小規模な企業のブルーオーシャン戦略
ところで、よく言われることに、小規模な企業は、経営資源が貧弱なので、差別化などできないと言われますが、本当でしょうか?
マイケル・E・ポーターは、市場競争で企業が生き残るには、最終的に差別化か最低価格かのどちらかの二者択一で、規模の経済(大量生産による低価格化)ができない小規模な企業は、差別化ができなければ、最終的には生き残ることはないと明言しています。
この主張に対抗するようにブルーオーシャン戦略では、そうではなく、差別化と低価格化を同時に実現することで新たな競争がないブルーオーシャンというニッチな市場が創造されて、その市場の成長とともに小規模な企業は大きく成長していくと言われています。
このことは、いろいろ議論がされていまして、私が企業研修をしている時も「どちらが正しいと思いますか?」と、よくでる質問です。
しかし、答えは明白です。 ブルーオーシャンとは市場ではなく、状態です。ですから、ポーター先生の主張は正しく、差別化と低価格化は同時にできません。
では、どんな状態か? これは、前回も申し上げたように、マクロ環境の変化によって何かの業界に起きる既存市場にできた新たなニッチ市場(状態)です。
ですから、そもそもが競争のある既存市場にできたニッチ市場ですから、そのニッチ市場が魅力的であれば、霞のように直ぐ消え去り、新たな競争がすぐ起きるのです。
たとえば、前回申し上げた封書ですが、郵送費が80円になって、安いと思えること自体、比較する市場が既にあるわけですから、そもそもが競争がない市場など存在しないのです。
すべての市場はレッドオーシャンなのです。
では、なぜ、このブルーオーシャンというおかしな考え方に多くの人が惑わされているのでしょうか?
では、なぜ、このブルーオーシャンというおかしな考え方に多くの人が惑わされているのでしょうか?
それは、ブルーオーシャンという状態は、規制がはずれて新たな行動ができるようになったばかりの状態なので、その状態のニッチ市場には、まだ、誰も参加していないため、競争がないと錯覚してしまうのです。 と、言うよりは、むしろビジネスができる環境が整っていないので、誰も参加できないため、競争などあるはずがないのです。
これがブルーオーシャンの正体です。
ですから、巷に出回るブルーオーシャンという概念は、単なる錯覚による妄想です。
実際、郵政事業の自由化がされた時に新たなニッチ市場が登場しましたが、どうでしたか? 参入条件として郵便ポストの設置が義務化されていたため、誰もが指を加えて次の機会を待っていましたよね。この状態がブルーオーシャンです。
ところが、その義務がなくなると、いきなり価格競争でしたから、規模の経済が働く大手しか参入できなかったのではないですか?
そうなると、小規模な企業は、どうすればよいのか? ここですね。ここが今回のテーマです。 これも、答えが明白です。
答えは、勝てる相手を探して、勝てる相手とだけ戦うことで、競争優位な状態を作り出すのです。これが、唯一、小規模な企業が生き残るための戦略なのです。
そして、これが小規模な企業の差別化なのです。
つまり、自社が生き残りをかけて戦う相手は、勝つべくして勝つ相手です。
そして、その勝てる相手に勝ち続けることで経営資源を蓄えていくことが、小規模な企業が生き残るための絶対条件なのです。
では、実際にどのような事例があるのでしょうか?
その辺については、非常に重要なので、次回、詳しく解説します。