、経営計画書を「魔法の書」とおっしゃっていましたが、経営計画書で書かれている内容は、よくある経営計画書とあまり変わらないのですが、「環境整備」、「顧客第一主義」とか、電話対応のトーク例とか、指示命令系統が書かれているとか、現在では、マニュアルに書くような内容も入っていました。

京セラの稲盛和夫さんが私塾の塾生に書かせる経営関連のものがそっくりですね。

不思議と企業理念が共通で、「頭を垂れる稲穂の心」や、親鸞聖人の教え?みたいな色合いがある内容も織り込まれていました。 

正直、ちょっと古いというと何ですが、古いのですが、ただ、コンサルタント一倉定は、忘れてはいけない重要な先生だと思います。 確かに、晩年、いろいろとありましたが、そういったものを差し引いても、一倉先生は戦後の日本の企業を支えた重要なコンサルタントですし、一倉先生のようなコンサルタントが今の日本に必要だと思うのです。

それは、なぜか? 

それは、「企業の使命とは何か?」と聞かれて、明白に答えられる人が殆どいなくなっているからです。

「企業の使命とは何か?」と聞かれて、本気で「営利追求です」と答える人がほとんどですから、まぁー、一倉先生が生きていたら、顔を真っ赤にして「ばかもの! ボンクラ!」と叱られるでしょうね。

せめて、「営利追求」は、「使命」ではなく、企業が存続するための「条件」だと気づいて欲しいもんです。

いくら儲けたかだけで、ビジネスや企業や人を評価するのはいかがなもんでしょうか。 

大人がやることじゃないです。判断基準が稚拙すぎます。

やはり、これからの時代、日本の企業が大きく成長するには、我々は原点に立ち返り、もう一度、企業の在り方、そして、個人の仕事に対する姿勢を見直すべきだと思います。

ということで、次回から、一倉定先生が残してくれた大切な教えを何回かに渡ってご紹介させていただきます。 


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代替品の脅威(1)

代替品の脅威(1)



こんにちは。今回は、代替品の脅威について見ていきましょう。

市場(業界)に代替品が参入してきて顧客がどんどん流出しだした場合、実際、打つ手はほとんどありません。

被害を最小に抑えることに終始するだけで、残念ながら、指をくわえて見ていることになります。

自分の経験でも、何度かそういった場面に出くわしましたが、特にニッチな市場に代替品が参入してくると、まるで、スポンジで水を吸い取るかのように、あっという間に顧客を吸い取られ、戻って来ませんでした。

特に事業規模が小さい企業は死活問題ですから、訪問回数を増やし、必死に営業活動をして顧客を呼び戻す努力をしますが、営業努力で成功することはありません。

また、そういった時期に値引きをして代替品と交戦すると、無理な価格競争から既存製品の品質が下がったり、ミスが増えて信用を失ったりと、返って信用問題がぐらつき、せっかく残っている既存客までもが離れていく危険性が増します。

ただ、簡単に代替品に顧客を吸い取られる市場(業界)は、市場(業界)自体にも多くの問題を抱えています。

こういった市場(業界)の最大の特徴は、価格設定に透明性がなく、顧客は常に売り手の言い値で商品やサービスを買わされるのが特徴です。

ですから、顧客の最大の不満は、「なぜ、そんなに費用がかかるのか?」この1点です。  
従って、解決策もいたって単純で、顧客が納得できる価格設定をするだけなのです。

ところが、こういった市場(業界)には、売り手全体に暗黙の定価のようなものがあり、顧客のために企業努力をする企業も皆無です。

そうなると、当然、格安な代替品が参入すれば、まるで、スポンジで水を吸い取るかのように、あっという間に顧客を吸い取られるのは当たり前の話なのです。

やはり、どんな市場(業界)であろうと、顧客は最小コストで最大利益を実現するのが世の常ですから、顧客の最大利益を実現するのが企業の使命です。

もちろん、政府の規制により価格が決められている市場(業界)もありますが、誠実な経営をしている企業は、そんな規制がある中でも、顧客の最大利益を実現するために最適な製品販売をしますので、業界内の全ての企業が怪しいわけではありません。

ですから、代替品の脅威といっても、その脅威で業界の統廃合が始まるような場合、業界内の企業が顧客はそっちのけで、自社の最大利益だけを追求していることが多く、市場(業界)が陳腐化すると、青天の霹靂のように代替品によって顧客がどんどん流出するのは当然です。

ちょっと、話が変わりますが、残念ながら、もう亡くなられたのですが、一倉定さんという社長だけをコンサルティングするという異色のコンサルタントと言われた方がいました。 

この先生は、顔を真っ赤にして社長を叱り飛ばすことで有名だった先生ですが、一倉先生なら、「そもそも透明性のない価格設定をするなど、まるで天動説だ! 今すぐ社長自ら価格表をもって全ての顧客を訪問して陳謝しなさい!」と言われそうですね。

今回のテーマは、一倉先生のライフワークのような話ですが、一倉先生の御著書の中で、このような天動説を創造的破壊する様々なケーススタディーが書かれています。

小規模な事業所向けの話が満載ですので、ご興味がある方は、御一読下さい。

さて、代替品の脅威が発生すると、決め手となる解決策はありませんが、被害を最小に抑えることはできます。 次回は、代替品の脅威に対する対抗策について見ていきましょう。


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2014年1月30日木曜日

魅力的な新規参入の仕方「参入障壁」と「退出障壁」(2)

魅力的な新規参入の仕方

「参入障壁」と「退出障壁」(2)

 こんにちは。今回は、事業規模や経営資源に関係なく参入障壁が高く、退出障壁が低い市場(業界)に参入する方法について見ていきましょう。

ところで、参入障壁には、主に初期投資額、規模の経済性(大量生産による低価格化)、特許やライセンスの取得、立地・原材料・流通業者の確保、企業の社会的評価などがあります。

また、主な退出障壁は、社会的責任、政府による規制、資産価値、垂直・水平統合などの業界構造、感情的な障壁などがあります。

そして、参入障壁が高く、退出障壁が低い市場(業界)は、競合他社が少なく、撤退する時の費用が安い市場で、収益性が良く、廃業する時の費用も少ない最も魅力的な市場です。

さて、このタイプの市場(業界)の例として、よく、士業があげられますが、確かに士業は、特殊な医療を除いて参入障壁が高く、退出障壁が低い市場(業界)ですが、現在は市場参加者が多すぎて多数乱戦業界になっています。

たとえば、弁護士は、どうでしょうか?

確かに参入障壁が高く、退出障壁が低い市場(業界)ですが、現在は、仕事量より弁護士の方が多いくらい弁護士はいます。 開業医の歯医者さんなんかもコンビニの数よりも多いくらいです。

では、税理士は? 行政書士は? 中小企業診断士は? ・・・。 

みんな供給過多で、世の中、先生だらけです。 ということは、士業は特許やライセンスの取得が参入障壁にならないのか?

そんなことはないですね。確かに規制は緩くなりましたが、資格を取るのは大変です。

では、参入障壁が高く、退出障壁が低い市場(業界)は競合他社が少ないということは間違えか? 

ここですね。

こういった場合、必ずお決まりの原因があります。

どうして、士業はやっていけなくなってきたか? 

安定したニーズはあり、参入障壁も高いのに、競合が多く閑古鳥が鳴いている。それは、なぜか? 

