2014年1月29日水曜日

魅力的な新規参入の仕方「参入障壁」と「退出障壁」(1)

魅力的な新規参入の仕方

「参入障壁」と「退出障壁」(1)



こんにちは。今回は、企業の運命を決める市場の「参入障壁」と「退出障壁」について見ていきましょう。

前回、新規参入する時は、市場選びをした時点で、すでに企業の運命は決まっていると申し上げました。 

なぜ、そのように断定的に言えるのかと、お感じになったかもしれませんが、これには理由があります。 

国の産業は、政府が決めた何らかの法律によって規制がかけられ、その規制の中で業界構造が出来上がり市場競争が行われます。

たとえば、農産物なら、外国から輸入する時は国内の農業が価格競争で負けて衰退しないように国内の農産物が価格優位になるように外国産の農産物に税金をかけて国内の農業を保護します。

あるいは、化学工場なら、大気汚染の基準を決めて、その基準が満たせる範囲で操業を認めたりと、全ての業界は、必ず、政府の何らかの規制のもとで業界構造ができあがり、その中で市場競争が行われます。

そうなると、この政府が決めた規制が市場の参入障壁を創り、市場に参加するには特定の基準を満たせる企業だけが市場に参加します。

仮に、参加する市場の参入障壁が初期投資費用の負担が高く、市場に参加できる企業が数社しかいないとなると、その市場は、どうなるでしょうか?

生存欲求を満たす製品で、ニーズが高ければ、この市場に参加した企業は、顧客に商品が行き渡るまでは、大きな収益を得るようになります。

顧客に商品が行き渡った後は、価格競争が始まりますが、それでもロングテールで商品が売れる予測ができますので、市場に参加できる企業は、その企業の花形製品を手に入れることになります。

ところが、実際、市場に参加してみると、初期投資費用を半分も回収していない内に、技術革新が起きて、半額以下の代替品が現れて顧客がこの市場からどんどん流出しだすと、どうなるでしょうか?

市場に参加した企業は、この市場から撤退して、新たな市場に参加するための費用を集めるために、突然、猛烈な価格競争を始めます。

しかし、初期投資費用を半分も回収していないため、退出障壁が高すぎて撤退できません。 

このように、市場は、新規参入する前から「参入障壁」と「退出障壁」の強弱で、その市場の性質が決まっていて、自社が参入すべき市場なのか? と言うことが参入する前から判断できるのです。

参入時の参入障壁しか考えずに市場に参入すると、このように退出障壁の高い市場に参入すると、取り返しがつかなくなります。

さて、「参入障壁」と「退出障壁」からできる市場の性質は4種類しかありません。 「参入障壁」と「退出障壁」からできる市場の4つの性質は、以下の図のようにまとめることができます。




それでは、1つづつ見ていきましょう。 

参入障壁が高く、退出障壁が低い市場(業界)
 参入障壁が高く、退出障壁が低い市場は、競合他社が少なく撤退する時の費用が安い市場です。収益性が良く、廃業する時の費用も少ない最も魅力的な市場です。

参入障壁が低く、退出障壁が低い市場(業界) 
 参入障壁が低く、退出障壁も低い市場は、競合他社が多いのですが、撤退する時の費用が安い市場です。一見、理想的に思えますが、競合他社が多過ぎて収益が少なく、退出する企業も大量にいるため市場は常に不安定であまり成長しない市場です。 

参入障壁が高く、退出障壁が高い市場(業界)
 参入障壁が高く、退出障壁も高い市場は、競合他社は少ないのですが、撤退する時の費用が高い市場です。どちらかと言えば特殊な市場で、鉄道、飛行機、化石燃料など民間企業だけでは参入できないような市場です。

参入障壁が低く、退出障壁が高い市場(業界)
 参入障壁が低く、退出障壁が高い市場は、要注意です。これは言い換えれば、参入障壁が低いのは、参入しやすいため競合他社も多く、退出障壁が高いので、撤退する時の費用が高く、一度参入してしまいますと自社の方向性を修正する事が容易にできなくなります。

そして、これらの4つの市場(業界)の性質の魅力度は以下の様になります。

魅力度4 参入障壁が高く、退出障壁が低い市場(業界) 
魅力度3 参入障壁が低く、退出障壁が低い市場(業界) 
魅力度2 参入障壁が高く、退出障壁が高い市場(業界) 
魅力度1 参入障壁が低く、退出障壁が高い市場(業界) 

経営資源が豊富な大手企業なら魅力度1~4のどの市場(業界)にも参入できますので、当然、魅力度4に絞った新規参入を考えれば良いのですが、それ以外の企業は魅力度3か1の市場(業界)に参加せざる負えません。

ところで、魅力度1の参入障壁が低く、退出障壁が高い市場(業界)とは、どんな市場かと言いますと、参入障壁が低いのは、あまりニーズがないことを意味しており、退出障壁が高いのは初期投資が高額であることを意味しています。

具体的にどんな市場(業界)かと言いますと、少し前にITバブルと言われていたことがありましたが、あのような現象が典型的な例です。

当時、本来、新規参入に多額な費用が必要なため、政府が助成を行うことで参入障壁を極端に下げて多くの市場参加者を集めました。 

しかし、いざ参入してみるとニーズが殆どなく、実業ではビジネスが成立しないので、投資やその他の業務で収益を上げざる負えなくなり、新規参入に多額な費用が必要なことも加担して短期的に破綻するといった構図が描かれました。

こういった状況を作りやすい市場ですので、十分な注意が必要です。

これらから判断すると、事業規模に関係なく、全ての企業は魅力度4の参入障壁が高く、退出障壁が低い市場(業界)に参入しない限り、長期的な存続は厳しいということが判ります。

では、次回は、事業規模や経営資源に関係なく魅力度4の参入障壁が高く、退出障壁が低い市場(業界)に参入する方法について見ていきましょう。 


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