こういった場合、もとの考え方が間違っているのではなく、マクロ環境(政治、経済、社会、技術、人口動態、自然 これらの環境)の何かが変化して、代替品が存在しているのです。

つまり、わざわざ○○士業の人に頼まなくても、代替品で格安にできるし、代替品を使う方が顧客が得る利益が多いのです。

そして、この代替品が士業の顧客の流出を招き、顧客が別の市場に移っているのです。 こういった業界の場合、業界の統廃合が今後行われます。

たとえば、個人開業医は自営業ではなくフランチャイズに加盟するとか、利益が出るまで様々な士業が1つの企業(弁護士、税理士、行政書士、中小企業診断士、弁理士・・・ これらが1つの企業になる)として水平統合していく、あるいは1つの士業で規模の経済効果が表れるまで事業規模を大きくしていく、あるいは、特定の業務に集中して事業規模を縮小していくとかが行われます。 

いづれにせよ、異業種にいる代替品の脅威に対する対抗策を行わない限り、存続ができません。 

ということは、もう、お判り頂けたとは思いますが、参入障壁が高く、退出障壁が低い市場(業界)に参入する方法は、その業界にいる顧客が得る利益を増やすような代替品で参入すればいいのです。

では、次回は、この代替品の脅威について見ていきましょう。


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2014年1月29日水曜日

魅力的な新規参入の仕方「参入障壁」と「退出障壁」(1)

魅力的な新規参入の仕方

「参入障壁」と「退出障壁」(1)



こんにちは。今回は、企業の運命を決める市場の「参入障壁」と「退出障壁」について見ていきましょう。

前回、新規参入する時は、市場選びをした時点で、すでに企業の運命は決まっていると申し上げました。 

なぜ、そのように断定的に言えるのかと、お感じになったかもしれませんが、これには理由があります。 

国の産業は、政府が決めた何らかの法律によって規制がかけられ、その規制の中で業界構造が出来上がり市場競争が行われます。

たとえば、農産物なら、外国から輸入する時は国内の農業が価格競争で負けて衰退しないように国内の農産物が価格優位になるように外国産の農産物に税金をかけて国内の農業を保護します。

あるいは、化学工場なら、大気汚染の基準を決めて、その基準が満たせる範囲で操業を認めたりと、全ての業界は、必ず、政府の何らかの規制のもとで業界構造ができあがり、その中で市場競争が行われます。

そうなると、この政府が決めた規制が市場の参入障壁を創り、市場に参加するには特定の基準を満たせる企業だけが市場に参加します。

仮に、参加する市場の参入障壁が初期投資費用の負担が高く、市場に参加できる企業が数社しかいないとなると、その市場は、どうなるでしょうか?

生存欲求を満たす製品で、ニーズが高ければ、この市場に参加した企業は、顧客に商品が行き渡るまでは、大きな収益を得るようになります。

顧客に商品が行き渡った後は、価格競争が始まりますが、それでもロングテールで商品が売れる予測ができますので、市場に参加できる企業は、その企業の花形製品を手に入れることになります。

ところが、実際、市場に参加してみると、初期投資費用を半分も回収していない内に、技術革新が起きて、半額以下の代替品が現れて顧客がこの市場からどんどん流出しだすと、どうなるでしょうか?

市場に参加した企業は、この市場から撤退して、新たな市場に参加するための費用を集めるために、突然、猛烈な価格競争を始めます。

しかし、初期投資費用を半分も回収していないため、退出障壁が高すぎて撤退できません。 

このように、市場は、新規参入する前から「参入障壁」と「退出障壁」の強弱で、その市場の性質が決まっていて、自社が参入すべき市場なのか? と言うことが参入する前から判断できるのです。

参入時の参入障壁しか考えずに市場に参入すると、このように退出障壁の高い市場に参入すると、取り返しがつかなくなります。

さて、「参入障壁」と「退出障壁」からできる市場の性質は4種類しかありません。 「参入障壁」と「退出障壁」からできる市場の4つの性質は、以下の図のようにまとめることができます。




それでは、1つづつ見ていきましょう。 

参入障壁が高く、退出障壁が低い市場(業界)
 参入障壁が高く、退出障壁が低い市場は、競合他社が少なく撤退する時の費用が安い市場です。収益性が良く、廃業する時の費用も少ない最も魅力的な市場です。

参入障壁が低く、退出障壁が低い市場(業界) 
 参入障壁が低く、退出障壁も低い市場は、競合他社が多いのですが、撤退する時の費用が安い市場です。一見、理想的に思えますが、競合他社が多過ぎて収益が少なく、退出する企業も大量にいるため市場は常に不安定であまり成長しない市場です。 

参入障壁が高く、退出障壁が高い市場(業界)
 参入障壁が高く、退出障壁も高い市場は、競合他社は少ないのですが、撤退する時の費用が高い市場です。どちらかと言えば特殊な市場で、鉄道、飛行機、化石燃料など民間企業だけでは参入できないような市場です。

参入障壁が低く、退出障壁が高い市場(業界)
 参入障壁が低く、退出障壁が高い市場は、要注意です。これは言い換えれば、参入障壁が低いのは、参入しやすいため競合他社も多く、退出障壁が高いので、撤退する時の費用が高く、一度参入してしまいますと自社の方向性を修正する事が容易にできなくなります。

そして、これらの4つの市場(業界)の性質の魅力度は以下の様になります。

魅力度4 参入障壁が高く、退出障壁が低い市場(業界) 
魅力度3 参入障壁が低く、退出障壁が低い市場(業界) 
魅力度2 参入障壁が高く、退出障壁が高い市場(業界) 
魅力度1 参入障壁が低く、退出障壁が高い市場(業界) 

経営資源が豊富な大手企業なら魅力度1~4のどの市場(業界)にも参入できますので、当然、魅力度4に絞った新規参入を考えれば良いのですが、それ以外の企業は魅力度3か1の市場(業界)に参加せざる負えません。

ところで、魅力度1の参入障壁が低く、退出障壁が高い市場(業界)とは、どんな市場かと言いますと、参入障壁が低いのは、あまりニーズがないことを意味しており、退出障壁が高いのは初期投資が高額であることを意味しています。

具体的にどんな市場(業界)かと言いますと、少し前にITバブルと言われていたことがありましたが、あのような現象が典型的な例です。

当時、本来、新規参入に多額な費用が必要なため、政府が助成を行うことで参入障壁を極端に下げて多くの市場参加者を集めました。 

しかし、いざ参入してみるとニーズが殆どなく、実業ではビジネスが成立しないので、投資やその他の業務で収益を上げざる負えなくなり、新規参入に多額な費用が必要なことも加担して短期的に破綻するといった構図が描かれました。

こういった状況を作りやすい市場ですので、十分な注意が必要です。

これらから判断すると、事業規模に関係なく、全ての企業は魅力度4の参入障壁が高く、退出障壁が低い市場(業界)に参入しない限り、長期的な存続は厳しいということが判ります。

では、次回は、事業規模や経営資源に関係なく魅力度4の参入障壁が高く、退出障壁が低い市場(業界)に参入する方法について見ていきましょう。 


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魅力的な新規参入の仕方(2)

魅力的な新規参入の仕方(2)




こんにちは。今回も、魅力的な新規参入の仕方について見ていきましょう。 

前回、市場の成長性という視点から魅力的な新規参入の仕方について考察しましたが、今回は、市場の法則性という根本的な視点から魅力的な新規参入の仕方について見ていきましょう。

前回、市場の魅力度は、以下の4つの基準の収益性と安定度(競争環境)で判断すると申し上げました。

 1 魅力度4 収益性が良く競争も少ない 
 2 魅力度3 収益性は良いが競争が激しい
 3 魅力度2 収益性が悪いが競争は少ない
 4 魅力度1 収益性が悪く競争も激しい。

そして、最も魅力的な市場は1の魅力度4の収益性が良く競争も少ない市場です。

では、なぜ、このようなことが起こるのか?

その原因が判れば、どうすれば良いのか? という発見ができるようになります。

さて、原因究明する方法にロジカルシンキングあるいは、クリティカルシンキングと言われる思考方法があります。

多くの方が、この方法論を学ばれたと思いますが、この考え方を少しアレンジすると原因究明がしやすくなります。

まず、一般的なロジカルシンキングでは、問題が起きて解決するプロセスは、

  原因 → 現象 → 解決策 

といった3ステップで行われます。

そして、解決策を導くためには、

 「現象」は「なぜ起きたか?」 
 「現象」は「なぜ起きたか?」
 「現象」は「なぜ起きたか?」
       ・
       ・ 
       ・

と、「なぜ?」を繰り返すことで、「原因」究明が行われ、「解決策」が発見されるということです。 

多くの方がこの方法を試したと思いますが、あまり効果的な解決策は見つからずに、途中であきらめていると思います。

それは、なぜか?

根本的な解決策がなぜ、見つからないのか?

理由はいたって単純で、現象(問題)に焦点をあてて問題解決を試みているからです。

たとえば、マーケティングの課題に水漏れするバケツという課題がありますが、水漏れするバケツなら、「なぜ、水漏れしたのか?」これを繰り返し考えても、解決策は「水漏れしない方法」しか出てきません。

そもそも、バケツそのものに問題意識がいくことがありません。本来であれば、バケツの存在意義に焦点をあてなければ、根本的な原因究明になりません。

つまり、根本的な原因究明をする場合、ロジカルシンキング的な表現をすると、

  原因 → 現象 → 解決策(あくまでも業界内だけの視点) 

といったプロセスで原因究明するのではなく、 

 マクロ環境 → ミクロ環境(業界)
 原    因 → 現象(原因 → 現象) → 解決策
  
この視点で、マクロ環境(原因)に焦点をあてて根本的な原因究明をします。 

ピータードラッカーの名言に「優れた経営者は問題(現象)に集中しているのではなく、機会(原因)に集中している」という名言がありますが、まさにその通りです。 

そして、このような視点で業界の市場の競争環境を見ると、市場の競争環境には業界の種類に関係なく、1つの法則性があることがわかります。

どのような法則性かと言いますと、全ての市場は参入障壁と退出障壁の強弱によって市場内の競争環境が決まり、全ての企業はその法則性に沿ってしか競争できない。

このような法則性があるのです。 これは、言い換えれば、全ての企業は、新規参入する時にどのような参入障壁と退出障壁がある市場を選ぶかで勝敗は決まるということです。

つまり、新規参入する時は、市場選びをした時点で、すでに企業の運命は決まっているということなのです。

では、次回は、企業の運命を決める「市場の参入障壁と退出障壁」について見ていきましょう。

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魅力的な新規参入の仕方(1)

魅力的な新規参入の仕方(1)



こんにちは。今回は、魅力的な新規参入の仕方について見ていきましょう。

まず、最初にお伝えしたいのは、新規市場といいますと、競争がない市場とか、顧客がどこからともなく新たに自然にできるといったイメージを描かれる人が多いですが、その辺の誤解からお話します。

まず、新規市場とは、どんな市場かと申しますと、今ある市場の顧客が代替品としてコストが安い製品に乗り換えてできた市場です。

たとえば、電卓なら、もともとは、そろばんの代替品なのですから、そろばんを使っている人がそろばんを使うことから電卓を使うことに乗り換えなければ、新規市場はできません。

そして、そろばんを使っている人が電卓に乗り換えることで初めて電卓の市場の新規顧客となり、新規市場が創造されます。これが新規市場です。

ですから、新規市場や新規参入を考える時は、まず、最初に、どの市場からどんな顧客を連れて来るのか? ここに集中したマーケティングを考える必要があるのです。

こういったことを踏まえた上で、今回の本題である魅力的な新規参入の仕方について見ていきましょう。 新規参入をする場合、まず初めに、新規参入する市場の魅力度を知ることから始めます。

市場の魅力度は、以下の4つの基準の収益性と安定度(競争環境)で判断します。

 1 魅力度4 収益性が良く競争も少ない
 2 魅力度3 収益性は良いが競争が激しい 
 3 魅力度2 収益性が悪いが競争は少ない
 4 魅力度1 収益性が悪く競争も激しい。 

最も魅力的な市場は1の魅力度4の収益性が良く競争も少ない市場です。 

よく、市場の魅力度は市場参加者の数と成長率だと言う人がいますが、上述の市場の魅力度の4つの基準を見れば明らかにわかりますが、それは誤認です。

確かに、一見、市場参加者が沢山いて市場成長率が上向いていれば魅力的に思えます。

しかし、その市場で競争している内容は何かと言えば、単純に価格競争ですから、その市場が魅力的と思える企業は、たとえ市場内のニッチな市場(セグメント)であったとしても最低価格で価格優位を実現しても充分な収益が得られる企業だけです。

つまり、市場の参加者の数と成長率が上向いている市場は、多額な投資をしても充分な収益を得られる企業以外は、魅力度1の収益性が悪く競争も激しい市場のため、参加しても労多くして益なしといった、最も魅力のない市場なのです。

身近な例で言えば、たとえば、現在、国内のインターネットユーザー数は9610万人おり、そのうち、アフィリエイトをしている人数は380万人いると言われています。

つまり、国内のインターネットユーザーの25人に1人はアフィリエイトしていることになります。

仮に、インターネットユーザー全員が購入する商品があり、顧客はその商品を2個以上買わないとします。

また、アフィリエイトをしている人は同じような教育を受けていて販売力が変わらず、販売できる商品が1つしかなければ、平均値で言えば1人のアフィリエイターが売れる商品数は最大で25個です。

ところが、あるアフィリエイターは1000個売った経験があるとしたら、なぜ、1000個売れたのでしょうか? 答えは単純で、アフィリエイターが9万5千人以下しかいない時期に売ったから売れただけです。

つまり、仮に現在もこの市場の成長率が上向いていて、競合他社がどんどん参入できる市場であったら、果たして、魅力的な市場だと言えるのでしょうか? 

このように、市場参加者が沢山いて市場成長率が上向いている市場は、競争が激しすぎる上、最も魅力のない市場なのです。 では、どうすれば良いのか?

次回は、その辺についてお話いたします。


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価格競争ができない競争環境で価格優位を実現する方法(2)

価格競争ができない競争環境で価格優位を実現する方法(2)




こんにちは。 今回は、書店や歯医者など、価格競争ができない競争環境で、どのようにすれば価格優位が実現できるかを見ていきましょう。 

前回、価格競争ができそうにない競争環境で価格優位を実現する方法は、以下の3種類あると申し上げました。 

 1 競争する対照を替える方法(代替品が生み出す利益) 
 2 顧客が得る利益が増える方法(新たな利益の創出) 
 3 1と2を同時に行う方法(顧客の経費を減らして新たな利益を創出) 

そして、以前、申し上げたように、差別化して競争優位になる方法は7種類あり、それをマーケティングの7Pといい、その内容は以下のような内容でした。

  1 製品(商品+サービス)
  2 価格(製品価格)
  3 場所・流通(所在地、取引・製品・情報の流通)
  4 プロモーション(広告・宣伝)
  5 人(協力会社を含めた要員)
  6 プロセス(業務プロセス)
  7 物的証拠(保障と証拠)

今回は、この3種類の価格優位の創出方法とマーケティングの7Pを使って、価格競争できない競争環境で価格優位を実現する方法を説明いたします。 

ところで、マーケティングの7Pは、以前説明した通り、自社と競合他社を差別化して競争優位になるための要因です。 

と、いうことは、自社が価格優位になるには、3種類の価格優位の創出方法に沿って7Pをどのように改善したら、価格優位が創出できるか、自社と競合他社の7Pを1つづつ比較検討して行けばいいだけなのです。 

ただし、今回は、書店VS書店ですので、価格による差別化は、できませんので、価格以外の6Pを検討することになります。 

つまり、 

 1 製品(商品+サービス)
   1 競争する対照を替えることで、顧客に新たな利益を創出できないか?
   2 製品によって顧客に新たな利益を創出できないか?
   3 1と2を同時に行うことはできないか?

   (2は、価格)

 3 場所・流通(所在地、取引・製品・情報の流通)
   1 競争する対照を替えることで、顧客に新たな利益を創出できないか?
   2 場所・流通によって顧客に新たな利益を創出できないか?
   3 1と2を同時に行うことはできないか?

                ・
                
                ・ 

このように価格以外の6Pを1つづつ検討して行きます。

そして、競合他社と比較検討した競争優位が以下のような内容になったとします。

1 製品(商品+サービス)  客層にあわせた品揃えの取捨選択を行い、一般的な売れ筋の本ではなく、常連客が欲しがる書籍を増やしていく。     

2 価格(製品価格)  業界の暗黙のルールにより差別化できない。 

3 場所・流通(所在地、取引・製品・情報の流通)  希望者には配達をする。

4 プロモーション(広告・宣伝)  Eメールによるニュースレターで広告する

5 人(協力会社を含めた要員)  書籍購入販売相談員を1人常駐させる。

6 プロセス(業務プロセス)  会員制で共同購入販売を始める。

7 物的証拠(保障と証拠)  会員限定中古本買い取り保証

このように、自社が実行できる6Pの差別化要因を書き出します。

次に、これらの6Pを「自社の売り上げを伸ばす要因」と「顧客の利益を増やす要因」に分類します。

たとえば、 

●自社の売り上げを伸ばす要因
4 プロモーション(広告・宣伝)  Eメールによるニュースレターで広告する
6 プロセス(業務プロセス)  会員制で共同購入販売を始める。

●顧客の利益を増やす要因
1 製品(商品+サービス)  客層にあわせた品揃えの取捨選択を行い、一般的な売れ筋の本ではなく、常連客が欲しがる書籍を増やしていく。
3 場所・流通(所在地、取引・製品・情報の流通)  希望者に配達をする。
5 人(協力会社を含めた要員)  書籍購入販売相談員を1人常駐させる。
6 プロセス(業務プロセス)  会員制で共同購入販売を始める。
7 物的証拠(保障と証拠)  会員限定中古本買い取り保証

このように分類しましたら、次に自社が最小コストで最大利益を生み出す組み合わせに絞り、実行する内容を決定します。

たとえば、 

●自社の売り上げを伸ばす要因 6 プロセス(業務プロセス) 
会員制で共同購入販売を始める。 

●顧客の利益を増やす要因 
1 製品(商品+サービス)  客層にあわせた品揃えの取捨選択を行い、一般的な売れ筋の本ではなく、常連客が欲しがる書籍を増やしていく。 
6 プロセス(業務プロセス)  会員制で共同購入販売を始める。 

この場合、プロセス、製品による差別化で価格競争ができない競争環境で価格優位を実現し、自社の売り上げを伸ばし、顧客の利益を増やすマーケティングを実行します。

また、このようにマーケティングの7Pの何かの要因を選んで組み合わせることをマーケティングミックスと言います。

今回は、価格競争ができない競争環境で価格優位を実現する方法に焦点をあて、その競争環境でのマーケティングの解決策を確認しました。 次回は、自社が新たな市場に参入する時に、どのような考え方で、どんな市場を選択すれば最も競争優位になるかを見ていきましょう。


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価格競争ができそうにない競争環境で価格優位を実現する方法(1)

価格競争ができそうにない競争環境で

価格優位を実現する方法(1)



 こんにちは。 今回は、価格競争ができそうにない競争環境で価格優位を実現する方法について見ていきましょう。

価格競争ができそうにない競争環境で価格優位を実現する方法は、以下の3種類があります。

1 競争する対照を替える方法(代替品が生み出す利益) 
2 顧客が得る利益が増える方法(新たな利益の創出) 
3 1と2を同時に行う方法(顧客の経費を減らして新たな利益を創出) 

この3種類です。 

これは、要するに製品の販売価格そのものを安くできないのなら、代替品を販売して本来買う予定の製品より定価ベースで低価格な製品を販売するか、あるいは、販売する製品が顧客が予定していた以上の利益を生むか、あるいは、その両方を実現するかの3種類の方法があるということです。

たとえば、スマートフォンなら、PCより高機能で価格も半分以下の価格、通信費を含めても全体のコストが3割以上減るなどが実現できれば、自社のスマートフォンが他社のPCより価格優位になり、スマートフォンを購入しようかPCを購入しようか迷っている人に売れる可能性が高まります。

この場合、自社のスマートフォンVS競合他社のスマートフォンという図式では、自社のスマートフォンは、価格を自由に設定できるのにも関わらず、現在の能力では価格優位が実現できません。

しかし、自社の製品の特長を活かして、自社のスマートフォンVS競合他社のPCと競争する競合他社を替えることで価格優位を演出しています。 

ところが、このように自社の自由な采配で価格を決定できる業種とは違い、価格を自社の采配で決定できない業種があります。

たとえば、歯医者や書店は典型的な例です。 

書店の書籍の場合、書籍は、そもそも価格競争を業界の暗黙のルールでしません。そして、書籍は、どの書店でも同じ価格です。 

つまり、製品同士の比較では価格優位による差別化はできません。しかし、そのような競争環境においても価格優位は実現できるのです。 

では、次回は、その方法について見ていきましょう。


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2014年1月28日火曜日

最強の差別化「価格優位」の戦略

最強の差別化「価格優位」の戦略



こんにちは。 今回は、最強の差別化「価格優位」の戦略について見ていきましょう。

マイケル・E・ポーターは、企業が市場の競争環境において生き残るためには、最終的に「価格」か「差別化」のどちらかで競争優位になることが必要だと主張しました。

しかし、「価格」は、マーケティング要素の7Pの1つにしかすぎないのに、なぜ、ポーターは、わざわざ競争優位になるには、「価格」か「差別化」と2つに分けて競争優位になる方法を説明しているのでしょうか。

前回、差別化は、価格を含めて7種類の方法があると申し上げましたが、まずは、このマーケティングの7Pと競争優位の関係について見ていきましょう。

前回、申し上げましたように、マーケティングの7Pとは、

 1 製品(商品+サービス)
 2 価格(製品価格) 
 3 場所・流通(所在地、取引・製品・情報の流通)
 4 プロモーション(広告・宣伝)
 5 人(協力会社を含めた要員)
 6 プロセス(業務プロセス)
 7 物的証拠(保障と証拠) 

この7つです。 

ところで、競争優位は、 

 1 「価格」による競争優位(市場全体) 
 2 「差別化」による競争優位(市場内のニッチ市場) 

この2つです。 

ということは、大きな収益をあげたければ、企業のマーケティング戦略における優先順位は、市場全体において最安値を実現できないか?

まずは、ここに集中して行動してみる。 

そして、最安値をどうしても実現できないのなら、ニッチ市場で何かで差別化してナンバーワンを目指すこととなるのです。 

これは、あたりまえと言ってしまえば当たり前ですが、顧客は最小コストで最大利益を実現するために購入先を選ぶのですから、同じ商品を販売しているのなら、当然、自社が最安値を実現していなければ顧客から選ばれることはありません。 

では、これらを踏まえて、この「価格優位」の戦略について見ていきましょう。 

価格優位を実現するためには、まず、市場全体で今後、大きく成長する可能性のあるニッチ市場に焦点をあて、そのニッチ市場で最もよく売れている製品を探し出します。 

次に、ニッチ市場で最もよく売れている製品に対する顧客の不満を調べます。

たとえば、もう少し小さい方がいい、デザインがいまいち、維持費が高い、などいろいろな顧客の不満を調べ、その解決策を探ります。

次に、ニッチ市場で最もよく売れている製品をどのように改善したら、より顧客が満足するかを調べ、その解決策を探ります。

つまり、ニッチ市場で最もよく売れている製品の「顧客の不満要因の解決策」と「顧客の満足要因の解決策」を織り込んだ模倣品(より高品質な類似品)を考案します。

ただし、価格を下げるために品質を下げても販売力に影響がないと判断した場合、低価格にすることを優先し、あくまでも市場最安値を実現します。

そして、その方法論は、模倣品をどのようにすれば、規模の経済(大量生産による低価格化)を実現して市場全体で販売できるか、その方法を探ります。

さて、ここまでで、お気づきになったと思いますが、価格優位になるには、豊富な経営資源がないとできないのです。

つまり、市場全体での価格優位とは、大手企業にしかできない戦略なのです。 そして、マイケル・E・ポーターが、なぜ、競争優位を「価格」と「差別化」の2つに分類したかと言いますと、

 「価格」 = 大手企業の競争の戦略 
 「差別化」 = 大手ではない企業の競争の戦略

ですので、戦略を実現する時の方法論がまるで違いますので、競争優位を2つに大別しています。

以前、小規模企業の経営は変化が激しく業務も複雑で難しいが、大手企業はそれほどでもないと申し上げましたが、こういった理由があるのです。

つまり、ニッチ市場でよく売れる製品の模倣品を規模の経済によって低価格化し、マーケット全体で売れるようにすることが大手企業の競争戦略で、初期の段階では、これ以外の戦略はないのです。

ですから、基本的に7Pのうちの「価格」による差別化以外をゼロから考えることは殆どありませんし、ニッチ市場に参入することもありません。

たとえば、事例としてお菓子の業界が典型的な業界ですが、北海道帯広市に六花亭という美味しいお菓子屋さんがあり、そこの「マルセイバターサンド」というレーズンとレアチーズのようなクリームをバターで焼いた厚目のクッキーで挟んだお菓子があります。

とても美味しいのですが、少々お値段が・・・、というタイプのお菓子です。




このお菓子を大手企業が規模の経済を使って、競争にならないくらい安い価格で模倣品を大量に作って販売しています。 

ただ、お菓子の場合、所詮、模倣品では本物の足元にも及ばず、品質では勝てませんが、本物を食べたことがない人には、やはり美味しく、気になる味なのです。

このように大手企業の競争戦略は、初期の状態では「差別化」では勝てないニッチ市場を切り捨て、市場全体で模倣品による「価格優位」の戦略だけを行います。

ところで、小規模事業所の場合、上述のような市場全体では、模倣できない「差別化」によって、そのニッチ市場を独占することが可能ですが、そうではない業種の方が多いのが現実です。

たとえば、スーパー、コンビニ、歯医者、書店などは典型的な例で、やはり、同じような製品と価格で同一地域の顧客を奪い合う競争です。

では、次回は、このように価格競争ができそうにない競争環境での競争優位の方法について見ていきましょう。

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企業のチャンスを創る7つの要因 マーケティングの(7P)

企業のチャンスを創る7つの要因

マーケティングの(7P)



 こんにちは。前回、たとえ、どんな事業規模であったとしても自社が競合他社と差別化して競争優位にならなければ、自社が生き残ることはできない。

そして、その競争優位になる差別化の方法は、「価格」を含めると7種類あり、この7種類のうちの何かで競合他社より競争優位な状況を創造することが自社が生き残るための条件となると申し上げました。

では、今回は、その7種類の方法の差別化とは何かについて見ていきましょう。

ところで、人が何かを誰かから購入する時は、必ず、なぜ、その人から買うのか? といった理由が存在します。

たとえば、あの店は美味しい、この辺では一番安い、近所だから、有名なので、店員さんが親切、購入ポイントが多い(返金還元)、他社より保証内容がいい、など、様々な理由があります。

こういった、人が何かを買う時の購買理由を分類していくと、結局、7つの理由に集約することができるのです。

ということは、逆に、何かの製品がなぜ売れるかを知りたければ、この7つの理由のうちの何がその理由なのかを探り当てればよいのです。

そして、この7つの購買理由を一般的に標準化したものをマーケティングでは7Pと言っています。 

 マーケティングで言われている7Pとは、

 1 製品(商品+サービス)
 2 価格(製品価格) 
 3 場所・流通(所在地、取引・製品・情報の流通)
 4 プロモーション(広告・宣伝)
 5 人(協力会社を含めた要員)
 6 プロセス(業務プロセス)
 7 物的証拠(保障と証拠) この7つです。 

つまり、自社と競合他社を差別化して競争優位になるには、自社が販売する製品の7Pの何かが競合他社より優れていることが必要になるのです。

たとえば、同じ製品を販売しているのなら、より安い製品、製品と価格が変わらないのなら、直ぐに手に入る(場所)など、顧客にとって得られる利益が競合他社より大きいことが競合他社より競争優位になるための条件となります。

そして、7種類ある差別化でも最も強力な差別化が「価格」です。

これは、当たり前といってしまえば当たり前ですが、顧客は最小コストで最大利益を追求するのですから、「価格」で差別化できれば、最も競争優位になります。

では、次回は、7種類の差別化でも最強の「価格」による差別化について、詳しく見ていきましょう。


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2014年1月27日月曜日

企業が新たなチャンスを見つける方法

企業が新たなチャンスを見つける方法




 こんにちは。前回、たとえ、どのような事業規模の企業でも差別化できるということがご理解いただけたと思います。 そして、何度となく申し上げていますが、全ての企業は、競合他社と何らかの差別化ができなければ、事業規模に関係なく生き残ることはできないのです。 

では、今回は、自社が差別化するためには、どのようにすればよいのかを見ていきましょう。 

たとえば、自社が「みかん」を販売しているとすると、自社の「みかん」を以下の様な比較をします。

 みかん VS みかん(同業種の競合他社)
 みかん VS メロン(同業種の関連市場) 
 みかん VS 洗剤(異業種の関連市場) 
 みかん VS 衣料品(異業種の新規市場)

 このように、同業種の競合他社、同業種の関連市場、異業種の関連市場、異業種の新規市場と徐々に現在、競争している市場から関連性のない市場の商品と比較することで、自社が何を差別化すれば競争優位になるかを探っていきます。 

たとえば、比較して差別化すべきことは、 

 みかん VS みかん(同業種の競合他社)なら、「おいしさ」、 
 みかん VS メロン(同業種の関連市場)なら、「栄養素」、 
 みかん VS 洗剤(異業種の関連市場)なら、「洗浄効果」、
  みかん VS 衣料品(異業種の新規市場)なら、「清涼感」

と、いったように、自社が何で差別化すれば競争優位になるかを探っていきます。 

ところで、この「何」で差別化するのか?   ここですね。 

自社が競合他社と差別化できる種類には、どんなものがあるのか? 

これが判らなければ、自社が差別化するにはどうすればよいのかさっぱりわかりません。

実は、差別化できる種類は、「価格」を含めても、たった7種類しかありません。 

この、たった7種類のうちの何かで差別化できれば、競合他社より競争優位な状況を創造することができるのです。 

では、次回は、その7種類の差別化要素とは何かについて見ていきましょう。

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小規模企業の勝利の方程式(セールスレター編)

小規模企業の勝利の方程式
(セールスレター編)




こんにちは。 今回は、小規模企業の勝利の方程式(セールスレター編)です。では、実際にどのような事例があるのか見ていきましょう。 

前回、小規模企業の勝利の方程式は、自社と比較する対照を変えることで、競争優位になる競争相手を探し出し、自社が競合他社より競争優位になるような競争環境で戦うことが基本だと申し上げました。 

しかし、こういった差別化ができると思えない場合があります。 

たとえば、ちょっとしたお祝いの時に、  

 レストラン VS 町の食堂 

です。

このような競争しても勝てない相手と競争して、競争優位になるにはどうすれば良いのか?  このことについて見ていきましょう。 

今回は、少し趣向を変えて、セールスレターで、ご紹介したいと思います。 

このマーケティング手法は、一般的に「へそ曲がりのマーケティング」と言われていて、「不利益公開広告」というプロモーション手法を使っています。 

セールスレターの著者は、ご存じの方も多いと思いますが、ダン・S・ケネディーという方です。出典は、原書The Ultimate Sales Letter Publisher:Adams Mediaです。

現在は、日本語の翻訳本も出版されていますが、どうも原書と翻訳本のイメージがかけ離れていますので、原書を日本語に翻訳したままで引用いたします。 


以下、The Ultimate Sales Letter の翻訳文: 

君のオファーの弱点を、正直にさらけ出そう 
そして事実を見つめよう 

この世のどんな商品も、サービスも、オファーも、魅力的でない点を何点か、必ず持っているものなんだ。完璧なものなんてない。そんな事、みんなが知っている。 

君のオファーの欠点を認め、公に伝える事が必要なんだ。 すると君は、信用を蓄積できるようになって、読み手のヒットチャートの上位にいる事ができるようになるんだ。

この技術は「不利益公開広告」とよく言われる。 

さて、ここで、ある小さなイタリアレストランが地域の住民に送った実に効果的なセールスレターを見て、この事をよく考えてもらいたい。

 
--- セールスレター ー-- 

亜麻布のように白い布を腕にかけ、タキシードに身を包んだウェイター。

専門用語で読めない文字だらけのメニュー。

銀のアイスボックスで冷やされた高価なワイン。

もし、あなた様がイタリアレストランにそのようなものを期待しているとしたら、私どもの小さなレストランは、あなた様の期待に応える事はできません。

しかし、本場イタリアの野菜と香辛料を使って、イタリアの母の味を感じさせる、とっても美味しいソース。そのソースを使った、美味しくてしっかりした味の家庭的なパスタ。




亜麻布の様な白い布というわけにはいきませんが、赤と白のチェック柄のビニールテーブルクロス。あなた様が、そんな雰囲気を第一に考えておられるなら、私どものお店をぜひ気に入って頂けると思います。



もし、あなた様がワインを御希望されるのなら、たった2つしかない赤と白のワインからどちらかを選んで頂ければ、それ以降のおかわりは無料です。

私どものレストランのワインは、底がないという事で有名ですので。 また、お食事とご一緒であれば、もちろんワインのおかわりは無料です。


このお店の経営者は、同業者と比較して、自分のお店の不利な点を逆に上手に活用してしまったんだね。優良顧客、固定客、そして熱狂的なファンを作るための売り込みに活かしたという事だ。 

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いかがでしょうか。 小規模な企業は、経営資源が貧弱なので、差別化できないのでしょうか? 

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小規模な企業の勝利の方程式(事例編)

小規模な企業の勝利の方程式(事例編)




今回は、いよいよ、核心にせまる小規模企業の勝利の方程式(事例編)です。

では、実際にどのような事例があるのか見ていきましょう。 


前回、申し上げたように、小規模な企業は差別化しか生き残る道はないのです。

そして、その方法論は、競争して勝てる相手と競争して勝つ。 つまり、勝つべくして勝つ方法を見つける。 これしかないのです。

そして、そのキーワードは、比較する相手を変えることでした。

たとえば、1個2000円の石鹸は、どうでしょう。実際、ありますよね。

 この石鹸は、

  1個2000円の石鹸 VS 普通の石鹸

と、いった図式では、競争になりませんが、これが、  

 1個2000円の石鹸 VS 医療費

と、なると、断然、競争優位になります。

あるいは、10個1000円の「みかん」なら、1個2500円のマスクメロンの横において、試食ができるようにすると売れやすくなります。

普通に考えると、そもそも、1個100円もする「みかん」は、バカ高くて、よほどの「みかん」好きの人にしか売れる可能性がありません。

ところが、このような比較をさせると、売れるのです。 あるいは、こんな例もあります。

祝電 VS メッセージカード+花屋さん 

実際、この戦いも自分も経験しましたが、ある人のリサイタルに祝電を送ろうと思ったのですが、喜ばれそうな祝電は2000円以上になることがわかりました。

それだったらと思い、リサイタルを行う会場の近くの花屋さんに電話すると、アレンジメントフラワー+メッセージカードを1500円で届けてくれると分かり、躊躇なく花屋さんが勝利。

このように、比較する対照を変えることで、競争優位になる競争相手を探し出し、自社が競合他社より競争優位になるような競争環境で戦うことを行います。 ところで、こういった差別化ができると思えない場合があります。

たとえば、ちょっとしたお祝いの時に、  レストラン VS 町の食堂 です。

さすがに、町の食堂を選ぶことはないと思えるのですが、ところが、こんな比較でも差別化して、競争優位になることができるのです。

次回は、このような競争しても勝てない相手と競争して、競争優位になる方法について見ていきましょう。


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小規模な企業のブルーオーシャン戦略

小規模な企業のブルーオーシャン戦略



こんにちは。今回は、お約束通り、小規模な企業のブルーオーシャン戦略です。

ところで、よく言われることに、小規模な企業は、経営資源が貧弱なので、差別化などできないと言われますが、本当でしょうか? 

マイケル・E・ポーターは、市場競争で企業が生き残るには、最終的に差別化か最低価格かのどちらかの二者択一で、規模の経済(大量生産による低価格化)ができない小規模な企業は、差別化ができなければ、最終的には生き残ることはないと明言しています。

この主張に対抗するようにブルーオーシャン戦略では、そうではなく、差別化と低価格化を同時に実現することで新たな競争がないブルーオーシャンというニッチな市場が創造されて、その市場の成長とともに小規模な企業は大きく成長していくと言われています。 
このことは、いろいろ議論がされていまして、私が企業研修をしている時も「どちらが正しいと思いますか?」と、よくでる質問です。



しかし、答えは明白です。 ブルーオーシャンとは市場ではなく、状態です。ですから、ポーター先生の主張は正しく、差別化と低価格化は同時にできません。 


では、どんな状態か?  これは、前回も申し上げたように、マクロ環境の変化によって何かの業界に起きる既存市場にできた新たなニッチ市場(状態)です。 

ですから、そもそもが競争のある既存市場にできたニッチ市場ですから、そのニッチ市場が魅力的であれば、霞のように直ぐ消え去り、新たな競争がすぐ起きるのです。 

たとえば、前回申し上げた封書ですが、郵送費が80円になって、安いと思えること自体、比較する市場が既にあるわけですから、そもそもが競争がない市場など存在しないのです。 

すべての市場はレッドオーシャンなのです。

では、なぜ、このブルーオーシャンというおかしな考え方に多くの人が惑わされているのでしょうか? 

それは、ブルーオーシャンという状態は、規制がはずれて新たな行動ができるようになったばかりの状態なので、その状態のニッチ市場には、まだ、誰も参加していないため、競争がないと錯覚してしまうのです。 と、言うよりは、むしろビジネスができる環境が整っていないので、誰も参加できないため、競争などあるはずがないのです。

これがブルーオーシャンの正体です。 

ですから、巷に出回るブルーオーシャンという概念は、単なる錯覚による妄想です。

実際、郵政事業の自由化がされた時に新たなニッチ市場が登場しましたが、どうでしたか? 参入条件として郵便ポストの設置が義務化されていたため、誰もが指を加えて次の機会を待っていましたよね。この状態がブルーオーシャンです。 

ところが、その義務がなくなると、いきなり価格競争でしたから、規模の経済が働く大手しか参入できなかったのではないですか? 

そうなると、小規模な企業は、どうすればよいのか? ここですね。ここが今回のテーマです。 これも、答えが明白です。 

答えは、勝てる相手を探して、勝てる相手とだけ戦うことで、競争優位な状態を作り出すのです。これが、唯一、小規模な企業が生き残るための戦略なのです。 

そして、これが小規模な企業の差別化なのです。

つまり、自社が生き残りをかけて戦う相手は、勝つべくして勝つ相手です。 

そして、その勝てる相手に勝ち続けることで経営資源を蓄えていくことが、小規模な企業が生き残るための絶対条件なのです。 

では、実際にどのような事例があるのでしょうか? 

その辺については、非常に重要なので、次回、詳しく解説します。

2014年1月26日日曜日

一人勝ちする新規参入の方法

一人勝ちする新規参入の方法




前回、ブルーオーシャンとは、マクロ環境(政治、経済、社会、技術、人口動態、自然)の変化によってミクロ環境(業界)にできる、まだ競合他社がいない新たなニッチ市場のことだと申し上げました。 

そして、そのニッチ市場に先駆者として参入すれば、一人勝ちすると申し上げました。

では、今回は、一人勝ちするための新規参入の方法について見ていきましょう。

実は、前回の話にヒントがあるのですが、前回、郵便事業が自由化した時に、  郵便事業 = 運輸会社(配送) + コンビニ(郵便ポスト) となり、A4の大きさまでの封書なら、わずか80円で既存の郵便事業よりも早く、安く、安心して郵便物が届くようになりました。 

ここがポイントです。 

「新規市場で企業が提供する代替品によって顧客が負担するコストを下げると同時に得られる利益を増やす」 これができて、自社が新規市場で先駆者であれば、一人勝ちとなるのです。 

このような状態になるマクロ、ミクロ環境の変化を見つけることが、まずは、一人勝ちする新規参入の第一歩となります。 

風が吹けば、桶屋が儲かるような変化を見つけ出し、いち早く参入することなのです。 

ここでは、この事例の変化の流れを順番を追って、4ステップに箇条書きにしますと、  

1 政治環境の変化 (マクロ環境 政治環境) 
2 新しい法案の成立      〃      
3 郵便事業の自由化(ミクロ環境 運輸業界)  
4 ブルーオーシャンの出現(業界内の新規ニッチ市場の出現)

 このようになります。 

では、次回は、この現象を、もう少し小さな事業規模で、インターネットを使ったビジネスではどのようにできるかを見ていきましょう。 


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ブルーオーシャン戦略の正体(2)完結編 代替品の脅威

ブルーオーシャン戦略の正体(2)完結編
代替品の脅威



 前々回、「ブルーオーシャン」という競合他社がいない魅力的な市場など存在しないが、ところが、ある条件を満たすと、似たような現象が起きると申し上げました。

そして、前回、「重要な3つの成功法則」を満たしている企業は、「ある変化」が起きた時に、突然、光明がさし出すと申し上げました。

今回は、その「ある変化」とは何か? について焦点をあてることで、そもそも霞のように消えるブルーオーシャンの正体を究明します。

さて、企業が大きく成長する時には、必ず2つの大きな変化が起きます。

1つは、「マクロ環境」が変化した時です。そして、もう1つが「ミクロ環境(業界環境)」が変化した時です。この2つが必ず大きく変化します。

マクロ環境とは、政治、経済、社会、技術、人口動態、自然、この6つの環境です。

たとえば、法律が変わり、郵便事業の自由化が始まると、運輸業界に大きな事業機会が訪れました。

この時は、初期の段階で新規参入にはポストを設置することが前提というわけのわからない条件がありました。しかし、その規制がなくなると、コンビニが24時間受け付けるポストになることで、A4の大きさまでの封書なら、わずか80円で従来の郵便事業社よりも早く、安く郵便物が届くようになりました。




つまり、顧客が払うコストが下がり、享受する品質が上がるという典型的な成長曲線を描くための小さな変化が業界に起きました。また、コンビニは、昨年、
自然環境の変化が起こることで、コンビニ史上最大の売り上げを記録しました。

さらに、社会環境の変化なら、みなさんが獅子奮闘しているインターネット通販がよい例です。

インターネットで商品が売れる理由は、実売店より安い(低価格)か、インターネットでしか買えない(差別化)場合、顧客は、インターネットで躊躇なく買うように社会環境が変わりました。


ここで注目していただきたいのは、マクロ環境の変化とは、強制ニーズだという点です。

マクロ環境に変化が起きる時は、必ずミクロ環境(業界環境)の何かの業界に強制的な変化を与えるのです。と、いうことは?そうです。昨年末、政権が変わり国の方向性が明らかに変わり始めましたね。

つまり、・・・ 。2013年からチャンスなのです。どの業界がどのように変化するかを調べ、自社がどの分野に力を入れれば良いかが、はっきりしてきたのです。そして、感のいい人は、もうわかりましたね。

ブルーオーシャンとは、マクロ環境が変化して、業界環境に影響を与えた時に起きる先駆者がいない、新しい市場ができたばかりの一瞬の状態のことをいうのです。


そして、そのブルーオーシャンで販売する製品とは、既存製品の代替品で、既存製品より価格が安く、品質の良い製品なのです。

そして、この条件を満たして新しい市場に参入した企業が一人勝ちするのです。なぜなら、競合他社がまだいないので、努力せずとも、自社のポジションが簡単に獲得できるのですから。

競争が激しい既存の市場で莫大な広告費を払って自社のポジションを得るよりも、無理してでも、今後大きく成長する市場に新規参入した方が遥かにコストが安いのですから、成功する可能性も飛躍的に高いのです。


しかも、ICT技術が飛躍的に向上した現在は、個人と企業が競争できるのですから、新たなチャレンジができる、またとない機会が2013年からスタートしているのです。

では、次回は、新たな時代の新規参入の方法について語ります。


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ブルーオーシャン戦略の正体(1)

ブルーオーシャン戦略の正体(1)





 前回に続き、爆発的に製品が売れるカラクリの第1ステージについて、さらに詳しく見ていきましょう。

前回、「ブルーオーシャン」という競合他社がいない魅力的な市場など存在しないが、ところが、ある条件を満たすと、似たような現象が起きると申し上げました。

そこで、今回から、その「現象」について何回かに別けて見ていきましょう。

よく言われることに、ほとんどの会社は起業して5年以内になくなると言われていますが、その理由は、次のたった3つのうちのどれかの理由にあてはまります。


理由1 「ニーズがなかった」
理由2 「競合他社と差別化できなかった」
理由3 「競合他社より価格が高かった」

このどれかにあてはまります。

そして、一番多いのが「ニーズがなかった」です。

たとえば、本業が上手くいかないので畑違いの異業種に乗り出して失敗するケースです。一時期あった、行政書士が「家系図」を売るといったものです。

そもそも「家系図」がどうしても欲しい人がいったいどの程度いるのか何も調べていないし、どうして行政書士から家系図を買う方が顧客にとって得られる利益が多いのか? 理由が全くわかりません。

確かに「家系図」を売る行政書士と言えば、聞いたことがないし、ある意味「差別化」だとは言えますが、差別化とは本来、今ある市場の「顧客の最大の不満の解決策」が差別化ですから、上手くいくはずがありません。

また、この「誰が何を売るのか?」というのは非常に重要で、機会があれば詳しく書きますが、ここを間違うと全く何も売れません。

たとえば、どうしてもお医者さんから時計を買いたいという人はいないと思います。

時計なら、普通は量販店で買うか、あるいは駅前のおしゃれな時計店で買うか、デパートの時計売り場で買うか、銀座の○○で買うとなるように、時計一つでも誰から買うのかということは非常に重要なことです。

こういったことをマーケティングではポジショニングと言っていますが、医者が時計を売るといった誤ったポジショニングをすると製品のニーズとは関係なく全く何も売れません。

また、医者なら相性のよいものは、健康食品、生鮮食品など健康に関連したものや医療に関連した製品ですから、その範囲で考えることが必須です。

では、このポジショニングがあっていたとして、「差別化」してもニーズがないと思える時は、どういう時か?

そういった場合、たいてい差別化したと思える製品は、そもそも見たことも聞いたことも使い方すらわからないことが殆どで、誰も買わないのです。人は、なじみのない怪しいものは買わないのです。

では、次に「価格を競合他社より安く」したらどうでしょうか?

これは、程度にもよりますが、異業種参入よりは現実的ですが、ただし、競合他社と品質が変わらないか、競合他社より品質が良いことが条件になります。

また、価格を下げる場合、品質が重要ですが、これが難しいのです。

物販のメーカー品なら、他社よりも安くで伝わるのですが、製造業やサービス業のように無形な商売ですと、どうしても安定した品質を維持するための技術や納期や生産性が課題になります。

また、物販でも価格を下げずにおまけをつけて、事実上の値引きをする場合がありますが、これは、効果のある時と、逆に全く売れなくなる時があります。

この、おまけ商法はダイレクトマーケティングができた当時からおなじみの方法で、自分も何度もやりましたが、正直に申し上げると、大失敗した時が何度かありました。

どんな大失敗かと言いますと、どうしても競合他社より販売価格を安くできないので、高価なおまけをつけて販売したところ、全く売れない時がありました。


その時は、理由がわからなかったのですが、あるお客さんが「あの○○って怪しいんじゃない?  あんな高いおまけを付けて売るんだから」と言われた時に、なるほどと思ったことがありました。

つまり、おまけが良すぎても返って逆効果になる時があるのです。また、似たようなやり方に、通販でよく見る、いらないおまけを沢山つけて安く見せる方法もあまり効果がありません。

やはり、価格は、製品そのものの販売価格を下げて競争できなければ競争にならないのです。これらを総括すると、以下のような重要な成功法則が見えてきます。

つまり、5年以上生き残っている企業は、 

1 自社が扱う製品は、自社が販売してもポジショニングに違和感がない。 
2 自社が差別化した製品(商品やサービス)は市場の不満の解決策となっている。
3 自社の販売する製品は競合他社と同じかより低価格である。

最低、この3つの条件が必要だということです。

しかし、この3つの条件がそろっているだけでは新規顧客の獲得は、ほとんど望めません。

ところが、ある変化が起きた時に、この3つの条件がそろっている企業に突然、光明がさし出すのです。

次回は、その「ある変化」とは何か? について語ります。


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2014年1月22日水曜日

ブルーオーシャン戦略で言うブルーオーシャンなど存在しない! ところが・・・

ブルーオーシャン戦略で言う
ブルーオーシャンなど存在しない! ところが・・・




 「ブルーオーシャン」とは、W・チャン・キムとレネ・モボルニュが著したビジネス書「ブルーオーシャン戦略」の中で述べられている、競合他社がいない魅力的な市場のことを「ブルーオーシャン」といっています。 

同著の中で、ブルーオーシャンという市場は、どのような市場かを説明していますが、今一つあいまいな内容で、要は「差別化」と「低価格化」を同時に行うことで「ブルーオーシャン」という競合他社がいない魅力的な市場が創造されるということになっています。
これは、「差別化」をすればコストは高くなりますし、「低価格化」をすれば差別化はできませんので、現実には、市場としては、ありえない妄想の世界ですが、ところが、ある条件を満たすと、似たような現象が起きます。 

では、その似たような現象の製品が爆発的に売れるカラクリの第1ステージについて、詳しく見ていきましょう。

製品が爆発的に売れるには、2つのステージをクリアする必要があります。  

第1ステージは、ニッチ戦略で、ターゲットマーケティングを行って狙ったニッチ市場を独占することで、市場での自社のポジションを獲得する(顧客から存在を認知されるようになる)ステージです。

たとえば、印刷業界を例にしますと、「封筒ならハートだよね」といった、その業界でニッチな市場に焦点をあてて、特定の製品でナンバーワンになる段階です。 



印刷業界からすると、名刺、はがき、封筒、シールという分野は、典型的な4大ニッチ市場で、ほとんどの印刷会社は、この分野に何の魅力も感じず、全く目も向けない分野です。

ところが、このハート株式会社の会社案内のページを見ていただければわかりますが、ニッチと言われる分野でも市場が成熟すると、これだけの規模の会社になれるということがご理解いただけるかと思います。

また、名刺、はがき、封筒の分野には、既にニッチながら3大企業と言われる、ハート、山桜、ムトウユニパックという3つの企業があり、印刷業界でも激しい価格競争と差別化が行われていますが、印刷業界では今後の成長は見込めません。

これは何故かと言いますと、印刷業界は、一時期、DTPという新しい分野ができた時に非常に注目された業界ですが、その時点で、すでに時代のニーズから外れていて衰退期の業界でした。

そのような理由から、業界自体が新たなイノベーションがない限り、現在でも存続の危機を向かえている業界ですので、そんな市場で、さらに小さな分野ですから、この業界での成長はありえません。


 しかし幸いながら、マーケティング的には「ハート株式会社」のように、こういったニッチ分野での最大規模の完成型を企業として確認することはできます。

次回は、この現象について説明いたします。


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